低 pH 条件での塩基性分析種の分析は通常、特にギ酸などの弱イオン強度の添加剤を使用する場合には、しばしば困難を伴います。荷電した表面物質を充塡したカラムでは、塩基性化合物に関連する望ましくない相互作用を最小限に抑えられることが実証されています。この研究では、このような固定相を充塡したカラムを従来の C18 パーティクルテクノロジーと比較して、性能の向上を説明します。Agilent 1290 LC システム、および塩基性、中性、弱酸性のプローブで構成されるレファレンス標準試料を使用して、この表面多孔性粒子 CORTECS C18+ カラムにより、塩基性分析種に対してより優れたピーク形状および分離度の向上が得られます。
医薬品化合物の酸塩基特性は、薬物の挙動に重要な役割を果たします。特に、生体マトリックス中のこれらの薬物のイオン化状態は、物理化学的特性および薬物動態に影響を及ぼす可能性があり、このことが薬物の透過性、バイオアベイラビリティ、身体からのクリアランスなどの、吸収、分布、代謝、排泄(ADME)の特性に影響を及ぼす可能性があります。2014 年に、600 種以上の薬物(そのうち 400 種が塩基性)が含まれる試験で、これらの塩基性化合物の約 60% が生理学的 pH でイオン化されることが示されました。荷電された塩基性化合物は、極性が増加し、そのために水への溶解度が増加するだけでなく、体内での吸収経路にも影響を及ぼす可能性もあります1。
液体クロマトグラフィーワークフローを使用した分析は、塩基性薬物ターゲットの純度を評価するために重要ですが、多くの場合、特に低 pH でイオン化による問題が発生します。低 pH で分析する場合、正電荷による極性増大が、逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)での保持を低下させます。さらに、イオン性分析種は、ベースパーティクルとの二次的相互作用により、逆相カラムで、中性化合物よりも低い質量ロードでオーバーロードの特徴(ピーク形状不良)を示すことがよく知られています2,3。
トリフルオロ酢酸などのより強い移動相添加剤の使用や、別の固定相への切り替えなど、これらの相互作用を最小限に抑えるための回避策があります。トリフルオロ酢酸やその他の移動相添加剤により、塩基性プローブのピーク形状が改善されることがありますが、MS 感度の低下などの別の問題をもたらす場合があります。固定相を変更することも、選択性の変化が問題になることがありますが、適切な固定相を選択して分析法を開発することで、これは軽減することができます。
ここに示されている研究は、表面多孔性粒子(SPP)および C18 リガンドを充塡した 2 種類のカラムで実施した品質管理標準(RP-QCRM)の分離です。最初に選択したカラムは CORTECS C18+ 2.7 µm で、2 番目のカラムは他社製の表面多孔性 C18 材質で、これにも 2.7 µm 粒子が採用されています。2 つの材質間でピーク形状およびピークキャパシティの差異を調べます。
7 種の化合物(ウラシル、ブチルパラベン、ナフタレン、プロプラノロール、フタル酸ジプロピル、アセナフテン、アミトリプチリン)の 2 mL 溶液(pH 7)が含まれている逆相品質管理標準試料(製品番号:186006363)は、追加のサンプル前処理を必要としない、すぐに使用できる状態で提供されます。
LC システム: |
Agilent 1290 Infinity I |
検出: |
254 nm での UV 検出 |
カラム: |
CORTECS C18+ カラム、90 Å、2.7 µm、2.1 mm × 50 mm(製品番号:186007395) 他社製表面多孔質 C18 カラム、100 Å、2.7 μm、2.1 × 50 mm |
カラム温度: |
30 ℃ |
サンプル温度: |
室温 |
注入量: |
1 μL |
流速: |
1.0 mL/分 |
移動相 A: |
0.1% ギ酸水溶液 |
移動相 B: |
0.1% ギ酸含有アセトニトリル |
グラジエント: |
表を参照 |
クロマトグラフィーソフトウェア: |
Empower 3 Feature Release 5 |
インフォマティクス: |
Empower 3 Feature Release 5 |
表面多孔性粒子(SPP)カラムの CORTECS ファミリーの中で、CORTECS C18+ 材質は、リガンド付加の前に、低存在量の塩基性官能基が含まれるように修飾されます。この修飾は、荷電表面ハイブリッド(CSH)テクノロジーを採用したカラムでも使用されています2。 低 pH では、これらの塩基性基は正電荷を持ち、ミックスモード分離用の弱陰イオン交換機能としても機能することが示されています4。
正荷電表面の利点を示すため、CORTECS C18+ カラムを使用して、システム性能を測定およびモニターするために設計された塩基性、中性、弱酸性の分析種が含まれている標準試料である逆相品質管理標準(RP-QCRM)を分析しました。この標準試料は、ルーチンに分析することで、使用しているシステムに関係なく、注入に不具合が発生した場合のトラブルシューティングに不可欠なデータが得られ、システムのダウンタイムを短縮するのに役立ちます。図 2 に、CORTECS C18+ カラムと、従来の C18 固定相で設計された他社製表面多孔性粒子カラムを使用した、RP-QCRM 分離のクロマトグラムの比較が示されています。
他社製表面多孔性粒子 C18 カラムは、中性および弱酸性のプローブのピーク幅について CORTECS C18+ カラムと同等の結果を示し、両者の選択性の差はわずかです。塩基性プローブであるプロプラノロールとアミトリプチリンはいずれも、他社製カラムではピーク形状が不良ですが、どちらの場合も CORTECS C18+ の方でピーク形状が良好です。表 1 に示されているように、CORTECS C18+ で分析すると、塩基性プローブのピーク幅が狭くなり、分離のピークキャパシティが 10% 増加します。中性および弱酸性のプローブでは、2 つのカラムのピーク幅は同等です。このことは、これら 2 つのカラムのピークキャパシティへの最大の影響は、塩基性プローブのピーク幅であることを示しています。
固定相の電荷がきわめて少量であるとピーク形状が改善されますが、図 2 に示すように、イオン性反発効果により保持がわずかに低下します。弱酸性のプローブであるブチルパラベンでは、低 pH では荷電されないため、この効果は見られません。この分離では、塩基性プローブの低保持力は問題になりません。異なる分析法では、この効果に関する追加の検討が必要な場合があります。保持のわずかな低下は、塩基性プローブのピーク形状に見られる利点と比較して、軽微な欠点です。この改善は、追加の分析法開発や別の移動相添加剤を使用せずに達成されました。
CORTECS C18+ カラムには、低レベルの表面電荷が含まれるように修飾された表面多孔性粒子が充塡されています。この修飾により、塩基性プローブと固定相の間の二次的相互作用が軽減されます。この相互作用は、特にシリカベースの固定相での低 pH で、ピーク形状の不良やサンプルロードの不良につながることが知られています。本研究では、修飾していない表面多孔性粒子 C18 カラムと比較して、CORTECS C18+ カラムを使用することによって得ることができるピーク形状の改善について説明します。逆相品質管理標準試料の場合、CORTECS C18+ カラムにより、塩基性分析種に対して見られるピーク形状の改善のみによって、試験した他のカラムよりも 10% 高いピークキャパシティが得られました。この改善は、分析法開発や移動相を変更する必要なしに、カラムを切り替えるだけで達成されました。
720007282JA、2021 年 6 月