• アプリケーションノート

超低拡散およびキャリーオーバー性能のサンプル送液機構の強化

超低拡散およびキャリーオーバー性能のサンプル送液機構の強化

  • Patricia R. McConville
  • Waters Corporation

要約

多様な LC 分離に適したシンプル且つ柔軟なサンプル送液システムの構造について紹介します。幅広い注入範囲において、最適な精度、真度、そしてキャリーオーバー性能をあらゆるアプリケーションで実現します。

利点

ニードルインフローパス設計を搭載した ACQUITY UPLC PLUS シリーズサンプルマネージャー(FTN-H および FTN-I)は、優れたサンプル回収率と高精度の注入が可能です。このサンプル送液システムは、様々なLC において幅広い範囲で柔軟性高くサンプルを注入することができます。

はじめに

オートサンプラー設計では、一般的な注入方法である固定ループとニードルインフローパス 2 種が採用されています。性能、スループット、および利便性において、それぞれの方法には利点および欠点があります。クロマトグラフィーの目的により最適なインジェクター設計を選択することができます。固定ループ方法は、カラム外バンド拡散を最小限まで抑えることが可能で、高分離能が必要なアプリケーションに適しています。また、分析中にニードルがオフラインになるため、分析中に洗浄や次の注入の準備を実施することで、サイクル時間を短縮することが可能です。しかし固定ループ方法では、最適な性能を得るために、オートサンプラーの注入モードを慎重に選択することが必要となります。  

図 1.ロード位置および注入位置における ACQUITY UPLC PLUS シリーズ FTN サンプルマネージャーの流路図

一方、ニードルインフローパス方法のオートサンプラーは、優れた柔軟性と高い利便性の特徴を持ちます。通常ニードルインフローパス方法は、設定や構成を変更することなく広範囲な注入量を設定することができます。一番の利点は、性能を最適化するための分析法開発がほとんど必要ないということです。 

結果および考察

フロースルーニードルサンプルマネージャー (SM-FTN) を搭載した ACQUITY UPLC PLUS シリーズは、信頼性の高い UPLC 性能を実現 するために 2 つの装置設計の課題に取り組んでいます。1 つは高圧下におけるニードルシール の堅牢性、もう 1 つは、クロマトグラフィー 性能を維持するために、LC の分離性能に対する ネガティブな影響を最小化することです。これら の課題を、革新的な機能設計により対処しました。注入機構(図 1)に機構の詳細を示しています。注入工程が開始されると、注入バルブが切り替わり、流路からニードルが切り離され、バイアルからサンプルを吸引します。注入機構は RΘZ 構造(XYZ 構造に対して)であり、ニードルは対角線方向にのみ動きサンプルトレイが回転してバイアルがニードル下に移動します。ニードルがバイアル内へ下がり、設定量を正確に吸引後、注入ポートへ戻ります。ニードルが下がり、ポートの内部シール面に押し込まれます。シール力計測用の圧力トランスデューサーがシール力を計測し、15,000 psiの圧力に耐えるよう適度な圧力を加えることで液漏れを防ぎ、シール表面の寿命を最大限に保証します。最後に、注入バルブが切り替わり、サンプルを注入ポートに押し下げ、サンプルは注入バルブを通り、カラムに押し出されます。注入ポートと注入バルブを可能な限り近接して配置することで、サンプルがカラムに到達するまでの拡散を最小限に抑えます。サンプル注入後、ニードルを設定した時間で洗浄し、サンプルのキャリーオーバーを最小限に抑えます。フロースルーニードル設計により、HPLC および UPLC 両モードに必要な幅広い注入範囲で分析することが可能となりました。この柔軟性の高い設計によるシステムの標準的なバンド拡散は、低拡散な UPLC 分離に適した 8 ~ 9μL です(図 2)。  

図 2.ACQUITY UPLC PLUS シリーズの非常に優れた精度、正確性、および直線性は、HPLC、UHPLC、および UPLC によるあらゆる分離をサポートします。 

結論

ACQUITY UPLC PLUS シリーズは、研究、開発およびルーチン分析アプリケーションに必要な分離性能と柔軟性を最大限に活用できるよう設計されています。シンプルで柔軟性の高く設計された FTN-H/FTN-I オートサンプラーは、低拡散な UPLC 分離に要求される性能を担保し、ラボのワークフローに適したサンプルマネージャーです。

720003443JA、2018 年 4 月

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