• アプリケーションノート

Waters™ MassTrak™ ステロイド血清セット 2 および 3 のキャリブレーション試薬および品質管理の計量計測トレーサビリティー

Waters™ MassTrak™ ステロイド血清セット 2 および 3 のキャリブレーション試薬および品質管理の計量計測トレーサビリティー

  • Laura Moran
  • Norma Breen
  • Dominic Foley
  • Leanne Davey
  • Waters Corporation

体外診断(IVD)目的です。一部の国/地域では提供されていません。

要約

LC-MS/MS 分析法を利用している臨床ラボはしばしば、地域の規制当局に準拠するための検査法をバリデーションすることが求められます。一部の地域のラボでは、ISO 15189-2022 Medical laboratories–Requirements for quality and competence(医療検査室の品質と能力に対する要件)に準拠するために、計量計測的にトレーサブルなキャリブレーション物質を使用することがラボに求められます。そのため、ウォーターズは、バリデーション済み LC-MS 分析法を使用する際の結果の正確性と調和を信頼できるように、すべての分析種の計量計測トレーサビリティーを MassTrak ステロイド血清キャリブレーション試薬セットおよび品質管理セットの設計、開発、製造に取り入れています。

このアプリケーションブリーフでは、MassTrak ステロイド血清キャリブレーション試料セット 2 および 3 で実行する正確性試験およびロット間試験のサマリー、ウォーターズがこれらの製品の計量計測トレーサビリティーをどのように確保しているかに関するステップバイステップガイドについて記載します。

アプリケーションのメリット

  • 計量計測的にトレーサブルなキャリブレーション試薬および QC により、ISO 規制(ISO 15189)への準拠が確保される
  • レファレンスラボと比較した場合の、一次標準試料および二次標準試料の正確性および精度の信頼性
  • 凍結乾燥製品であるため、サンプルの前処理にかかる時間が短縮される

はじめに

液体クロマトグラフィー-質量分析の使用は、ここ数年でさまざまなラボで採用されるルーチンの分析手法になり、より頑健で高感度、選択的、信頼性の高いワークフローを求めて ELISA ベースの分析法からシフトしています。多くの臨床ラボの分析法が薬事未承認検査法(LDT)に基づいているため、このシフトにより、手動での調製が増加しています。社内のキャリブレーション試薬および QC は、ラボのスタッフによって調製および特性解析される可能性があり、これがラボ内での正確性および生産性の低下につながる可能性があります。ISO 15189-2022 などの地域の ISO ガイドラインに準拠する必要がある場合、この問題はさらに複雑になります。そのため、カスタマーの信頼を確保し、結果全体にわたるばらつきを低減するために、高い基準で製造された、計量計測的にトレーサブルな LC-MS/MS キャリブレーション試薬および QC が必要となります。

MassTrak ステロイド血清セット 2 および 3(IVDR)は、利用可能な最高レベルの計量計測的にトレーサブルなさまざまなステロイドホルモンを含む凍結乾燥血清です。キャリブレーション試薬セット 2 には、アンドロステンジオン、テストステロン、17-ヒドロキシプロゲステロン(17-OHP)、デヒドロエピアンドロステロン硫酸(DHEAS)が含まれており、ヒト血清中のアンドロゲンとプロゲステロンを定量測定して生理学的マーカーのモニタリングに役立てることを目的としています。一方、MassTrak ステロイド血清キャリブレーション試薬セット 3 には、アンドロステンジオン、17-OHP、コルチゾール、11-デオキシコルチゾール、21-デオキシコルチゾールが含まれており、ヒト血清中のアンドロゲンおよびグルココルチコイドの定量に使用して、生理学的マーカーのモニタリングに役立てることを目的としています。すべての Waters MassTrak ステロイド血清セットは、計量計測的にトレーサブルな一次および二次の社内標準試料を使用して値が割り当てられています。これらの社内標準試料は、認定標準試料を含む、ホルモンが超低濃度およびチャコール処理でステロイドを除去した血清を使用して調製されています。これらの社内標準試料の濃度は、利用可能な場合、独立した QC 物質および EQA スキームを使用して独立に確認されています。

図 1.  Waters MassTrak ステロイド血清セット 2 および 3 のキャリブレーション試薬および QC

結果および考察

計量計測トレーサビリティー

ステロイドキャリブレーション試薬と QC の割り当てには、一次社内標準試料と二次社内標準試料の 2 つの計量計測トレーサビリティープロセスを使用します。一次社内標準試料は重量測定法で調製し、NIST にトレーサブルで、アンドロステンジオン、DHEAS、11-デオキシコルチゾール、21-デオキシコルチゾールが分析種として含まれています(図 2)。二次社内標準試料にはテストステロン、コルチゾール、17-OHP が含まれ(図 3)、これらはゲント大学および Referenzinstitut für Bioanalytik(RfB)にトレーサブルで、レファレンス測定手順を使用して値が割り当てられています。これらの値は二次レファレンス測定手順の割り当てに基づいています。次に、これらの一次標準試料および二次標準試料を使用して、MassTrak ステロイド血清キャリブレーション試料および QC セットが作製されて濃度が割り当てられ、これらのセットは次に EQA 物質および社内パネルの形の独立した品質管理物質を使用して確認されます。

図 2.  MassTrak ステロイド血清キャリブレーション試薬および品質管理セット 2 および 3 の値の割り当てに関する、一次社内標準試料(アンドロステンジオン、DHEA-S、11-デオキシコルチゾール、21-デオキシコルチゾール)の計量計測トレーサビリティー
図 3.  MassTrak ステロイド血清キャリブレーション試薬および品質管理セット 2 および 3 の値割り当てに関する、二次社内標準試料(テストステロン、コルチゾール、17-OHP)の計量計測トレーサビリティー

ウォーターズとレファレンスラボの比較

MassTrak ステロイド血清キャリブレーションおよび品質管理物質の作製および濃度割り当てに使用した二次標準試料は、ウォーターズの値割り当て手順を用いて調製され、社内で値が割り当てられています。これにより、値が手順の仕様範囲内であることが確認されてから、計量計測的にトレーサブルなレファレンスラボに送られ、レファレンス測定手順を用いて値が割り当てられます(表 1 に概説)。

表 1.  レファレンスラボで採用されているレファレンス測定手順

セット 2 および 3 のキャリブレーション試薬および QC にはプロゲステロンが含まれていないことに注意してください。この情報はデモ目的のみです。アプリケーションノート「Waters MassTrak 内分泌ステロイドキャリブレーション試薬および品質管理セットの計量計測トレーサビリティー」(720007404JA)を参照してください。このアプリケーションノートには、プロゲステロン、コルチゾール、テストステロン、17-OHP、DHEAS、21-デオキシコルチゾール、コルチコステロン、11-デオキシコルチゾール、アンドロステンジオン、11-デオキシコルチコステロン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、ジヒドロテストステロン(DHT)が含まれる MassTrak 内分泌ステロイド血清キャリブレーション試薬および品質管理セット 2 および 3 に関する計量計測トレーサビリティーの情報が記載されています。

表 2 に、レファレンスラボ(ラボ A)が提供したレファレンス測定値に対する二次標準試料のウォーターズ社内値割り当ての結果を示します。表 2 に示されていますが、二次標準キャリブレーション試薬 1 の濃度は、プロゲステロンおよびテストステロンのレファレンスラボの定量下限*(LLoQ*)より低い濃度です。ウォーターズの値をラボ A の値と比較すると、キャリブレーション試薬 2 ~ 5 の場合、値割り当ての間の偏差がわずかであるため、ウォーターズでは当社のキャリブレーション試薬 1 の値割り当てを使用することに自信があります。最大 % 差は、コルチゾールでは 3.5%、プロゲステロンでは 6.4%、テストステロンでは 4.8% です。これらの結果により、MassTrak ステロイド血清キャリブレーション試薬および QC にさらなる保証と信頼性がもたらされ、異なるロットの製品でも同等の患者結果を正確に保証します。

表 2.プロゲステロン、テストステロン、コルチゾールを含む二次標準試料の値割り当てにおける、ウォーターズとラボ A の間の % 差

正確性およびロット間の比較

EQA 物質の分析により、テストステロン、アンドロステンジオン、17-OHP、コルチゾールについて、キャリブレーション試薬セットの正確さを評価しました。それぞれの MassTrak ステロイド血清キャリブレーションセットの検量線の下端、中間、上端での測定精度を利用して、3 つの製造ロットにわたってデータを取得しました。次に、これらの結果を、各 EQA サンプルに質量分析で割り当てられたターゲット値と比較し、ターゲットとの平均差(%)を表にしました。11-デオキシコルチゾールおよび 21-デオキシコルチゾールの EQA 物質は入手できないため、これらの化合物の低、中、高濃度範囲での正確性の評価には、NIST にトレーサブルな社内パネルを使用しました。結果を図 4 および 5 に示します。このデータにより、キャリブレーション試薬セットの正確性が ± 10% 以内であることが実証されますが、同時に、一貫した信頼性の高い試験物質を確保するために臨床ラボに必須の、製造プロセスのロット間再現性も実証されます。

図 4.  MassTrak セット 2 ステロイド血清キャリブレーションセットの正確性を示す、低、中、高濃度の EQA ターゲットからの偏差(%)のロット間比較
図 5.  MassTrak セット 3 ステロイド血清キャリブレーションセットの正確性を示す、低、中、高濃度の EQA ターゲットからの偏差(%)のロット間比較

不確かさの測定

MassTrak ステロイド血清セット 2 および 3 キャリブレーション試薬の測定の不確かさを、正確性、精度、物質の拡張不確かさ、使用するラボ装置の測定データを使用して計算しました。

表 3.  MassTrak ステロイド血清キャリブレーション試薬セット 2 およびセット 3 のターゲット濃度。SI 単位を ng/mL から nmol/L に変換するには、テストステロンの場合は 3.470、アンドロステンジオンの場合は 3.494、17-OHP の場合は 3.028、DHEAS の場合は 2.716、コルチゾールの場合は 2.761、11-デオキシコルチゾールおよび 21-デオキシコルチゾールの場合は 2.889 を乗算します
表 4.  セット 2 キャリブレーション試薬の拡張不確かさの測定。SI 単位を ng/mL から nmol/L に変換するには、テストステロンの場合は 3.470、アンドロステンジオンの場合は 3.494、17-OHP の場合は 3.028、DHEAS の場合は 2.716 を乗算します。
表 5.  セット 3 キャリブレーション試薬の拡張不確かさの測定。SI 単位を ng/mL から nmol/L に変換するには、アンドロステンジオンの場合は 3.494、17-OHP の場合は 3.028、コルチゾールの場合は 2.761、11-デオキシコルチゾールおよび 21-デオキシコルチゾールの場合は 2.889 を乗算します

結論

MassTrak Steroid 血清セット 2 および 3 のキャリブレーション試薬および QC の計量計測トレーサビリティーは、一次および二次の社内標準試料を使用して確認されており、ラボの ISO 15189 準拠に役立ちます。当社製品の精度および正確性が、英国 NEQAS から提供された EQA 物質という独立した QC 物質の測定によって確認されました。

参考文献

  1. Foley D, Rossiter P, Breen N, Calton, LJ.Metrological Traceability of the Waters MassTrak Endocrine Steroid Calibrator and Quality Control Sets.Waters Application Note 720007404.2022 Apr.
  2. Pitt J. Principles and Applications of Liquid Chromatography-Mass Spectrometry in Clinical Biochemistry.The Clinical Biochemist Reviews.2009 Feb; 30(1): 19–34.

ソリューション提供製品

720008223JA、2024 年 2 月

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