画期的なサイクリックイオンモビリティー分離

イオンモビリティーは、多くのアプリケーションで定着している手法です。この手法を質量分析と組み合わせると、以下のことが実現できます。
m/z だけでなく形状にも基づいて分離できる性能により、異性体の分離が可能に
非常に鮮明なマススペクトルデータの取得
イオンの衝突断面積（CCS）の測定

サイクリックイオンモビリティー（cIM）装置の環状経路により、設置面積が最小限ですむと同時に、正確な衝突断面積値（< 0.5% RSD）、可変マルチパス、高分解能（> 400）のイオンモビリティー分離、IMSn 結果が得られます。

SELECT SERIES Cyclic IMS により、質量とモビリティーの両方に基づいてイオンを選択することができます。これは、アカデミアと産業界の双方における研究に比類のない柔軟性と性能をもたらす　cIM のユニークで有用性の高い機能です。

究極のイオンモビリティー分離による成果の向上

装置設計と制御ソフトウェアにより、Tof データの取得、シングルパスイオンモビリティー、サンプルの複雑さに合わせたモビリティー分解能のスケーリングといったさまざまな実験を行うことができます。イオンモビリティー分離は、モビリティー装置の長さ、つまり周回数に比例して向上します。

科学的発見の可能性を引き出す

高度なイオンモビリティー分析が容易となる独自の装置設計

IMSⁿ 選択 - 特定の種類のイオンなど、特定のモビリティー範囲の分解能を拡張します。 目的のモビリティーの範囲外のイオンはデータ取得せずに排出します。分離プロセスを継続するために cIM には残りのイオンを残す「トリミング」アプローチは何度でも実行することができ、例えば選択されたイオンの特異性を高めるため、またはマルチパスで高移動度イオンが低移動度イオンに追いつくcIMでの「追い越し」を防ぐために使用できます。

高度な構造特性評価

IMSⁿ 活性化 - モビリティー分離中にモビリティー分離されたセグメントを排出し、これらのイオンをアレイ前記憶装置に送ることが可能です。 不要なイオンを排出し、蓄積したイオンは必要に応じて衝突誘起解離 (CID) 条件下でアレイに再注入され、その後再度モビリティー分離が行われます。 続いて、プロダクトイオン検出のために Tof へイオンを送ることができ、または独自の IMSⁿ 能力を提供するさらなるラウンドのモビリティー選択を実施することができます。

衝突誘起解離（CID）

従来の衝突誘起解離（CID）技術では、気体イオンが加速され、高密度ガスを満たした質量分析計チャンバーに送られます。そしてそこで、中性分子種（窒素やアルゴンなど）との衝突によって結合が切断され、フラグメンテーションが発生します。SELECT SERIES Cyclic IMS には、CID が可能な 3 つの領域が存在します。

1.トラップ領域 - イオンモビリティー前のフラグメンテーション用
2.モビリティー領域 - IMSn 用
3.トランスファー領域 - イオンモビリティー後のフラグメンテーション用

電子捕獲解離（ECD）

複雑な生体分子の包括的な特性評価と分析には、CID で得られるデータ以上の情報が必要です。ウォーターズが SELECT SERIES Cyclic IMS で 2 つの新しいエキサイティングなフラグメンテーション手法を提供しているのはこのためです。その一つは e-MSion, Inc.（オレゴン州ポートランド）との提携による電子捕獲解離（ECD）で、もう一つはオハイオ州立大学の Vicki Wysocki 教授と共同の表面誘起解離（SID）です。

ECD は、ペプチドバックボーンで多価プロトン化分子に電子を捕獲させる（その結果、N–Cα 結合の切断が誘発される）ことによって開始します。ECD では、フラグメンテーション時の不安定な側鎖修飾が保持され、CID を補完するデータが得られます。その結果、より詳細な構造情報が得られ、シーケンスカバー率が向上し、より完全なタンパク質、PTM、糖鎖の特性解析における信頼性が高まります。

表面誘起解離（SID）

SID（表面がコリジョンガスと置き換わり、フラグメンテーションを生じさせる）では、タンパク質複合体のサブユニットのストイキオメトリーについての情報が得られます。SID をサイクリック IMS と組み合わせることで、さまざまなオリゴマー状態を分離できます。これらのオリゴマー状態は、質量電荷比ではオーバーラップしていますが、イオンモビリティーによって気相での分離が可能です。

CID、ECD、SID をサイクリックイオンモビリティーと組み合わせると、タンパク質の特性解析のための強力なツールセットとなります。

DESI XS と Cyclic IMS によるイメージング質量分析

DESI XS と SELECT SERIES Cyclic IMS というユニークな組み合わせは、極めて優れた質量分析イメージング手法です。DESI XS は、例えば低分子医薬品や代謝産物、組織サンプル表面の脂質など、広範囲にわたる様々な分析種の空間分布を視覚的なマップにすることができます。そして、Cyclic IMS のユニークな機能と取り込みモードにより、包括的で詳細な実験を行うことができます。

ここに示しているデータは、高分解能サイクリックイオンモビリティー質量分析によって、質量分析のみでは観察されない（あるいは低分解能イオンモビリティー質量分析で観察されない）さまざまな異性体分子種を明らかにする方法を示しています。

発見したものに確信を

新しいサイクリックイオンモビリティー機能を補完し、より信頼できるデータを取得するために、SELECT SERIES Cyclic IMS には最新の TOF テクノロジーを搭載しています。

XS トランスファーデバイスは、イオンモビリティー分離の信頼性を維持しながら、同時に最高の飛行時間性能のためにイオンビームを調整します。 デュアルゲイン検出システムを搭載した新しいオフセット直行加速型 (0a-) Tof は、感度の向上、> 100,000 (FWHM) の高分解能、信頼性の高い精密質量測定 (低ppm)、およびダイナミックレンジの向上を実現します。

装置コントロール

MassLynx の新規画面では装置のインタラクティブなコントロールが可能です。容易にサイクリック IMS メソッドの設定や、装置のフルコントロールと最先端の IMSⁿ 実験の設定ができます。SELECT SERIES Cyclic IMS からのデータに対応する特別に設計した Mobility Miner ソフトウェアはデータの視覚化ツールの強化とデータエクスポート機能を有しています。このソフトウェアは質量分析の専門家の増大するニーズを満たすための継続的開発のためのプラットホームを提供します。