高速液体クロマトグラフィーの機能原理

基本的な高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システム構成を、略図 E に示します。

リザーバには溶媒(移動相と呼ばれる)を入れておきます。高圧ポンプ(溶媒送液システム、またはソルベントマネージャといいます)を使用して、指定流量の移動相を正確に送液します(通常はmL/min単位)。インジェクタ(サンプルマネージャまたはオートサンプラ)により、一定に流れる移動相溶媒にサンプルが導入(注入)され、この移動相がサンプルをHPLCカラムに運びます。カラムには、分離に必要なクロマトグラフィー充填剤が入っています。この充填剤は、カラムのハードウェアにより所定の位置に固定されるため、固定相と呼ばれます。HPLCカラムから溶出する分離された化合物のバンドを確認するには検出器が必要です(ほとんどの化合物は無色なので、目視にて確認することはできません)。移動相は検出器から排出されますが、これを廃液として廃棄することも、あるいは必要に応じて回収することも可能です。HPLCでは、分離された化合物バンドが移動相に含まれる場合、その化合物が含まれる溶出分画を回収し、以降の研究に利用することもできます。これは分取クロマトグラフィーと呼ばれます(「HPLCのスケール」に関する項で解説します)。

また、移動相、サンプル、および分離された化合物バンドの流路を形成するポンプ、インジェクタ、カラム、検出器の各コンポーネントが、高圧チューブとフィッティングで接続されている点に着目してください。

 

図 E : 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システム

 

検出器の接続先であるデータ処理システムは、HPLCシステムのコンポーネントとして電気信号を記録し、ディスプレイ上のクロマトグラムを表示、およびサンプル成分の同定と濃度の測定(定量)などに利用されます(図Fを参照)。サンプル化合物の特性は多様なこともあるため、数種類の検出器が開発されています。これには、化合物が紫外線を吸収する場合に、UV検出器を使用するといった例があります。化合物が蛍光を発する場合には、蛍光検出器が使用されます。化合物がこうした特性をもたない場合は、エバポレイト光散乱検出器(ELSD)など、汎用性の高い検出器を使用します。もっとも強力なアプローチは、複数の検出器を同時に使用することです。これには、クロマトグラフィーによる分離の結果を分析するために、UVまたはELSD検出器、あるいはそれらの両方を、または質量分析装置(MS)と組み合わせて使用するといった例があります。結果として、1回の注入から、分析対象物に関して更に包括的な情報が得られます。質量分析装置をHPLCシステムと組み合わせる手法をLC/MSと呼びます。

 

図 F : 代表的なHPLC システム(Waters Alliance

 

HPLCの操作
図 G に、サンプル中の化合物を分離する方式の概略を示します。

移動相が左側からカラムに入り、粒子層を通って右側から排出されます。流れの方向を緑色の矢印で表します。最初に上の図を確認してください。この図は、時間ゼロ(注入の瞬間)におけるカラムを表しています。サンプルがカラムに入り、バンドの形成が始まります。ここに示すサンプルは黄、赤、青の染料の混合物であり、カラムの注入口では1本の黒いバンドとして現れます(実際には、溶媒に溶ける物質ならば、サンプルは何でもかまいません。通常、化合物は無色であり、カラムの壁が不透明なので、溶出時に分離された化合物を確認するには検出器が必要です)。

数分後(下図を参照)、移動相が充填剤の粒子中を連続して流れ続ける際に、個々の染料がそれぞれのバンドとして異なる速度で移動することがわかります。これは、移動相と固定相のあいだで、各染料すなわち分析対象物の親和性に応じた競合が生じているからです。黄色の染料のバンドがもっとも速く移動し、今にもカラムから排出されそうな点に着目してください。黄色の染料は、他の染料よりも強く移動相に引き付けられます。したがって、移動はより速く、移動相の速度に近くなります。青い染料のバンドは、移動相よりも逆に充填剤に引き付けられます。粒子へとより強く引き付けられるので、移動は低速となります。言い換えれば、サンプル混合物のうちで保持時間が最大の化合物です。赤い染料のバンドは移動相に引き付けられる程度が中程度であるため、カラム内の移動速度は中程度です。各染料バンドが異なる速度で移動するため、クロマトグラフィーによる分離が可能となるのです。

 

図 G : クロマトグラフィーのカラムの働き – バンド

 

検出器とは
分離された染料のバンドは、カラムを出るとすぐ検出器に入ります。検出器にはフローセルが含まれており、移動相のバックグランドに対して分離された個々の化合物バンドの識別(検出)を行います(図Hを参照)。(実際には、一般的なHPLC分析濃度における多くの化合物溶液は無色です)。通常の検出器は、化合物の存在を検知して、対応する電気信号をデータ処理システムに送信する機能を備えています。前述のように、分離し、分析する必要がある化合物の特性と濃度に応じて、多様な検出器から適切なものを選択します。

クロマトグラムとは
クロマトグラムは、HPLCシステム内で化学的に発生した(クロマトグラフィーにより発生した)分離の結果を表したものです。ベースラインから立ち上がる一連のピークが時間軸上に描かれます。各ピークは、各化合物に対する検出器の反応を表します。クロマトグラムはデータ処理システムによりプロットされます(図Hを参照)。

 

図 H : ピークが表示される様子

 

図Hでは、黄色のバンドが検出器のフローセルを完全に通過し、生成された電気信号がデータ処理システムに送信されています。その結果得られたクロマトグラムが画面上に現れ始めています。サンプルが初めて注入されたときにクロマトグラムの作成が開始され、画面の下部近くに描かれる直線として始まることに着目してください。これはベースラインと呼ばれ、フローセルを徐々に通過する純粋な移動相を表しています。黄色の分析対象物のバンドがフローセルを通過すると、強い信号がコンピュータに送信されます。サンプルバンドに含まれる黄色の染料の濃度に比例して、直線が最初は上向きに、次に下向きにカーブします。この結果、クロマトグラムにピークが形成されます。黄色のバンドが検出器のセルを完全に通過すると、信号レベルはベースラインに戻ります。この時点のフローセルには、最初のピークが描かれる前と同じ純粋な移動相だけが再び通過するようになります。

少し後で、赤いバンドがフローセルに達します。赤いバンドが初めてセルに入ると、信号がベースラインから立ち上がり、赤いバンドを表すピークが描かれ始めます。この図では、赤いバンドはフローセルを完全に通過してはいません。この図は、この瞬間に検出プロセスを停止した場合に表示される赤いバンドと赤いピークを示しています。赤いバンドのほとんどの部分がセルを通過しているため、実線が示すように、ピークのほとんどの部分が描かれています。検出プロセスを再開すると、赤いバンドはフローセルを完全に通過し、赤いピークが完成します(点線)。もっとも強く保持されている青いバンドは、もっとも遅く移動し、赤いバンドの後に溶出します。点線は、分析を最後まで実行したときに表示される完全なクロマトグラムを表しています。青いピークの幅がもっとも広くなる点に着目すると、興味深いことがわかります。青い分析対象物のバンドはカラム上ではもっとも狭くなっていますが、カラムから溶出するときにはもっとも広くなります。これは、クロマトグラフィーの充填層をもっともゆっくりと移動し、完全に溶出するまでにより多くの時間(および移動相体積)を必要とするからです。移動相は絶えず一定速度で流れているため、青いバンドが広がり、希釈されるという意味になります。検出器の反応はバンドの濃度に比例するため、青いピークは高さが低くなりますが、幅は広がります。


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