• アプリケーションノート

ウォーターズのノミナル質量スクリーニングソリューションで使用するための体系的毒性学スクリーニングライブラリーの拡張

ウォーターズのノミナル質量スクリーニングソリューションで使用するための体系的毒性学スクリーニングライブラリーの拡張

  • Robert Lee
  • Michelle Wood
  • Waters Corporation

法中毒学目的のみに使用してください。

要約

このアプリケーションブリーフでは、ウォーターズのノミナル質量フルスキャンスクリーニングソリューションを用いた体系的毒性学的分析(STA)に使用できる、毒性学的類縁物質を含む追加のライブラリーの作成について説明します。

アプリケーションのメリット

Xevo TQD 質量分析計または Xevo TQ-S micro 質量分析計で使用するための包括的なシステム毒性学分析ライブラリーが拡張され、ソリューション中の分析種の総数が 1200 になりました。 

はじめに

法中毒学ラボにおいては、生前や死後に採取した検体など非常に複雑な生体マトリックス中において、広範囲の薬毒物を検出できる信頼性の高いスクリーニング手法が要求されます。元のウォーターズの体系的毒性学スクリーニング分析法では、Waters Alliance 2695 セパレーションモジュールを ZQ シングル四重極質量分析計と組み合わせて使用していました1。2009 年に、このアプローチは ACQUITY TQD システムに移行され、同様の包括的な毒性学スクリーニング機能を半分の時間で実施できるようになりました²。

このソリューションの開発はその後数年間にわたってさらに行われ、15 分間で 950 を超える薬物およびその代謝物をスクリーニングできるフルスキャンスクリーニング分析法および関連する毒性学ライブラリーが開発されました。この分析法は、世界中の毒性学ラボで正常かつルーチンに使用されています3,4。 この分析法は好評であったため、2013 年にこのソリューションが ACQUITY UPLC I-Class/Xevo TQD システムに移管されました。2016 年、Xevo TQ-S micro のリリースにより、この人気の高いソリューションがさらに進化しました5,6

法中毒学ラボでは、毎週のように新規向精神薬(NPS)やデザイナードラッグが検出され、特性解析されている中で、絶えず変化する薬物を取り巻くトレンドに対応するという大きなプレッシャーにさらされています。このことは、毒性学ライブラリー中の分析種の数を増やして、ラボにおいてより多くの化合物を検出できるようにすることの重要性を浮き彫りにしています。

実験方法

試験物質

単一の分析種または分析種の混合物を、5 mM ギ酸アンモニウム(pH3)中に 2500 ng/mL になるように調製しました。

データ取り込み

データは、ACQUITY UPLC I-Class/Xevo TQD システムで、STA 分析法を使用してフルスキャンモードで取り込みました⁵。

ライブラリーの作成

取り込んだデータは ChromaLynx アプリケーションマネージャーを使用して解析し、内蔵の ChromaLynx ライブラリー作成ツールを使用して NIST 型式でライブラリーを作成しました。

結果および考察

244 種の分析種を含む新規のライブラリーを、ACQUITY UPLC I-Class/Xevo TQD システムで STA 分析法を使用して作成しました。このライブラリーを、ACQUITY UPLC I-Class/Xevo TQ-S micro システムで使用できるように変換しました。これにより、ウォーターズのノミナル質量フルスキャンスクリーニングソリューションに含まれる分析種の総数が 1200 になり、NPS やより新しい薬物アナログのカバー率が高まると同時に、スポーツドーピング分析への適用性も拡張します。

追加の 244 種の分析種を含むライブラリーが作成されました。各分析種について、ライブラリーには分析種名、分子式、保持時間とともに、ポジティブエレクトロスプレーイオン化モードで複数のコーン電圧を使用して得られたマススペクトルが含まれています。幻覚性のトリプタミン 5-MeO-DMT(C13H18N2O、保持時間 2.6 分)について得られたフラグメンテーションパターンを図 1 に示します。 

このライブラリーを、別のバージョンの取り込みメソッドを要する ACQUITY UPLC I-Class/Xevo TQ-S micro システムで使用できるように変換しました⁶。

図 1.  Xevo TQD で使用した 6 種類のコーン電圧にわたる幻覚性のトリプタミン 5-MeO-DMT のフラグメンテーションパターン

結論

ウォーターズのノミナル質量 STA スクリーニングソリューションで使用するために、244 種の分析種を含む新規ライブラリーを作成し、法中毒学ノミナル質量スクリーニングソリューションに含まれる分析種の総数を 1200 に増やしました。このライブラリーは、ACQUITY 質量分析計と Xevo TQD 質量分析計の両方で、ACQUITY UPLC I-Class と組み合わせて使用でき、変換したバージョンは、ACQUITY UPLC I-Class/Xevo TQ-S micro システムで使用できます。 

ライブラリーに分析種が追加されたことにより、デザイナードラッグのベンゾジアゼピン、幻覚性のトリプタミン、フェンタニルアナログなど、このスクリーニング分析法を使用して検出できるデザイナードラッグおよび NPS の数が増加しました。この新規のリリースにより、スポーツドーピングラボが特に関心を持つ β 遮断薬、利尿剤、ステロイド、受容体モジュレーター薬の数も増加しました。 

使いやすい ChromaLynx ライブラリー作成ツールにより、標準物質や真正サンプルからお客様独自のライブラリーを作成することができます。追加のライブラリーは、すぐに使用できる型式になっており、ChromaLynx で使用する既存のライブラリー検索メソッドに追加するだけで、このスクリーニング分析法を使用して検出できる分析種の数を増やすことができます。 

参考文献

  1. Humbert L, Lhermitte M, and Grisel F. General Unknown Screening for Drugs in Biological Samples by LC/MS.Waters Application Note.720001552EN.2007.
  2. Lee R, Roberts M, Paccou A, and Wood M. Development of a New UPLC/MS Method for Systematic Toxicological Analysis.Waters Application Note.720002905EN.2009.
  3. Humbert L, et al.Screening of Xenobiotics by Ultra-Performance Liquid Chromatography–Mass Spectrometry Using In-Source Fragmentation at Increasing Cone Voltages: Library Constitution and an Evaluation of Spectral Stability. Journal of Analytical Toxicology.34: 571–580.2010.
  4. Rosano T, Wood M, and Swift T. Postmortem Drug Screening by Non-Targeted and Targeted Ultra-Performance Liquid Chromatography-Mass Spectrometry Technology. Journal of Analytical Toxicology.35: 411–423.2011.
  5. Roberts M and Wood M. Forensic Toxicology Screening Using the ACQUITY UPLC I-Class System with the Xevo TQD.Waters Application Note.720004602EN.2013.
  6. Lee R and Wood M. Systematic Toxicological Screening Using the ACQUITY I- Class/Xevo TQ-S micro.Waters Application Note.720005661EN.2016.

720006502JA、2019 年 2 月

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