• アプリケーションノート

テトラヒドロカンナビノールの混合薬物パネルへの組み込み - 3 種類の市販の口腔液採取デバイスへの適用

テトラヒドロカンナビノールの混合薬物パネルへの組み込み - 3 種類の市販の口腔液採取デバイスへの適用

  • Robert Lee
  • Michelle Wood
  • Waters Corporation
Tetrahydrocannabinol THC drugs

法中毒学目的のみに使用してください。

要約

このアプリケーションブリーフでは、さまざまな口腔液採取デバイスに適用できる、テトラヒドロカンナビノール(THC)を含む混合薬物パネルの分析用の、Waters Oasis MCX 96 ウェル µElution プレートを使用した単一サンプル前処理メソッドの開発について説明します。

アプリケーションのメリット

単一のサンプル前処理メソッドを用いて、口腔液混合分析種パネルに THC を含める

はじめに

口腔液中の低濃度の薬物を分析するという要件が、世界中の多くの法医学ラボにおける重要な要件になっています。多くのさまざまな採取デバイスが市販されており、監督下で、口腔液サンプルを非侵襲かつシンプルに採取できる方法を提供しています。これらのデバイスにより、ラボではニート口腔液、またはさまざまな保存バッファーで希釈された口腔液が得られます。採取デバイスが標準化されていないことから、一般に入手できるすべてのデバイスで使用できる、すべての分析種に適したサンプル前処理戦略の必要性が浮き彫りになっています。このようなスキームで最も一般的に検出される薬物は THC ですが、オピエート、オピオイド、アンフェタミン、ベンゾジアゼピンなど、その他の多くの種類の薬物も測定する必要があります。また、サンプル量が限られているため、サンプル前処理は単一のメソッドを使用して行う必要があります。Oasis MCX µElution により、限られた量のこの複雑なマトリックスから、欧州職場薬物検査協会(EWDTS)が適用しているガイドラインなどの、現行のガイドラインに十分に適合する効率で、これらの分析種をすべて抽出することができます1

結果および考察

この試験でテストした口腔液採取デバイスは、Sarstedt の Salivette 唾液採取デバイス、Immunalysis の Quantisal 口腔液採取デバイス、Greiner Bio-One の唾液採取システムです。コントロールの口腔液サンプルは、メーカーの使用説明書に従って採取し、口腔液中に一般に存在する 27 種の違法物質または処方物質の混合物をスパイクしたものです。 

以前に報告されているメソッドに基づき、簡単な Oasis MCX 96 ウェル µElution プレート(製品番号 186001830BA)プロトコルを使用して、分析種をマトリックスから抽出しました2,3。 各採取デバイスのプレートにロードしたサンプル量は、ニート口腔液と同じ量(75 µL 未満)です。データは、デュアルトランジション MRM メソッド(各分析種の定量イオンおよび定性イオン)を使用して収集し、TargetLynx アプリケーションマネージャーを用いて解析しました。

THC の化学的性質はパネル中の他の分析種と大きく異なるため、図 1 に示すように、THC には、口腔液分析に関する EWDTS ガイドラインで推奨されている確認試験のカットオフ 2 ng/mL を満たすことができるように、異なるクロマトグラフィーグラジエントが必要です。  

3 種類の採取デバイスで採取した口腔液にスパイクした THC の定量 MRM トランジションを示すクロマトグラム
図 1.  3 種類の採取デバイスで採取した口腔液にスパイクした THC の定量 MRM トランジションを示すクロマトグラム。サンプルは、ニート口腔液中での 1 ng/mL に相当する濃度で調製しました。

Oasis MCX µElution プレートからの溶出液を、96 ウェルサンプルコレクションプレート(700 µL 丸型ウェル、製品番号 186005837)中、等量の 2 アリコートに分けました。窒素下で蒸発乾固させた後、これらの別々のアリコートを 2 種類の代替溶媒の 1 つに再溶解しました。一方のアリコートは 50% アセトニトリル中に再溶解し、THC 特異的に分析しました。他方のアリコートは、0.1% のブランクヒト血漿を含む 5% アセトニトリルに再溶解し、他の化合物すべての測定に使用しました。図 2 には、THC を除くすべての分析種のクロマトグラフィー分離を、強度が最も高い分析種に合わせてスケーリングして示しています。  

カラム切り替えが必要ないように、2 種類の分析法を同じ ACQUITY UPLC BEH C18 カラム(製品番号 186002352)で同じ移動相を用いて実行することで、分析法を連続して実行できるようになりました。 

口腔液中の分析種の濃度は他の生体マトリックスと比較して低い可能性があるため、ACQUITY UPLC I-Class システム(FTN)と組み合わせた高感度の Xevo TQ-S micro 質量分析計は、このアプリケーションに最適です。

すべての分析種(THC を除く)の定量 MRM トランジションを示すクロマトグラム
図 2.  Immunalysis Quantisal 採取デバイスで採取した口腔液にスパイクしたすべての分析種(THC を除く)の定量 MRM トランジションを示すクロマトグラム。サンプルは、ニート口腔液中での 2 ng/mL に相当する濃度で調製しました。6-MAM(ピーク #6)、ノルブプレノルフィン(ピーク #13)、ブプレノルフィン(ピーク #15)を、EWDTS カットオフ濃度(2 ng/mL 以下)の化合物として強調表示しています。 

結論

化学的性質が非常に異なる複数の化学物質クラスが薬物パネルに存在することと、口腔液採取デバイスを用いて得られるサンプル量が、多くの場合限られていることが原因で、アプリケーションが非常に困難になります。単一の Oasis MCX µElution サンプル前処理メソッドと 2 種類の UPLC-MS/MS 分析法を使用することで、EWDTS が適用しているガイドラインなど、現行のガイドラインに十分に適合する濃度の THC を含む混合薬物パネルの分析が 15 分以内に行えます。このサンプル前処理メソッドは簡単に自動化でき、サンプルスループットを向上させることができます。

参考文献

  1. European Workplace Drug Testing Society Guidelines. http://www.ewdts.org (accessed 29 June 2017).
  2. Danaceau et al.Direct Analysis of Opioids and Metabolites in Oral Fluid by Mixed-Mode µElution SPE Combined with UPLC-MS/MS for Forensic Toxicology.2013. Waters Application Note.720004838EN.
  3. Lee et al.Using UPLC-MS/MS for the Quantitation of Illicit or Prescription Drugs in Preserved Oral Fluid.2016. Waters Application Note.720005584EN.

720006081JA、2017 年 8 月

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