本アプリケーションブリーフでは、堆積物サンプルから抽出したポリ塩化ビフェニル(PCB 類)のルーチン分析に適した電子イオン化(EI) GC-MS/MS として、Xevo TQ-GC を評価しました。
Xevo TQ-GC は、堆積物サンプル中の PCB 類のルーチン分析に適した GC-MS/MS ソリューションです。
ポリ塩化ビフェニル(PCB 類)は合成化学物質の一種であり、1970 年代後半に禁止されましたが、依然として環境中に残留しています。PCB 類への曝露は、健康に対して様々な悪影響を引き起こすことがよく知られています。ビフェニル骨格の塩素の数および置換パターンによって 209 もの異なる同族体が存在します。毒性は同族体ごとに異なり、世界保健機関(WHO)が毒性についての追加情報をウェブサイトで公開しています。そのため、これらの化合物の環境モニタリングが依然として必要です。
この評価には、以前にカナダ環境・気候変動省ケベック環境試験所(QLET)の現場で前処理された様々な堆積物サンプル抽出物を使用しました。毒性、アロクロール混合物中の含有量、環境中の残留性に基づいて、41 種の PCB 類(Cl3~Cl10)のセットを選択しました。これらの PCB 類を、抽出した堆積物サンプルの分析に基づく、感度、正確度、堅牢性などのルーチン性能の診断基準について、Xevo TQ-GC で評価しました。
分析には 0.1~20 µg/kg のキャリブレーション範囲を使用し、Xevo TQ-GC は、すべての化合物について R² 値 ≥ 0.997 という優れた直線性を示しました。感度は、各 PCB の溶媒標準試料を使用し、5 回の繰り返し注入に基づいて、検出限界(LOD)値を決定することによって評価しました。表 1 は各同族体群の LOD の結果の全体を示しています。平均して、LOD は 0.100 µg/kg をはるかに下回っており、感度が 1 兆分の 1(ppt)レベルに達することを示しています。
PCB 類の定量は、レポート要件により複数の方法で実施することができます。個々の PCB 類についての定量値を、同族体群またはアロクロール混合物ごとに決定することができます。TargetLynx の総合機能により、後者 2 つの定量スキームとカスタムレポートのオプションが使用できます。図 1 は五塩化 PCB 類の MRM(Multiple Reaction Monitoring、多重反応モニタリング)チャンネルを示しており、上のトレースでは目的の五塩化 PCB 類のみの合計、下のトレースでは同族体群全体の合計を示しています。4 つの堆積物のサンプルを評価し、図 2 に各サンプルにおける全 PCB 同族体の合計を示しました。PCB の総濃度は、サンプル間で 16~2000 µg/kg の広範囲で分布していました。
最後に、堆積物サンプルのうち一つを 50 回繰り返し注入することで定量分析法の堅牢性を評価しました。サンプル中に検出された全 PCB 類の報告された算出濃度について、%RSD 値をモニターしました。図 3 は、50 回の繰り返し注入にわたる PCB 17(Cl3)と PCB 209(Cl10)の傾向プロットで、%RSD 値がそれぞれ 1.1 と 7.4 であることを示しています。検出された全 PCB 類の%RSD が 10%未満で、その大部分が 5%未満であることが示されました。このことから、Xevo TQ-GC での PCB 類の分析は堅牢性が高く、ルーチン使用に適していることが確認されました。
Xevo TQ-GC は、堆積物サンプル中の PCB 類のルーチンで正確、堅牢な分析および定量に適していることが示されました。各同族体群についての平均検出下限は 0.010~0.068 µg/kg の範囲でした。このことは、Xevo TQ-GC が堆積物サンプル中の微量レベルの PCB 類を検出でき、この装置が世界的な規制要件を満たし、上回っていることを示しています。分析ラボは、PCB 分析用のこのアプリケーションを、他の種類の環境マトリックスおよび食品マトリックスの分析、並びに適切なサンプル前処理についての検討を伴う分析に拡張することができます。
720006885JA、2020 年 7 月