• アプリケーションノート

臨床研究における UPLC-QDa を用いた血清中のビタミン A および E の分析

臨床研究における UPLC-QDa を用いた血清中のビタミン A および E の分析

  • Karl Lo
  • Fionn Quinlan
  • Mark Ritchie
  • Waters Corporation

要約

ここでは、臨床研究のための、シングル四重極型質量検出器 ACQUITY QDa を用いた血清中のビタミン A と E の同時分析法について説明します。抽出法は、サンプル前処理に HLB PRiME を使用した、従来の LC-MS/MS 法を調整したものです。ACQUITY UPLC HSS PFP カラムを使用するクロマトグラフィー法と SIR モードでの ACQUITY QDa 試験を組み合わせることで、血清中のビタミン A および E の分析のための正確かつ高感度の分析法が得られます。注入サイクルはわずか 5 分で、血清中のビタミン A と E についてそれぞれ 100 ppb および 1 ppm の高感度が達成できます。

アプリケーションのメリット

  • シングル四重極型質量検出器 ACQUITY QDa、および ACQUITY UPLC H-Class システムを使用した、血清中のビタミン A および E の正確かつ高感度な分析法
  • LLE と比較して簡単なサンプル前処理法

はじめに

従来、ビタミン A および E の分析のほとんどは、UV 検出を用いる HPLC で行われていました。ビタミン A および E の分析に LC-MS/MS を用いる場合でも、それに必要な液液抽出(LLE)などの抽出法は、抽出にかかる時間が非常に長く、溶媒消費量が多く、分析時間が長くかかります。以前、臨床研究において、必要なサンプル容量がわずか 100 μL で分析時間が短い LC-MS/MS 分析法を紹介しました1。 Oasis HLB PRiME(固相抽出)によるリン脂質除去は、このパフォーマンス向上における重要な要素です。このテクニカルブリーフでは、LC-MS により、血清中のビタミン A および E の正確かつ高感度な分析法について説明します。

実験方法

同位体標識内部標準試料を 100 μL の血清に添加し、エタノールを添加して除タンパクを行いました。遠心分離後、上清をエタノール/水(5:3)で希釈し、最終的なエタノール/水比を 2:3 にしました。得られた溶液 650 μL を Oasis HLB 溶出プレートに滴下し、サンプルのクリーンアップを行いました。このサンプルを 20% ACN 水溶液で洗浄し、100% ACN で溶出しました。さらに溶出液をさらに水で 200 μL に希釈しました(図 1)。HLB PRiME を使用する利点は、活性化や蒸発の手順が不要なことです。得られた抽出液の 20 μL を、LC-MS に注入して分析しました。

図 1. 血清中の 100 ppb ビタミン A および 1 ppm ビタミン E のクロマトグラム

ACQUITY HSS PFP カラム(1.8 μm、2.1 × 50 mm、製品番号:186005965)を装着した ACQUITY UPLC H-Class PLUS システムを使用し、65% 移動相 A(MP A)から 100% MP A までのグラジエント溶出により分離を行いました。対応するプロトン付加イオンについては、ACQUITY QDa を用いて ESI ポジティブおよび SIR モードで検出を行いました。注入サイクルは 5 分でした。

LC 条件

LC システム:

ACQUITY UPLC H-Class パラメーター

バイアル:

1 mL インサートを含む 96 ウェルコレクションプレート(製品番号:186000855)

カラム

ACQUITY UPLC HSS PFP カラム 2.1 × 50 mm、1.8 µm(製品番号:186005965)

カラム温度:

40 ℃

サンプル温度:

10 ℃

注入量:

20 μL

流速:

0.40 mL/分

移動相 A:

水 + 2 mM 酢酸アンモニウム + 0.1% ギ酸

移動相 B:

メタノール + 2 mM 酢酸アンモニウム + 0.1% ギ酸

グラジエント

MS 条件

MS システム:

ACQUITY QDa

イオン化モード:

ESI+

取り込みモード

SIR

キャピラリー電圧:

0.8 kV

コーン電圧:

チャンネルの詳細を参照してください

データ管理

LC-MS ソフトウェア:

MassLynx v4.2

結果および考察

図 2 に、処理済み血清(MSG2000)中のそれぞれ 100 ppb および 1 ppm のビタミン A および E のクロマトグラムを示します。分析感度の調査により、100 ppb のビタミン A および 1 ppm のビタミン E の定量が可能であることが示されています(%RSD < 20、バイアス < 15 %、S/N 比 > 10)。この分析法において、ビタミン A では 100 ppb ~ 2000 ppb、ビタミン E では 1 ppm ~ 20 ppm の範囲で直線性があることが分かりました。両方の化合物について、10 回の個別の分析で、相関係数(r2) > 0.993 を達成しました。検量線の例を図 2 に示します。

図 2. ビタミン A および E の検量線の例

5 日間(n=25)にわたって処理済み血清中で低濃度から高濃度まで 5 回の繰り返し抽出および分析を行い、精度を評価しました。再現性と全体の精度は、試験した全濃度レベルのビタミン A と E について CV 8% 以下でした。結果を表 1 にまとめています。試験サンプルと対照サンプルを比較する際に試験した一般的な内因性干渉物質の回収率の計算値はすべて ±15% 以内でした。

マトリックス係数の結果は、内部標準を使用して補正した場合、分析者 6 名からの試験サンプルと対照サンプルの間で ±15% 以内でした(表 2)。マトリックス抑制はビタミン E について認められましたが(平均 = 0.653 および 0.730)、内部標準によって補正されました(平均 = 0.977 および 0.939)。

結論

脂溶性ビタミンの臨床研究分析における UPLC-シングル四重極 MS システム、ACQUITY UPLC-ACQUITY QDa の応用を検討しました。結果によると、このメソッドは、複雑なマトリックス中でも正確で分析感度が高いことが分かりました。サンプル前処理は LLE と比較して比較的単純で、従来の HPLC-UV 法と比較して分析時間が大幅に短縮されます。

参考文献

  1. Simultaneous Analysis of Vitamin A and E in Serum by UPLC-MS/MS for Clinical Research. Waters Corporation, UK, 2019. Waters Application Note 720006642EN

720007164JA、2021 年 2 月

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