• アプリケーションノート

20 mm 陽イオン交換カラムによる迅速モノクローナル抗体(mAb)チャージバリアント分析

20 mm 陽イオン交換カラムによる迅速モノクローナル抗体(mAb)チャージバリアント分析

  • Hua Yang
  • Lili Macedo
  • Stephan M. Koza
  • Steve Shiner
  • Waters Corporation

要約

BioResolve™ Premier SCX mAb、3 µm、2.1 × 20 mm カラムを使用し、塩グラジエントまたは pH グラジエントを用いた NISTmAb の迅速で信頼性の高い、6 分間での陽イオン交換(CEX)チャージバリアント分析を紹介します。20 mm カラムでは、より長いカラムでの以前の結果と比較して、予想どおり分離能が低下しますが、サンプルスループットの向上が必要な際は、5 分の 1 の分析時間で効果的な分離が得られることがしばしばあります。

アプリケーションのメリット

  • 2.1 × 20 mm BioResolve Premier SCX mAb 3 µm カラムを使用したインタクト mAb のプロファイリングのための迅速陽イオン交換メソッド
  • 移動相の使用量およびサンプルロード要件の減少

はじめに

モノクローナル抗体(mAb)などのバイオ医薬品の急速な成長により、ハイスループットのメソッドが求められています。このようなニーズを満たすために、大幅に短い分析用 LC カラムを使用して分析時間を短縮することが提案されています1-2。 これらの報告において、短いカラムではクロマトグラフィーの詳細が著しく損なわれている可能性がありますが、ハイスループットのアプリケーションには十分なピーク分離が得られる可能性があります。そのようなメソッドの 1 つである陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)は、ネイティブな状態の医薬品タンパク質(:mAb)のチャージバリアントをモニターするのによく使用されます。さらに、CEX のサンプルスループットの向上は、これらの医薬品の製造および製剤開発において大きなメリットがあります。このアプリケーションノートでは、カラム長 20 mm の BioResolve Premier SCX mAb カラムを使用し、塩グラジエントまたは pH グラジエントでの陽イオン交換メソッドを用いた、NISTmAb の 6 分間での迅速陽イオン交換チャージバリアント分析を紹介します。

実験方法

サンプルの説明

水で濃度 2.5 mg/mL に希釈した NISTmAb RM 8671(10 mg/mL)。

分析条件

LC 条件

LC システム:

ACQUITY™ UPLC™ H-Class Bio

検出:

280 nm での ACQUITY TUV(フローセル:5 mm、1.5 µL)

カラム:

BioResolve Premier SCX mAb 3 µm、2.1 × 20 mm(製品番号:186011020)

カラム温度:

30 ℃

サンプル温度:

10 ℃

注入量:

1 µL

流量:

0.3 mL/分

移動相:

塩グラジエントの場合:

移動相 A:20 mM MES、pH 6.7

移動相 B:20 mM MES + 1M NaCl、pH 6.7

pH グラジエントの場合:

移動相 A:BioResolve CX pH 濃縮液 A、pH 5.0(製品番号:186009063)を 10 倍希釈したもの

移動相 B:BioResolve CX pH 濃縮液 B、pH 10.2(製品番号:186009064)を 10 倍希釈したもの

塩グラジエントの場合のグラジエントテーブル

pH グラジエントの場合のグラジエントテーブル

データ管理

LC ソフトウェア:

Empower™ 3

結果および考察

2.1 × 20 mm カラムでのインタクト NISTmAb の塩グラジエント分離および pH グラジエント分離の例(3 分および 4.5 分の溶出グラジエント、サンプルロード量 2.5 µg)を図 1 に示します。以前に報告されている試験と同じく、pH グラジエントでは酸性チャージバリアントの分離は多くの場合向上しています。また、内径 4.6 mm のより長いカラムでの NISTmAb の CEX 分離と比較した場合、長さ 20 mm のカラムを用いると、塩グラジエントでの分離では、pH グラジエントを用いた分離と比較して、クロマトグラフィーの詳細がより大きく失われていることもわかりました3–4。 これらの問題点はあるものの、低拡散 LC システムで 2.1 × 20 mm の CEX カラムを使用した場合、参照しているより高分離能のメソッドの 5 倍のサンプルスループットでタンパク質のチャージバリアント分析を行うのに十分な分離が得られる可能性があります。さらなるメリットとして、使用するサンプルおよび移動相の量を、4.6 × 50 mm の CEX カラムと比較して 10 分の 1 以下に減らすことができます。

図 1.BioResolve Premier SCX mAb 2.1 × 20 mm カラムを使用し、3 分および 4.5 分の溶出グラジエント(流量 0.3 mL/分)を用いた場合の、NISTmAb チャージバリアントの塩グラジエント分離および pH グラジエント分離の例。詳細は本文に記載しています。

ハイスループットの LC アプリケーションでは、カラムが頑健で、厳しい条件に耐えられることが必要です。頑健さを実証するするために、BioResolve Premier SCX mAb 2.1 × 20 mm カラムを、オンカラムでゼロから 4000 psi までの 500 回連続の高速圧力サイクルにさらしました。圧力サイクルの前後で、NISTmAb を塩グラジエントを使用して分析し、クロマトグラフィー性能の変化を評価しました(図 2)。その結果、分離およびチャージバリアントのプロファイルに見られた変化はわずかで、機械的ベッド安定性が高レベルであることが示されました。

図 2.BioResolve Premier SCX mAb 2.1 × 20 mm カラムでの 500 回の 0 ~ 4000 PSI(275 bar)の圧力サイクル前後における NISTmAb チャージバリアントの塩グラジエント分離の例。塩基性バリアントでは、軽微な分離の低下(約 3.5%)が観察されました。LC メソッドは、3 分間での 75 ~ 125 mM NaCl のグラジエント、20 mM MES(pH 6.0)、0.2 mL/分、30 ℃、TUV = 280 nm でした。

結論

2.1 × 20 mm BioResolve Premier SCX mAb 3 µm カラムで実行するハイスループット(6 分/分析)の CEX メソッドは、分離能が低下するものの、mAb チャージバリアントの有用な分離法になる可能性があります。酸性型の NISTmab について、pH に基づく溶出グラジエントでは、塩グラジエントよりも効果的な分離が維持されていました。2.1 × 20 mm カラムでは、よりハイスループットであることに加えて、移動相の使用量および装置の実行時間の低減、サンプル量の低減が可能であるとともに頑健な性能が得られます。

参考文献

  1. Fekete S. and Guillarme D. Ultra-short columns for the chromatographic analysis of large molecules. Journal of Chromatography A 1706 (2023) 464285.
  2. Navarro-Huerta J.A., Murisier A., Nguyen J.M., Lauber M.A., Beck A., Guillarme D., Fekete S. Ultra-Short Ion-Exchange Columns for Fast Charge Variants Analysis of Therapeutic Proteins.Journal of Chromatography A 1657 (2021) 462568.
  3. Yang H., Warren W., and Koza S. AutoBlend Plus Technology for Ion-Exchange Chromatography Method Development and Robustness Testing.Waters Application Note. 720006557, April 2019.
  4. Wang Q, Rzewuski S. C., Lauber M. A., Development of pH Gradient Mobile Phase Concentrates for Robust, High Resolution mAb Charge Variant Analysis.Waters Application Note720006491, January 2019.

720008295JA、2024 年 4 月

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