Application Brief
This is an Application Brief and does not contain a detailed Experimental section.
This is an Application Brief and does not contain a detailed Experimental section.
このテクノロジーブリーフでは、NIST レファレンス mAb 標準試料に由来する mAb のサブユニットの分析に、Xevo™ 多重反射型飛行時間(MRT)質量分析計と組み合わせた ACQUITY™ Premier UPLC システムを使用するメリットについて説明します。waters_connect™ ソフトウェアプラットフォーム内の Waters INTACT Mass™ アプリを使用してデータを解析し、各サブユニットに局在するプロダクトバリアントに関する包括的な情報が得られました。得られた結果により、Xevo MRT MS プラットフォームの高い感度、高い質量分解能、一貫した ppm 以下の質量精度、並びに waters_connect インフォマティクスプラットフォームの INTACT Mass アプリケーションを使用した統合されたデータの取り込み、解析、レビューの機能が浮き彫りになっています。
モノクローナル抗体のサブユニットベースの分析が、特性解析および製品のばらつきのモニタリングに用いる分析ツールとして注目されています。サブユニットは通常、ペプチドマッピングと比較して、LC-MS 分析の前に必要なサンプル前処理がはるかにシンプルであり、150 kD の mAb をほぼ 25 kD のサブユニットに分割することで、インタクト mAb 分析と比較してより低いレベルの製品のばらつきを明らかにすることができます。
Xevo MRT 質量分析計システムは、その新規の検出器形状と装置設計により、mAb のサブユニット分析において優れた感度、ダイナミックレンジ、質量分解能、質量精度を実現します。この Q-Tof システムには、新規の多重反射飛行時間型設計が組み込まれており、イオンの飛行経路を効果的に拡張することができるため、広い m/z 取り込み領域にわたって、スキャンレートに関係なく最大 100K の質量分解能が一貫して得られます。デュアルゲイン ADC 検出システムにより、生体分子の分析において、高い感度と広いダイナミックレンジが得られると同時に、ppm 以下から低 ppm の質量精度が得られます。この高い分解能、感度、質量精度の組み合わせにより、バイオ医薬品の構造と機能の理解に不可欠な詳細なタンパク質特性解析の分析が可能になります。Xevo MRT 質量分析計システムは、さまざまな N 末端プロセシング、グリコシル化、酸化から生じるような、複雑で低強度のタンパク質バリアントを検出し、特性解析することができます。これらのバリアントは、バイオ医薬品の有効性、安定性、安全性に大きな影響を及ぼす可能性があります。
この試験では、収集したデータを waters_connect INTACT Mass アプリケーションを使用して解析し、これにより、個々の mAb サブユニットのプロダクトのアイデンティティーとプロファイルのばらつきを確認することができました。Xevo MRT 質量分析計システムは、初期の特性解析試験においてバイオ医薬品の分子組成に関する詳細な情報を提供することで、後期開発段階において同じアプローチを使用して最終製品の一貫性と安定性を確保し、バイオ医薬品の商品化に向けてその品質と一貫性を確保するのに役立ちます1,2。
Waters mAb(NIST mAb)サブユニットスタンダード(バイアル中 25 µg、ウォーターズ製品番号:186008927)は、100 µL Milli-Q 水を加えて濃度 250 ng/µL に調製しました。
Waters mAb サブユニットスタンダード 250 ng の 10 回繰り返し注入を、waters_connect INTACT Mass アプリを使用して取り込み、解析しました。自動クロマトグラフィーピーク選択およびスペクトルデコンボリューションを使用することで、質量確認、不純物プロファイリング、純度評価を効率的に行えました。
サブユニット分子種の理論上の質量を以下に示します。
LC システム: |
ACQUITY Premier UPLC システム(バイナリー) |
|
検出: |
UV 280 nm |
|
バイアル: |
TruView LCMS 品質保証 12 × 32 mm スクリューネックバイアル、トータルリカバリー、キャップおよびスリット入り PTFE/シリコンセプタム付き(製品番号:186005663CV) |
|
カラム: |
ACQUITY Premier Protein BEH C4、300 Å、1.7 µm 2.1 mm × 50 mm(製品番号:186010326) |
|
カラム温度: |
60.0 ℃ |
|
サンプル温度: |
6.0 ℃ |
|
注入量: |
1 µL |
|
流量: |
0.400 mL/分 |
|
移動相 A: |
0.1% ギ酸水溶液 |
|
移動相 B: |
0.1% ギ酸含有アセトニトリル |
MS システム: |
Xevo MRT 質量分析計 |
モード: |
MS |
質量範囲: |
m/z 400 ~ 4000 |
極性: |
ポジティブ |
スキャンレート: |
1 Hz |
コーン電圧: |
40 V |
コーンガス: |
0 L/時間 |
イオン源温度: |
120 ℃ |
脱溶媒温度: |
500 ℃ |
脱溶媒ガス: |
800 L/時間 |
キャピラリー電圧: |
3.00 kV |
モノクローナル抗体(mAb)分析において、mAb サブユニット分析には、ペプチドマッピングに比べていくつかの利点があります。このアプリケーションでは、サンプル前処理のステップが少ないより迅速で簡単なワークフローを用いることで、分析するサンプルにおける一貫性が得られます。また、ドメインレベルで複数の特性を同時に特性解析できるため、抗体の特性解析および製品品質モニタリング用の重要なツールになっています。この試験では、NIST mAb レファレンス標準試料に由来する Waters サブユニットスタンダードに関するデータを ACQUITY Premier UPLC-Xevo MRT 質量分析計システムで取り込み、ワークフロー全体のパフォーマンスを評価し、質量精度、質量分解能、感度に関する特定の装置機能を報告しています。図 2 ~ 5 に、IdeS 消化サブユニットのクロマトグラフィー分離(図 2)、および生データ(図 3 と 4)と解析済みデータ(図 5)を示します。これらから、システムのパフォーマンス、およびこのルーチン mAb 特性解析アプローチの利点の概要がわかります。
waters_connect INTACT Mass アプリを使用すると、さまざまな種類の生体分子の質量確認および純度評価のプロセスを自動化することができます。
IdeS 消化 NIST mAb サブユニットの自動 INTACT Mass アプリ LC-MS 分析の出力は、BayesSpray デコンボリューションアルゴリズムを使用して作成されたものです。解析済みデータは、INTACT Mass アプリのデータレビュー画面に図 6 のように表示されます。Xevo MRT 質量分析計ベースの分析によって、間隔が狭い糖鎖ピークを区別できるようになり、感度の向上により、すべての糖鎖バリアントにわたって一貫した質量誤差で、低存在量の糖鎖バリアントの検出が可能になります。
サブユニットの 10 回繰り返し注入で得られたクロマトグラフィー TIC レスポンスクロマトグラム(図 7)により、繰り返し注入全体にわたって一貫した UPLC クロマトグラフィーと一貫した LC-MS 検出レスポンスが重なり合っていることがわかります。このことは、個々のサンプルの確実な評価だけでなく、アッセイのパフォーマンスの期待値の設定、複数のバッチや製造プロセスの同等性試験の支援においても重要です。
この一貫性は、25 kDa Fd' サブユニットのデコンボリューションした質量スペクトル結果のデータの分析でも明らかで、今回は最適化されたデコンボリューションパラメーター(元素組成を最適化)を使用して、測定されたサブユニット質量をさらに調整しています。結果は、平均質量誤差が約 220 ppb、平均二乗平方根(RMS)誤差が 320 ppb であることを示しています(図 8)。これらの結果は、これらのシンプルなアッセイ条件において、このタンパク質サブユニットの質量分析測定の精度と再現性が高いことを裏付けています。
最後に、消化済み Fc サブユニットの低強度の 2 つのグリコフォームのデコンボリューション質量スペクトルのレスポンスデータ(図 9)も同様に、10 回繰り返し注入にわたってグリコフォームの相対定量が一貫していることを示しています。
サブユニットベースの分析により、初期の特性解析ならびに製品開発・プロセス開発をサポートする継続分析の両方において、モノクローナル抗体の製品のばらつきに関する重要な情報が得られます。サブユニットベースの分析における Xevo MRT 質量分析計の機能には、サブユニットバリアントの荷電状態の幅広い m/z 範囲にわたり、何桁にも広がる MS レスポンスにおいて、一貫した性能(分解能、質量精度)を維持する機能が含まれます。このシステムの高い感度と ppm 以下から低 ppm の質量精度により、低存在量の修飾の確実な割り当てが可能になり、その測定の一貫性により、分析法の性能の統計的バリデーションが可能になるとともに、複数バッチの品質とプロセス開発の QbD 試験が容易に行えます。
この卓越した MS 検出性能は、waters_connect INTACT Mass アプリ内での合理化されたコンプライアンス対応の自動ワークフローにより補完され、これによって、個々のサンプルから取り込まれたサブユニットデータの取り込み、解析、レビュー、レポート作成が統合されて、より大きなサンプルセットにわたってまとめられました。
全体として、Xevo MRT 質量分析計システムでの mAb サブユニットベースの分析は、スプレッドシートや他のサードパーティ製ソフトウェアツールを使用した手動でのデータ解析/レポートに伴う複雑さを避けつつ、バイオ医薬品の分析者が、バイオ医薬品の開発と販売に関して確実な意思決定を行える、頑健で効率的なプラットフォームであることが実証されました。
720008755JA、2025 年 3 月