• アプリケーションノート

動物由来製品中のパーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)分析用の、Xevo™ G3 QTof を使用したノンターゲットスクリーニングワークフロー(NTS)

動物由来製品中のパーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)分析用の、Xevo™ G3 QTof を使用したノンターゲットスクリーニングワークフロー(NTS)

  • Hania Khoury-Hollins
  • Jonathan Fox
  • Isabel Riba
  • Stuart Adams
  • Waters Corporation

要約

2000 年代はじめに、ヒト血清や野生動物の組織中に有機フッ素化合物が検出されたことから、パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)に関する懸念が高まり始めました1-3。 汚染食品など、人体が PFAS に曝露される複数の経路が特定されています。欧州食品安全機関(EFSA)は、9 年間の試験の後、汚染食品の主な発生源は魚と卵であると報告しました4。以後、質量分析と液体クロマトグラフィーの組み合わせ(LC-MS)を使用した、さまざまなマトリックス中の PFAS 検査のガイドラインが発表されています4–5。これらのガイドラインには、タンデム質量分析計と高分解能質量分析計の両方が含まれていますが、一般に用いられるのは、選択性と感度が高いタンデム質量分析法です。ただし、タンデム四重極を使用するターゲットアプローチでは、1 つの分析法で分析できる化合物が一定数に限られます6。Xevo G3 QTof により、データインディペンデント取得実験の範囲内の包括的なノンターゲットスクリーニング(NTS)ワークフローと探索ワークフローにおいて、高い感度と分解能の両方が得られます7

食品および飼料中のパーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)測定用の分析パラメーターに関する EURL POP ガイダンスドキュメントに基づいて、PFAS を魚類のレファレンス物質から抽出しました8。 抽出したサンプルを、Xevo G3 QTof を使用して分析し、続いて NTS および定量を行いました。取り込みおよびデータ解析は、waters_connect™ プラットフォームを使用して行いました。魚類のレファレンス物質中に、4 種類の化合物が高い信頼度で同定および定量されました。これらは、PFOA、PFNA、PFOS(直鎖型および分岐型)、PFHxS(直鎖型および分岐型)でした。同定および測定された量は、Fapas©(UK)によって報告されている値と一致していました。この試験では、食品マトリックス中の EU の要件を満たすレベルの PFAS を同定して定量する分析に Xevo G3 QTof が使用できることを実証しています。

アプリケーションのメリット

  • 保持時間と質量欠損を使用した PFAS 分析用のノンターゲットスクリーニング(NTS)ワークフロー
  • 分析法の性能に関する EURL POP ガイダンスを満たす HRMS を使用した、魚類のレファレンス物質に含まれる低 ng/Kg 濃度 PFAS の高感度の同定および定量
  • de novo 同定に使用できる標準試料がない場合にも、ターゲットを絞った、規制対象の PFAS 化合物の範囲を超えた分析が可能に

はじめに

ヒト血清中のフッ素化物の存在は、1968 年にすでに Travis 博士によって報告されていますが、パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)が本当に懸念され始めたのは、2000 年代はじめに 2 つの研究グループが、ヒト血清と野生動物の組織中に有機フッ素化合物を検出して以来です1–2,9。これらの研究により、PFAS の生体蓄積がヒトの健康に及ぼす影響およびその環境中の蔓延について警鐘が鳴らされました1–2。高レベルの PFAS への曝露により、脂質代謝、生殖、発育に影響が出ることがあります3,10。ペルフルオロオクタン酸(PFOA)とペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)が動物やヒトに及ぼす毒性の間の直接的な関連が広範に証明されています11

さまざまな経路による曝露が提唱されています。これには、汚染食品の摂取、環境曝露、また程度は低いもののハウスダストや耐火カーペットなどの PFAS を含む様々な消費者向け製品からの曝露が含まれます12–13。 人体曝露の主な原因は食品摂取によるものです。魚と卵には、他の食品カテゴリーと比較して、最も高レベルの PFAS 汚染が見られます4,14

食品中の PFAS 汚染をモニターするために、米国環境保護局(EPA)や欧州飼料・食品中ハロゲン化残留性有機汚染物質基準試験所(EURL POP)などの規制当局には、さまざまなマトリックス中の PFAS の分析に関する一連の規制およびガイドラインがあります5,15。 推奨されている分析法には、LC-MS によるサンプル分析の前の固相抽出ステップや最大 45 化合物をモニタリングすることが含まれています5,15。 規制対象化合物の数が絶えず増加し続けており、規制対象外の PFAS もモニターする必要があることから、サンプルの定量的概要と定性的概要の両方が得られる HRMS が最適です。

この試験では、サンプル前処理および同定に関する EURL POP ガイドラインを用いて、PFAS の同定および定量用のノンターゲットスクリーニング(NTS)ワークフローを魚類のレファレンス物質(Fapas®、英国)に適用しました。Xevo G3 QTof に接続された ACQUITY™ Premier システムを使用して、抽出物を分析しました。NTS ワークフローにより、4 種類の化合物(PFHxS、PFNA、PFOA、PFOS)を同定できました。定量のため、0.025 µg/Kg ~ 125 µg/Kg(5 ng/L ~ 25,000 ng/L に相当)のキャリブレーション標準試料を分析しました。

本研究では、食品マトリックス中の PFAS の NTS スクリーニングおよび定量において、Xevo G3 QTof が最適なツールであることを実証しています。同定および定量は、EURL POP ガイドラインに従って行いました。さらに、得られたデータを遡及的にマイニングし、UNIFI™ の探索ワークフローを使用して PFAS 関連化合物の de novo 同定を行うことができます。

実験方法

サンプル前処理

均質化したブランクの白身魚、魚類の QC 物質(T0696QC)、魚類のレファレンス物質(TBK011RM)は、Fapas®(UK)から購入しました。サンプルは、-20 ℃ で保管し、抽出の前に 4 ℃ で一晩かけて解凍しました。標準試料はすべて、Wellington Laboratories 社から購入しました。分析法には、カルボン酸塩(C4 ~ C14)、スルホン酸塩(C4 ~ C10)、エーテル(GenX、ADONA、9Cl-PF3ONS、11Cl-PF3OUdS)、前駆体(FBSA、FHxSA、FOSA、NMeFOSAA、NEtFOSAA、4:2 FTS、6:2 FTS、8:2 FTS)など計 30 種の PFAS が含まれていました。

以前のアプリケーションノートの記載にしたがって、サンプル前処理を行いました16。 PFAS を含まない魚を入手できない場合は、0.025 ~ 125 µg/Kg(5 ~ 25,000 ng/L に相当)の範囲の溶媒検量線をサンプル分析に使用しました。

LC 条件

LC システム:

PFAS キットを取り付けた Waters™ ACQUITY Premier システム(製品番号:205000588 および 205000589)

バイアル:

スリット入りキャップ(製品番号:186000305)付きポリプロピレン製オートサンプラーバイアル(製品番号:186005219)

分析カラム:

ACQUITY Premier BEH™ C18、1.7 µm、2.1 × 100 mm、90 Å カラム(製品番号:186009453)

アイソレーターカラム:

Atlantis™ Premier BEH C18 AX アイソレーターカラム、2.1 × 50 mm、5 µm(製品番号:186009452)

カラム温度:

35 ℃

サンプル温度:

6 ℃

注入量:

10 µL

流速:

0.3 mL/分

移動相 A:

95:5 水:メタノール + 2 mM 酢酸アンモニウム

移動相 B:

100% メタノール + 2 mM 酢酸アンモニウム

グラジエントテーブル

MS 条件

MS システム:

Xevo G3 QTof

イオン化モード:

ESI-

質量範囲:

m/z 50 ~ 1200

取り込み速度:

4 スペクトル/秒(4 Hz)

ロックマス:

ロイシンエンケファリン(m/z 554.2620)

取り込みモード:

MSE、データインディペンデント取得メソッド

イオン源条件

キャピラリー電圧:

0.5 kV

コーン電圧:

10 V

イオン源温度:

100 ℃

脱溶媒温度:

250 ℃

コーンガス:

100 L/時間

脱溶媒ガス:

600 L/時間

イオン源オフセット:

30 V

コリジョンエネルギー

低コリジョンエネルギー:

4 V

高コリジョンエネルギー:

ランプ 20 ~ 70 V

透過のチューン設定

StepWave RF:

100 V

ボディーグラジエント:

5 V

ソフトウェアツール

データ取り込みおよび解析は、waters_connect ソフトウェアプラットフォームおよび UNIFI アプリケーションを使用して行いました。

結果および考察

MSE 取り込みモードによって得られたデータを、waters_connect プラットフォームの UNIFI アプリケーションを使用して解析しました。ピークピッキングおよび同位体クラスタリングのステップの後、各注入について、すべての検出成分のリスト(保持時間と強度を含む)が生成されました(図 1 A、データ解析)。これらの成分をウォーターズの PFAS ライブラリーを使用してスクリーニングします。ユーザーの要件に応じて、他のオープンソースのライブラリーも使用できます17–19。精密質量およびフラグメンテーションに基づいて成分を同定し、プリカーサーイオンの質量測定精度が 3 ppm 以下である場合に推定同定を受け入れました。リストされている PFAS 化合物の数が現在 15,000 化合物を超えていることから、同定の信頼性を高め、偽陽性を排除するために、複数のデータフィルタリングステップをこの成分リストに適用しました18。UNIFI アプリケーションでは、さまざまなユーザー定義のフィルタリングステップを使用した、柔軟な NTS ワークフローが提供されています(図 1 B、データフィルタリング)。これらのユーザー定義のステップにより、試験において最も重要な成分が容易に視覚化できます。

今回、PFAS 特異的ワークフローを魚類のレファレンス物質抽出物のノンターゲットスクリーニング(NTS)に適用しました。このワークフローのステップごとのスキームを図 1 に示します。このワークフローは、データ解析(図 1 A)とデータフィルタリング(図 1 B)の 2 つの部分に分けられます。データフィルタリングが進むと(図 1 B)、ユーザー定義の基準に適合する成分のリストが表示されます。例えば、m/z が 500 Da を超える 3 ~ 5 分に溶出する成分を表示するフィルターなどがあります。

ワークフローの各ステップの効果を示すために、各ステップを適用した後に保持される成分の数を対応するステップの下に示しています。これらの数は魚類サンプル TKB011RM に対応するもので、ここでは例として使用しています。

図 1.  魚類のレファレンス物質中の PFAS 分析のノンターゲットスクリーニング(NTS)ワークフロー。このワークフローは、データ解析ステップ(図 1 A)とデータフィルタリングステップ(図 1 B)の 2 つのステップとして定義できます。各フィルタリングの後に残る成分の数が、対応するステップの下に示されています。魚類サンプル TKB011RM を例として使用しています。試験中のすべての繰り返し注入で、類似した桁数の結果が観察されました。

UNIFI アプリケーションの NTS ワークフローは、PFAS 分析専用に定義されたものです。ピークピッキングのステップおよび同位体グループ化を行った後、各分析について検出成分のリストが得られました。選択した例(TKB011RM)では、10,131 種の成分が検出されました(図 1 A)。これには、マトリックス関連の成分、バックグラウンド成分、PFAS が含まれると考えられます。ワークフローの最初のステップは、サンプルとブランク試料の比較です。この場合、サンプルと並行して、抽出溶媒ブランク試料を調製しました。固有の成分、または溶媒ブランク試料と比較して 15 倍以上のレスポンス増大が見られた成分のみを残しました。このカットオフ値を選んだ理由は、抽出プロセスからのノイズ成分を除去するためであり、必要に応じて多少厳しい値に変更することができます。検出成分の強度をサンプルブランク試料と比較することで、魚類サンプル TKB011RMS 中の候補のリストを 10,131 成分から 3882 成分に減らすことができました。ある種の PFAS はイオン源内フラグメンテーションを受ける可能性があり、一連の PFAS ホモログの溶出順序は予測可能であるため、保持時間/質量フィルターを適用しました20。 この保持時間/質量フィルターにより、PFAS ホモログの溶出が予想されるクロマトグラフィー領域を定義し、イオン源内フラグメンテーションイオンを候補のリストから除外することができます。このフィルターを適用することにより、TKB011RM サンプルにおける成分のリストが大幅に減少し 259 成分になりました(図 1 B)。次に、質量欠損フィルターを使用して、PFAS に関連しない化合物から PFAS を区別しました。このフィルターにより、成分のリストが 109 の候補に減少しました。保持時間フィルターなしで質量欠損フィルターのみを適用しても、両方のフィルターを順番に適用する場合ほど効率的ではないことに注意してください。実際、バイナリー比較フィルターを適用する前後の成分リストに質量欠損フィルターを適用すると、成分の数がそれぞれ 4854 成分または 952 成分に減少します(データは示していません)。最終的に、ウォーターズの PFAS ライブラリーを使用して、109 成分から 26 成分が同定されました17

両方の魚類のレファレンス物質において、標識された抽出標準試料以外に、6 種の PFAS 化合物(PFHxS(直鎖型および分岐型)、PFOA、PFOS(直鎖型および分岐型)、PFNA、PFDA、PFUnDA)が同定されました。そのうち 4 種がレベル 1a の同定で、2 種が レベル 3d の同定でした(同定のレベルの定義は Charbonnet の論文に基づいています)21。 残り 83 種の未同定の PFAS 関連成分は、分子式を生成できる UNIFI アプリケーションの探索ワークフローを使用して解析し、続いて de novo 同定を行いました。

記載されている各フィルタリングステップは、ユーザー定義のワークフローの一環です。これらのステップは、元の成分リストを変更することなくデータを視覚化するのに役立ちます。ここでは、ノイズやフラグメントの軽減、システムおよびサンプル前処理に由来する混入物質の低減におけるこれらのステップすべての効果が実証されています。同じアプローチを、別の魚類のレファレンス物質およびすべての繰り返しに適用しています。別の被験サンプルおよび繰り返しの各ステップで認められた成分数の桁数は、図 1 で報告している数の桁数と同じでした。

表 1 に、両方の魚類のレファレンス物質(T0696QC と TKB011RM)中に同定された化合物をまとめています。表には、プリカーサーイオン、識別フラグメントイオン、フラグメントイオンの質量精度、Charbonnet の論文に基づく信頼度レベルが記載されています21

表 1.  試験された魚類のレファレンス物質中に同定された PFAS のサマリー。各サンプルは 5 回繰り返しで調製しました。質量精度の値は、5 回の繰り返し、識別フラグメントイオン、測定された質量精度、対応する同定の信頼度レベルについて報告された最大質量誤差を表しています。ND:未検出。*同定のレベルは Charbonnet の定義によるものです21

分析種の相対保持時間をキャリブレーション標準試料の相対保持時間と比較することによって、PFAS 分析種のアイデンティティーのさらなる確認を行ったところ、すべての偏差の計算値は 1% 未満でした。EURL POP PFAS ガイダンスドキュメントの同定基準がすべて満たされていました15

Charbonnet の PFAS 同定の信頼度レベル基準によると、PFOA、PFNA、PFHxS、PFOS のレベル 1a 同定は、精密質量、質量欠損、標準試料に対する相対保持時間、および少なくとも 1 つの質量精度が 5 ppm 以下のフラグメントイオンの検出に基づいています。一方、PFDA および PFUnDA は、精密質量測定およびキャリブレーション標準試料に対する相対保持時間に基づいて注釈付けされています。PFDA および PFUnDA のピーク強度は低く、魚類のレファレンス物質中に固有のフラグメントイオンが検出されないため、PFDA と PFUnDA の同定レベルはレベル 3d です。

PFOS と PFHxS は、直鎖型および分岐型の異性体の両方がサンプル中に検出されています。EURL ガイドラインでは、直鎖型および分岐型の異性体を直鎖型のキャリブレーショングラフに照らして定量し、検出された異性体を個別に、またすべてを合計して報告することが推奨されています(EU ガイドライン 2022)。図 2 には、試験を行った魚類のレファレンス物質(TKB011RM および T069QC)に含まれる PFOS と PFHxS の抽出イオンクロマトグラム(XIC)を示しており、直鎖型異性体と分岐型異性体の両方がクロマトグラフィー分離されています。図 2 は、TBB011RM および T0696QC 中に検出された PFOS(図 2 A および C)と PFHxS(図 3 B および D)の XIC を示しており、直鎖型異性体と分岐型異性体が明確に区別されています。

図 2.  魚類のレファレンス物質 TK8011RM(A、B)および T0696QC(C、D)中のペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)(図 2 A および C)およびペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)(図 2 B および D)の抽出イオンクロマトグラム(XIC)。クロマトグラフィー分離された直鎖型異性体および分岐型異性体を、それらの直鎖型異性体の検量線を使用して定量しました。

高分解能質量分析ワークフローの汎用性により、定性分析および定量分析の両方が可能になっています。キャリブレーション標準試料が使用可能なスクリーニング手順で得られた、レファレンス物質中に同定された 4 種の PFAS を定量しました。同じ NTS スクリーニングにおいて、1 ng/L ~ 25,000 ng/L(サンプル中 0.005 µg/Kg ~ 125 µg/Kg に相当)の LC-HRMS 配列キャリブレーション標準試料を含めて、サンプルをブラケットしました。この場合、同定された PFAS(PFHxS、PFNA、PFOA、PFOS)のキャリブレーショングラフはすべて、R2 値が 0.99 以上で残差が 20% 未満でした(図 3)。PFOS、PFHxS、PFOA は、µg/Kg ~ 125 µg/Kg の範囲で直線性を示しました(それぞれ図 3 A、B、C)。一方、PFNA は 0.05 µg/Kg ~ 50 µg/Kg の範囲で直線性を示しました(図 3 D)。PFHxS および PFOS については、分岐型と直鎖型が同定されており、EURL POP ガイドラインの推奨に従って、直鎖型のキャリブレーショングラフに照らして分岐型の濃度を定量しています15

図 3.  同定された 4 種の PFAS の検量線。検量線は、イオンレスポンスの比を低コリジョンエネルギーでの内部標準試料のレスポンスに対してプロットすることによって得ました。直線回帰は、決定係数 R2 > 0.99 の 1/X 重み付けで近似しています。A:直鎖型ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS-L)。B:直鎖型ペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS-L)。C:ペンタデカフルオロオクタン酸(PFOA)および D:ペルフルオロノナン酸(PFNA)。

2 種類の Fapas® レファレンス物質を使用して、真度および併行精度の評価を行いました。これらの物質からの PFAS の回収率を確認するために、レファレンス値を使用しました。いずれのレファレンス物質についても合否基準 80 ~ 120% が設定されており、これらの合否基準が満たされていました。室内再現性も評価したところ、すべての場合で EURL POP の PFAS ガイダンスドキュメントで指定されている値(20%)よりも低い値が実現されました。図 4 に 2 種類のレファレンス物質の結果を割り当て値と比較して示します。

図 4.  魚類のレファレンス物質中の PFAS の平均濃度(µg/Kg)(n=5)。測定濃度のエラーバーは標準偏差に対応し、レファレンス物質のエラーバーは 20% RSD に対応します。

内部標準の回収率を、注入標準を使用して、EURL POP PFAS ガイダンスドキュメントの以下の計算に基づいて評価しましたFOSA 以外、内部標準試料はすべて、80 ~ 120% の範囲内で回収されました(FOSA は、中性の PFAS であるため、メタノール洗浄の段階で固相抽出(SPE)カートリッジから洗い流されるため、回収されませんでした)。この範囲は、EURL POP PFAS ガイダンスドキュメントに記載されている指定範囲 35 ~ 140% に収まっています15

本研究では、食品マトリックス中の PFAS のスクリーニング、同定、定量における Xevo G3 QTof の感度を実証しています。分析用標準試料を入手できる場合、定量が可能であり、EURL POP が設定しているガイドラインに適合しています15

結論

Xevo G3 QTof を使用し、waters_connect ソフトウェアプラットフォームの UNIFI アプリケーション内の合理化された PFAS ノンターゲットスクリーニング(NTS)ワークフローを使用して、魚類のレファレンス物質中の PFAS を同定および定量しました。UNIFI のスクリーニングワークフローおよび探索ワークフローは、質量欠損のフィルタリング、質量対保持時間でのフィルタリング、オンラインデータベースやライブラリーの検索まで、多くの選択肢を提供しています。生成されたデータセットを使用して、ターゲット定量アプローチを行ったり、探索ツールセットとライブラリーソースを使用して、新規またはこれまで報告されていない PFAS を遡及的にマイニングすることもできます。Xevo G3 QTof 装置の高感度およびデータインディペンデント取得モード(MSE)により、魚類のレファレンス物質中の PFOA、PFDA、PFOS(直鎖型および分岐型)、PFHxS(直鎖型および分岐型)のプリカーサーイオンおよびフラグメントイオンの同定が可能になりました。 

参考文献

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720008360JA、2024 年 6 月

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