• アプリケーションノート

EPA メソッド 533 に準拠した飲料水からのペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)の Oasis WAX 抽出

EPA メソッド 533 に準拠した飲料水からのペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)の Oasis WAX 抽出

  • Kari L. Organtini
  • Beatriz Renner
  • Mary E. Lame
  • Keil Brinster
  • Kenneth J. Rosnack
  • Waters Corporation
Drinking water pouring into glass on table

要約

このアプリケーションブリーフでは、EPA メソッド 533 に記載されている分析法と同等の固相抽出ケミストリーとして、PFAS 分析向け Waters Oasis WAX カートリッジを使用して、飲料水サンプルから PFAS を抽出する方法について説明します。

アプリケーションのメリット

EPA メソッド 533 に従って飲料水から PFAS を抽出する Oasis WAX カートリッジの説明。

はじめに

米国の多くの水質検査室では、現在、飲料水中のペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)の分析に EPA メソッド 537.1 の手法を使用しています。EPA は 2019 年、飲料水分析に関連する EPA メソッド 533 を発表しました。この新しいメソッドでは、飲料水中のターゲット化合物のリストを 25 種まで拡張し、短鎖化合物と新規 PFAS 化合物の両方を取り込んでいます。この拡張されたリストの PFAS を効率的かつ正確に回収するために、EPA 533 では、必要な固相抽出(SPE)ケミストリーおよび抽出プロトコルも更新されました。規定のカートリッジには、抽出中に正電荷を保つため、pKa >8 のミックスモードポリマー吸着剤が 500 mg 含まれています。

pKa が約 10 のミックスモードポリマー吸着剤を含む Oasis WAX カートリッジ(製品番号 186009568)は、EPA メソッド 533 で必須のケミストリーとまさに同等であり、メソッドで必要な分析要件のすべてに適合しています。

結果および考察

EPA メソッド 533 の要件に従って、飲料水を 25 種の PFAS について評価しました。サンプル抽出の前に、EPA メソッド 533 で要求されるサンプル回収および保存の手順を実施しました。固相抽出は、6 cc で 500 mg の Oasis WAX SPE カートリッジを使用して実施しました。メソッドで指定された 25 種の PFAS は、PFAS キット(製品番号 176004549)を取り付けた ACQUITY UPLC I-Class PLUS システム(フロースルーニードル搭載)と Xevo TQ-S micro タンデム四重極型質量分析計を組み合わせて分析しました。マルチプルリアクションモニタリングトランジション(MRM)を含む LC および MS の分析法条件は、以前の文書で確認できます(ウォーターズコーポレーションアプリケーションノート、720006471JA)。

EPA メソッド 533 の品質管理基準の 1 つとして、繰り返し抽出の正確さにおいて、平均回収率が 70~130% の範囲内に収まっていることの実証が求められています。図 1 は、PFAS 25 種すべて(2 ng/L および 12 ng/L)の平均回収率を示しています。Oasis WAX カートリッジを使用して、EPA メソッド 533 に従ってサンプル前処理および抽出を実施することで、回収率の要件を容易に満たすことができました。

Oasis WAX カートリッジおよび EPA メソッド 533 を使用したサンプル抽出後の飲料水中からの PFAS の回収
図 1. Oasis WAX カートリッジおよび EPA メソッド 533 を使用したサンプル抽出後の飲料水中からの PFAS の回収。すべての化合物が分析法の回収率ガイドラインの 70~130% の範囲内でした。

正確さに加えて、飲料水からの抽出の精度を実証する必要があります。精度は、サンプルの繰り返し抽出についての % 相対標準偏差(%RSD)を用いて測定します。EPA 533 では、すべての %RSD が 20% 未満であることが要求されています。図 2 は、2 ng/L および 12 ng/L でスパイクした飲料水の 4 回の繰り返し抽出からの各化合物の %RSD を示しています。12 ng/L の繰り返し抽出では、6:2 FTS 以外のすべての PFAS の %RSD 値は 20% の要件を十分に下回っていました。実際、ほとんどの RSD は 5% 以下で、非常に頑健な分析法であることが示されました。6:2 FTS の高い %RSD は、よく知られている、この化合物による一般的なラボ機器および備品の汚染が原因です。

4 回の繰り返しにおける PFAS の回収率の %RSD。
図 2.Oasis WAX カートリッジによる固相抽出後、飲料水に 2 ng/L および 12 ng/L で PFAS をスパイクした場合の 4 回の繰り返しにおける回収率の %RSD。

Oasis WAX カートリッジ を使用してこの分析法の定量性を評価した後、完全な EPA 533 の手法を飲料水サンプル(3 回の繰り返しで実施)について評価し、検出された PFAS のレベルを測定しました。この飲料水サンプル中に、この分析法で対象とした 25 種の PFAS のうち 9 種が平均濃度 0.48~5.28 ng/L で検出されました(図 3)。PFHpA、PFHxS、PFOS、および PFMBA はすべて濃度 1 ng/L 未満で検出されました。PFBA、PFPeA、PFHxA、PFOA、および PFBS は、1 ng/L を超える濃度が検出されました。飲料水サンプル中の 25 種の対象 PFAS の総濃度は 19.6 ng/L で、現行の EPA 勧告である 70 ng/L を下回っています。

飲料水中に検出された PFAS
図 3.飲料水中に検出された PFAS。システム:PFAS キットを取り付けた ACQUITY UPLC I-Class PLUS と Xevo TQ-S micro の組み合わせ。カラム:ACQUITY BEH C18 カラム(2.1 × 100 mm、1.7 µm)、35℃。移動相 A:2 mM 酢酸アンモニウム含有 95:5 水:メタノール。移動相 B: 2 mM 酢酸アンモニウム含有メタノール。流速:0~14 分は 0.3 mL/分、14~17 分は 0.4 mL/分、17~22 分は 0.3 mL/分。グラジエント:初期で 100% A、1 分で 80% A へグラジエント、5 分で 55% へグラジエント、7 分で 20% A へグラジエント、1 分で 5% A へグラジエント、3 分間保持し、1 分で 100% A に戻り、4 分間保持(総分析時間は 22 分)。

結論

Oasis WAX カートリッジは、化学組成と要求される性能の両方において、EPA 533 で要求されている固相と同等です。正確さは回収率によって実証され、必要範囲内であると判定されました。2 ng/L サンプルの回収率は 80~100% で、12 ng/L サンプルでは 90~103% でした。精度は繰り返し抽出の %RSD によって測定され、十分要件の範囲内であり、よく知られているラボ汚染物質(6:2 FTS)以外の RSD はすべて 10% 未満でした。飲料水分析に Oasis WAX カートリッジを使用することで、サンプル中に 9 種の PFAS が 0.5~5.3 ng/L の濃度で検出されました。全体として、ACQUITY UPLC I-Class PLUS システムおよび Xevo TQ-S micro MS において、サンプル前処理に Oasis WAX カートリッジを使用することで、EPA メソッド 533 に規定されている規制分析に適合および上回るシステムソリューションが提供されます。

720006808JA、2020 年 3 月

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