• アプリケーションノート

ACQUITY UltraPerformance コンバージェンスクロマトグラフィー(UPC2)を用いた、パーム植物栄養素のグリーンで包括的な分析アプローチ

ACQUITY UltraPerformance コンバージェンスクロマトグラフィー(UPC2)を用いた、パーム植物栄養素のグリーンで包括的な分析アプローチ

  • Kam Weng Chong
  • Waters Corporation

要約

ビタミン E、植物性ステロール、スクアレンなどのパーム油に含まれる植物栄養素は、多様な生理学的および薬理学的効果を示します。これらの生理活性のある微量成分の分離は、分析化学の分野において常に重要なトピックとなっています。しかしながら、様々な液体クロマトグラフィー分析法を用いてパーム植物栄養素を分離することは、分析時間の長さ、複数の分析法の必要性、分析中に危険な溶媒を使用することなどから困難が伴います。本研究では、ビタミン E、植物性ステロール、およびスクアレンの分析の移動相として超臨界 CO2 を使用し、Waters ACQUITY UltraPerformance コンバージェンスクロマトグラフィー(UPC2)テクノロジーを用いて、グリーンでより効率的な代替分離法を開発しました。  

アプリケーションのメリット

フォトダイオードアレイ(PDA)検出器と組み合わせた Waters ACQUITY UltraPerformance コンバージェンスクロマトグラフィー(UPC2)システムを使用して、ビタミン E、植物性ステロール、およびスクアレンの分析用に、サンプル前処理を最小限に抑えた単一の直接分析法を開発しました

はじめに

パーム植物栄養素は、カロテノイド(500 ~ 700 ppm)、ビタミン E (600 ~ 1000 ppm)、植物性ステロール(326 ~ 527 ppm)、スクアレン(200 ~ 500 ppm)など、パーム油中の総組成の約 1% を占めています。これらの微量成分には優れた生物活性と栄養上の利点があることから、その組成を測定することが優先事項となってきています。これらの植物栄養素(ビタミン E、植物性ステロール、スクアレン)を、HPLC を使用して、順相(NP)または逆相(RP)クロマトグラフィーで分離するために、様々な HPLC 分析法が開発されています。ただし、従来の分析法では、分析にかかる時間が長く(1 回の分析に最大 45 60 分)、サンプル前処理やシステム間の切り替え(NP から RP、またはその逆)の必要性や、分離に MTBE などの有毒溶媒を使用する必要がありました1

超臨界 CO2 を用いたグリーンテクノロジーによる分離法であるコンバージェンスクロマトグラフィーは、既存の LC 分析法の欠点を克服するための代替アプローチとなります。Waters ACQUITY UPC2 システムを使用することで、順相 LC の特徴である直交機能と、逆相 LC の特徴である使いやすさと分析法開発の簡易性の恩恵が受けられます。Waters ACQUITY UPC2 システムでは、超臨界 CO2 を移動相の弱溶媒として使用します。これによって、溶出系列の様々な共溶媒と組み合わせることができ、その結果、移動相の選択性が向上し、超臨界 CO2 の溶媒和力が高まります。

結果および考察

パーム油の植物栄養素の主な分析対象として、ビタミン E、スクアレン、および植物性ステロールの構造を図 1 に示します。これらの非極性分析種に対して高い保持力を得るため、Waters HSS C18 SB カラム(1.8 μm、3.0 × 150 mm、製品番号 186006685)を分離用に選択しました。純粋なパーム植物栄養素として、スクアレン、β-シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、α-トコフェロール、α-トコモノエノール、α、β、γ、および δ-トコトリエノールを、ACQUITY UPC2 PDA 検出器と組み合わせた ACQUITY UPC2 システムを使用して分析しました。図 2 は、超臨界流体 CO2 およびアセトニトリル(有機修飾剤として)の移動相組成物を使用して、流速 1.0 mL/分で、190 nm ~ 400 nm の UV 検出を行い、様々な植物栄養素標準試料を分析した結果を示しています。これらの植物栄養素の測定は、従来の HPLC 分析法では 3 つの異なる分析法で行う必要があったのに対して、合計 10 種のパーム植物栄養素を 1 回の分析で測定することができました。更に、粗パーム油からのパームベースのバイオディーゼル製造工程の副生成物である、不鹸化性のパーム植物栄養素濃縮物の分析により、この分析法の性能を試験しました。これらのパーム植物栄養素濃縮物は、ビタミン E、スクアレンおよび植物性ステロールが豊富であり、潜在的な商業価値があるためにパーム油業界で大いに注目を集めてきました。図 3 に、パーム油中に存在する 10 種類の一般的な植物栄養素を 1 回の注入で分離および検出することができたパーム植物栄養素のクロマトグラムを示します。この分析では、時間のかかる複雑なサンプル前処理手順は必要ありませんでした。パーム植物栄養素濃縮サンプルを溶解、ろ過し、ACQUITY UPC2 システムに注入しました。Waters ACQUITY UPC2 テクノロジーを使用し、超臨界 CO2 を移動相として用いてパーム植物栄養素を分離することで、より効率的かつ低コストの、環境に優しいアプローチが実現します。

図 1. パーム油中の 10 種の一般的な植物栄養素
図 2. Viridis HSS C18 SB カラム(1.8 μm、3.0 × 150 mm)を用いて、20 分間の 1% ACN ~ 22% ACN のグラジエント分離で得られたパーム植物栄養素の分離のマックスプロットクロマトグラム 
図 3. UV 波長 198 nm および 296 nm で抽出されたパーム植物栄養素濃縮物の分離のクロマトグラム 

結論

Waters ACQUITY UPC2 システムと ACQUITY UPC2 PDA 検出器を組み合わせて使用することで、合計 10 種のパーム植物栄養素の分離および検出ができました。この分析法はシンプルで、必要なサンプル前処理が最小限で、植物栄養素を 1 回の分析で測定できるため、従来の HPLC 分析法と比較して、より効率的で環境に配慮した、コスト効率の高い分析法となります。

参考文献

  1. Rathi D. N., Liew C. Y., Mohd Fairulnizal M.N., Isameyah D., Barknowitz G. Fat-Soluble Vitamin and Carotenoid Analysis in Cooking Oils by UltraPerformance Convergence Chromatography.Food Anal.Methods 2017 10, 1087–1096.

720007215JA、2021 年 3 月

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