MALDIに基づく組織のイメージングは、全身X線撮影のような確立された映像技術に対し、補完的なアプローチを提供します。これは、目的とする化合物のラベリングを必要とせず、複数の化合物を同時にモニターすることが可能です。
従来型の MALDI イメージング
従来のMALDI MSによるイメージングに見られる制限は、MSより前の分離ステップが欠如していることです。組織サンプルが複雑であれば、同重体イオンが妨害となり正確な分布を把握できなくなるリスクを引き起こし、妥当な結果が得られなくなります。
MALDI HDMSによる高解像度イメージング
MALDI SYNAPT™ HDMS™ システムによって提供されるもう一つの分離の軸は、近接した質量を持つバックグラウンドイオンの干渉のないイメージの生成を可能とし、目的の医薬品や代謝物の位置をより正確に特定することにつながります。イオンは、質量分析に先立って、イオンモビリティ(IMS)を使用して分離されます。
下に腎臓切片におけるある特定のイオンの画像の比較を示しました。(「MALDIイメージングマススペクトロメトリーにおける進歩-前処理なしの組織イメージングに加わる新たな分離の軸」をご覧下さい。HDMSの使用により、妨害となる質量402.07 Daのマトリクスイオンの影響が完全に取り除かれ、質量402.01 Daの内因性代謝物の真の空間的な組織分布を提供できることがはっきりと示されています。

イオンモビリティによる分離の無いm/z 402.01のイオンの画像

イオンモビリティによる分離を行ったm/z 402.01のイオンの画像(目的であるイオン)。2.7 ~ 3.3msのイオンモビリティ範囲だけを積算した場合、イオン画像のバックグラウンドノイズのレベルは非常に低くなっています。

ドリフトタイムを3.4 ~ 4.1 msに設定し、イオンモビリティ分離を行った場合のm/z 402.07 のイオン画像(妨害となるバックグラウンドイオン)