• アプリケーションノート

ACQUITY™ UPLC™ H-Class PLUS および ACQUITY UPLC RI 検出器を使用した飲料中のスクラロースの分析

ACQUITY™ UPLC™ H-Class PLUS および ACQUITY UPLC RI 検出器を使用した飲料中のスクラロースの分析

  • Kim Van Tran
  • Euan Ross
  • Peter Hancock
  • Waters Corporation

要約

スクラロースは非栄養性甘味料であり、さまざまな食品やソフトドリンクに含まれています。スクラロースは、スクロース分子中の水酸基3 つを、塩素原子に選択的に置換することで生成されます。甘味料の一般的な検出法として、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に紫外線/可視光(UV/Vis)検出を組み合わせたものが用いられますが、スクラロースには発色団がないため、別の検出法が必要になります。スクラロースの代替の検出法として、示差屈折率(RI)、エバポレイト光散乱(ELS)、質量分析法(MS)などがあります。このアプリケーションノートでは、ACQUITY UPLC H-Class PLUS に ACQUITY RI 検出器を組み合わせて用いたスクラロースの分析法を紹介します。CORTECS™ T3 分析カラムと Empower™ 3 クロマトグラフィーデータシステムを組み合わせたセットアップのシンプルなアイソクラティック分析法により、ソフトドリンクや栄養ドリンクなどの飲料中のスクラロースの測定が可能になります。 

アプリケーションのメリット

  • ルーチンの製品品質管理のための、分析法のセットアップを簡単に行えるシンプルなアイソクラティック LC 分析法
  • ACQUITY RI 検出器は内部容量が小さく、低拡散で安定したベースライン性能により、信頼性の高い定量結果を実現
  • ACQUITY RI 検出器の断熱光学ベンチと、流入溶離液の温度を効率的に平衡化することにより、ベースラインのドリフトを最小化
  • 再現性、正確性、精度が優れた分析法

はじめに

スクラロースは高強度の甘味料で、さまざまな食品および飲料に砂糖の代用として使用されています。スクラロースは、スクロース分子中の水酸基3 つを、塩素原子に選択的に置換することで生成されます。スクラロースには摂取カロリーがなく、無糖製品に幅広く使用されています。HPLC と UV/Vis 検出の組み合わせは、アスパルテームやアセスルファムカリウム(Ace-K)などの甘味料の分析アプローチとして一般的に用いられています1。 スクラロースには発色団がないため、食品および飲料中のその測定には RI、ELS、MS などの代替の検出器が必要になります。

このアプリケーションノートでは、さまざまな栄養ドリンクに含まれるスクラロースの定量分析法の一例を紹介します。示差屈折率の検出は、アイソクラティック移動相を使用する分析法に限定されますが、注入間の再平衡化のステップが不要なシンプルな分析法です。スクラロースの保持に CORTECS T3 カラムを使用したところ、試験した製品中のスクラロースと他の成分の許容できる分離が得られました。 

実験方法

材料と試薬

スクラロース標準品は Sigma Aldrich から入手しました(純度 98.0% 以上、HPLC)。

試薬

メタノール(HPLC グレード)は Honeywell Research Chemicals から入手しました。

水は PureLab flex ELGA System(米国 LabWater)から入手しました。

スクラロースを含む製品は最寄りの店(米国マサチューセッツ)で入手しました。 

調製

標準試料の調製

スクラロース標準品を 800 µL 水/200 µL メタノール中に濃度 500 µg/mL になるように調製し、4 ℃ で保管しました。次に、80:20 水:メタノールでの連続希釈により、7.8 µg/mL ~ 500 µg/mL の検量線を作成しました。

サンプル製品

サンプル G1 および P2:800 µL のサンプルを取り、200 µL のメタノールを添加しました(1.25 倍希釈)。
サンプル 5H:10 µL のサンプルを取り、790 µL の水と 200 µL のメタノールを添加しました(100 倍希釈)。
希釈後、サンプルをボルテックス混合し、PTFE 0.2 µm(製品番号:WAT200556)でろ過して、10 µL の G1、P2、または 5 µL の 5H サンプルを注入しました。サンプルは 6 回繰り返しで調製しました。

LC 条件

LC システム:

ACQUITY UPLC H-Class PLUS システム(クオータナリーソルベントマネージャー)

検出:

ACQUITY UPLC RI 検出器:サンプリングレート 20 ポイント/秒

バイアル:

LCGC 品質証明透明ガラス、マキシマムリカバリー、キャップおよびプレスリット PTFE/シリコーンセプタム付き、1.5 mL(製品番号:186000327C)

フィルター:

シリンジフィルター 0.2 µm PTFE(製品番号:WAT200556)

カラム:

CORTECS T3 カラム、120 Å、2.7 µm、3 mm × 100 mm (製品番号:186008489)

カラム温度:

50 ℃

サンプル温度:

25 °C

検出器温度:

50 ℃

注入量:

5 µL または 10 µL

流速:

1 mL/分

移動相:

水/メタノール = 80:20

サンプル希釈液:

水/メタノール = 80:20

シール洗浄溶媒:

水/メタノール = 80:20

ニードル洗浄溶媒:

水/メタノール = 80:20

パージ溶媒:

水/メタノール = 80:20

データ管理

クロマトグラフィーソフトウェア:

Empower 3 クロマトグラフィーデータソフトウェア(CDS)

結果および考察

スクラロースの分析を ACQUITY UPLC H-Class PLUS に ACQUITY UPLC RI 検出器を組み合わせて実施しました。CORTECS T3 カラムで組成 80:20 水:メタノールのアイソクラティック移動相を使用しました。この移動相条件により、許容できる保持、ピーク形状、栄養ドリンク中の他の成分からの分離が得られました。RI 検出器では、温度 50 ℃ で最良のレスポンスが得られました。ベースラインのばらつきを低減するために、カラム温度と RI 検出器の温度をいずれも 50 ℃ に設定しました。最低濃度のキャリブレーション標準(7.8 µg/mL)のシグナル/ノイズ比は Empower CDS ソフトウェアを使用して決定しました。図 1 に最低濃度のキャリブレーション標準のクロマトグラムおよび Empower で計算されたシグナル/ノイズ比とピークテーリング係数を示します。

図 1.  CORTECS T3 カラムを使用して得られたスクラロース標準試料(7.8 µg/mL)のクロマトグラム

スクラロースのマルチポイント検量線を、80:20 水:メタノールでの連続希釈による 6 回繰り返しで作成しました。キャリブレーション範囲は 7.8 µg/mL ~ 500 µg/mL で、優れた直線性(R2 > 0.999)を示しました(図 2 を参照)。

図 2.  ACQUITY RI 検出器を使用して得られた 7.8 ~ 500 µg/mL のスクラロースの検量線

分析法の頑健性

カラム性能および圧力トレース
カラムの圧力トレースを、標準試料およびサンプルの 100 回を超える注入によりモニターしました。圧力トレース全体で大きな変化は見られませんでした(約 23 psi の差)。カラムでの保持時間の再現性を、100 回の注入について、間にマトリックスサンプルをはさんでモニターし、1 回目の 500 µg/mL 標準の注入から最後の 500 µg/mL 標準の注入までを重ね描きしました(図 3a および 3b)。 

図 3a.  100 回の注入にわたる圧力トレース 
図 3b.  100 回の注入にわたる 500 µg/mL 標準試料の再現性

飲料中のスクラロースの分析

さまざまなスクラロース飲料の 6 回繰り返し分析の定量結果を図 4 に示します。サンプルは、キャリブレーション範囲に入るように希釈しました。結果から、スクラロースが他の成分から明確に分離されており、結果の再現性が高いことがわかりました。

図 4.  スクラロース飲料の定量分析の結果および代表的なクロマトグラム

結論

  • ACQUITY UPLC H-Class PLUS と ACQUITY RI 検出器と組み合わせることで、CORTECS T3 カラムにより、シンプルなアイソクラティック法を使用したスクラロースの効率的な定量が可能になりました。
  • ACQUITY RI 検出器は低拡散で、これによって高度な温度の安定性、低いベースラインノイズ、幅広いリニアダイナミックレンジが維持されます。
  • CORTECS T3 カラムは、保持時間と背圧において優れた再現性を示しました。
  • この分析法は、優れた直線性、精度、および正確性を示しました。
  • この分析法は、飲料中のスクラロース分析の標準化を行う製造者の支援に役立つ可能性があります。

参考文献

  1. Jinchuan Yang, Paul D. Rainville.Analysis of Soft Drink Additives with No Interference from Aspartame Degradants Using Arc HPLC System with PDA Detection.Waters Application Note, 720007219, 2021.

720007622JA、2022 年 5 月

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