• アプリケーションノート

臨床研究のための血清エストロゲンの UPLC-MS/MS 分析における新規 Xevo™ TQ Absolute IVD の利用

臨床研究のための血清エストロゲンの UPLC-MS/MS 分析における新規 Xevo™ TQ Absolute IVD の利用

  • Robert Wardle
  • Gareth Hammond
  • Waters Corporation

研究目的のみに使用してください。診断用には使用できません。

要約

このアプリケーションブリーフでは、臨床研究のための血清エストロゲンの分析における Xevo TQ Absolute IVD 質量分析計の高い分析感度および定量性能を実証しています。

アプリケーションのメリット

  • Xevo TQ Absolute IVD を用いた低濃度の 17β-エストラジオールおよびエストロンの定量
  • シンプルな液-液サンプル前処理メソッド
  • 17β-エストラジオールとエストロンの選択的検出のための UPLC 分離

はじめに

17β-エストラジオール(E2)とエストロン(E1)の 2 つは、妊娠していないヒトの主要な生物学的活性エストロゲンです。E2 は、卵巣と精巣で、主にテストステロンの芳香族化によって生成し、E1 のほとんどはアンドロステンジオンに由来します。E2 は E1 に代謝される可能性があり、E1 から E2 への変換もあり得るため、両方の化合物の測定が必要です。

E2 および E1 を分析する際の最大の課題は、特定の臨床研究アプリケーションにおいて、低濃度レベルまで測定する必要があることです。現在、一部のイムノアッセイ手法では分析感度、およびより一般的に選択性が不足していており、公表されている LC-MS/MS 分析法では大量のサンプルを使用し、多くの場合誘導体化を含む複雑なサンプル抽出を用います。

図 1.  ACQUITY™ UPLC™ I-Class FL IVD および Xevo TQ Absolute IVD 質量分析計 

StepWave™ XS イオントランスファー光学系および Xtended Dynamic Range(XDR)を搭載した Xevo TQ Absolute IVD 質量分析計を使用することで、6 桁以上のリニアダイナミックレンジが得られ、分析感度、頑健性、信頼性が向上します。これをエストロゲンのシンプルなサンプル前処理メソッドおよび UPLC™ 分離と組み合わせることで、選択性および分析感度の高い分析法になり、臨床研究において E2 および E1 を分析することが可能になります。 

実験方法

サンプル前処理および UPLC-MS/MS 分析

E2 および E1 の認定レファレンス溶液および安定同位体標識内部標準(13C3)は、Merck(英国ジリンガム)から購入しました。キャリブレーション試薬は、Golden West Biologicals(カリフォルニア州テメキュラ)から購入した MSG4000 処理済み血清の代用マトリックス中に調製しました。E2 の検量線範囲は 2 ~ 1000 pg/mL、E1 の検量線範囲は 1 ~ 1000 pg/mL でした。QC サンプルは、Golden West Biologicals(カリフォルニア州テメキュラ)から購入した MSG4000 処理済み血清の代用マトリックス中に、3.2 pg/mL、10.5 pg/mL および 700 pg/mL の濃度で調製しました。水、メタノール、および酢酸エチルは、Fisher Scientific(英国、ラフバラー)から購入しました。フッ化アンモニウムとヘキサンは、Merck(英国、ジリンガム)から購入しました。 

質量単位(pg/mL)から SI 単位(pmol/L)に変換するには、E2 の場合は 3.671、E1 の場合は 3.699 を乗算しました。

250 µL のサンプルに、20 µL の内部標準を加えて混合しました。液-液抽出は、1 mL の 85:15(v:v)ヘキサン:酢酸エチルを添加し、10 分間十分に混合して行いました。サンプルを 4000 g で 5 分間遠心分離してから、上層の有機層 700 µL を 1 mL ガラス製インサート付き 96 ウェルプレート(Waters 製品番号:186000855)に移しました。サンプルを蒸発乾固させ、20 µL のメタノール、次いで 30 µL の蒸留水に再溶解しました。

その後、表 1 に示したように、水/メタノール/フッ化アンモニウムのグラジエントと Waters™ CORTECS™ UPLC Phenyl カラム(ウォーターズ製品番号:186008319)を使用して、ACQUITY UPLC I-Class FL システムと Xevo TQ Absolute IVD 質量分析計にサンプルを注入しました。

表 1.  E2 と E1 の分離に用いたグラジエントテーブル(総実行時間 4.75 分)

すべての分析種を検出するためのマルチプルリアクションモニタリング(MRM)トランジション、定量イオンと定性イオンを表 2 に示しており、エレクトロスプレーネガティブイオン化モードでキャピラリー電圧 2.2 kV、MS1 および MS2 について分離度設定 0.7 FWHM に設定しています。 

表 2.  E2 および E1 の定量イオン、定性イオン、およびそれらの内部標準の MRM パラメーター

結果および考察

E2 および E1 のクロマトグラフィー分離が、注入間時間約 5.5 分で得られました。代表的な抽出イオンクロマトグラムを図 2 に示します。

図 2.  英国の NEQAS サンプルから抽出したそれぞれ 21.0 pg/mL および 34.0 pg/mL の E2 および E1 の代表的なクロマトグラム

検量線は、示されている検量線範囲にわたって直線性であり、8 回の実験にわたる E2 および E1 についての相関係数は > 0.99 で、% バイアスは ±15% 以内(キャリブレーション試薬 1 については ±20%)であることが示されました。

精度性能は、5 回の実験それぞれにおいて、低、中、高レベルの QC サンプルを 5 回繰り返しで抽出および分析することによって評価しました。すべてのステロイドホルモンについて、すべての濃度レベルでの実験内精度および合計精度が ≤5.9% CV でした(表 3 を参照)。

表 3.  ACQUITY UPLC I-Class FL および Xevo TQ Absolute IVD での、抽出された E2 および E1 の分析の精度性能のサマリー

分析感度は、Golden West Biologicals の MSG4000 処理済み血清を低濃度レベルでスパイクすることにより評価しました。次に、4 回の実験それぞれで、各サンプルを 10 回繰り返し抽出して分析しました。E2 および E1 について、1.0 pg/mL で、%CV ≤20%、バイアス ≤15% でしたが、E2 について、このレベルでシグナル/ノイズ比(ピーク間)≥10:1 が得られなかったので、この分析種には LLoQ 3 pg/mL を選択しました。図 3 に、これらの濃度での E2 の代表的なクロマトグラムを示します。LLoQ 1 pg/mL は得られませんでしたが、ブランクの処理済み血清サンプルは、E2 を 1 pg/mL になるようにスパイクした同じ血清と区別することができます。

図 3.  ブランクサンプルおよび処理済み血清中の低 E2 レベルのサンプルのクロマトグラム例

マトリックス効果の調査を、6 人からの血清を用いて行いました。内因性ピークの面積は個別に定量し、低濃度および高濃度レベルのスパイク済みサンプルは、溶媒スパイクサンプルと比較できるように、平均ピーク面積を用いて調整しました。ピーク面積を見ると、マトリックスファクターの結果に若干の抑制および増強が見られましたが、これらは内部標準で補正しました(表 4)。

表 4.  E2 および E1 のマトリックスファクターのサマリー

40 件の英国 NEQAS の E2 サンプルを分析して、計算濃度で質量分析ラボのトリム平均と比較することにより、正確性を評価しました。E2 の相関を表 5 および図 4 で見ることができ、EQA スキーム と良く一致していることがわかります。 

表 5.  E2 の正確性のサマリー
図 4.  英国 NEQAS の E2 スキームとの比較についてのデミング回帰およびブランド-アルトマンプロット

結論

Xevo TQ Absolute IVD は、臨床研究用の 17β-エストラジオールおよびエストロンの分析において優れた分析感度および定量性能を示し、以下の分析法性能特性を有することが実証されました。

  • すべての実験において、E2 および E1 についての検量線の相関係数(r2)が >0.99 である
  • 実験内精度および合計精度の結果の CV が ≤5.9%
  • E2 について 3.0 pg/mL(11.1 pmol/L)、E1 について 1.0 pg/mL(3.7 pmol/L)の分析感度濃度が達成され、%CV ≤20%、バイアス ≤15%、S:N 比(ptp) >10:1 が得られる。さらに、ブランクの処理済み血清サンプルを、わずか 250 µL のサンプルで、誘導体化を必要とせずに、1 pg/mL になるように E2 をスパイクした同じマトリックスサンプルと区別できる
  • 計算濃度をコントロールサンプルと比較した場合、6 人のサンプルでイオン化抑制がほとんどまたはまったく見られない
  • この分析法は、英国 NEQAS E2 スキームとの比較を通して正確であることがわかり、デミング回帰は y = 0.971x + 4.874 で、ブランド-アルトマン平均バイアス -4.15% を示す

720007940JA、2023 年 7 月

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