研究目的のみに使用してください。診断用には使用できません。
今回、5-フルオロウラシル-13C15N2 内部標準試料を用いる血漿の液-液抽出を使用した臨床研究法について説明します。
5-フルオロウラシルは、デオキシリボ核酸(DNA)の合成を阻害することにより作用する抗がん剤です。また、程度はより低いですが、リボ核酸(RNA)の合成も阻害します。その代謝は個人差が大きいため1、分析的感度が高い選択的な測定手順が、その薬物動態および薬力学の臨床研究に役立つ可能性があります。
今回、5-フルオロウラシル-13C15N2 内部標準試料を用いる血漿の液-液抽出を使用した臨床研究法について説明します。ACQUITY UPLC I-Class システムで Waters ACQUITY UPLC HSS PFP カラム(2.1 × 100 mm、1.8 µm)を使用し、続いて Xevo TQD 質量分析計で検出を行うことで、3 分以内でクロマトグラフィーを行えました(図 1)。
サンプル前処理:5-フルオロウラシルの認定レファレンス標準試料およびその安定同位体標識内部標準試料(13C15N2)は Toronto Research Chemicals(カナダ、オンタリオ州トロント)から購入しました。キャリブレーション試薬は、Golden West Biologicals(米国、カリフォルニア州テメキュラ)から購入したプールされた血漿の代用マトリックス中に調製しました。5-フルオロウラシルのキャリブレーション範囲は 20 ~ 2000 ng/mL でした。QC 物質は、この同じプールされた血漿を使用して 40、350、750、1500 ng/mL の濃度で個別に調製しました。
サンプル抽出:サンプル 50 µL に、10 µg/mL の内部標準試料(ISTD)を含むメタノール 5 µL を添加し、30 秒間ボルテックス混合しました。次に、容積比で 0.1% のギ酸を含む酢酸エチル 500 µL を添加し、30 秒間ボルテックス混合した後、16,100 g で 2 分間遠心分離しました。400 µL アリコートの上清を、窒素で 40 ℃ で蒸発乾固させました。サンプルを 75 µL の 0.1% ギ酸水溶液に再溶解してから UPLC-MS/MS システムで分析しました。
システム: |
ACQUITY UPLC I-Class (FTN) |
ニードル: |
30 µL |
カラム: |
ACQUITY UPLC HSS PFP カラム |
移動相 A: |
水 |
移動相 B: |
アセトニトリル |
ニードル洗浄溶媒: |
80% メタノール水溶液 + 0.1% ギ酸 |
パージ溶媒: |
移動相 A |
シール洗浄溶媒: |
20% メタノール水溶液 |
カラム温度: |
35 ℃ |
注入量: |
20 µL |
流速: |
0.40 mL/分 |
分析時間: |
3.0 分(注入間 3.5 分) |
システム: |
Xevo TQD |
分解能: |
MS1(0.7 FWHM)、MS2(0.7 FWHM) |
取り込みモード: |
マルチプルリアクションモニタリング(MRM)(詳細については、表 2 を参照してください) |
極性: |
ESI ネガティブイオン化 |
キャピラリー電圧: |
3.0 kV |
イオン源温度: |
140°C |
脱溶媒温度: |
450 ℃ |
デュエルタイム: |
0.05 秒(5-フルオロウラシル)、0.015 秒(ISTD) |
スキャン間遅延: |
0.02 秒 |
チャンネル間遅延: |
0.01 秒 |
MassLynx v4.1 ソフトウェアおよび TargetLynx アプリケーションマネージャー
このようなクロマトグラフィー条件下において、5-フルオロウラシルは、血漿から抽出された(約 1.1 分の)同重体干渉物質から分離されます。5-フルオロウラシルの保持時間は約 1.18 分です。
5-フルオロウラシルのレベルが最大 10,000 ng/mL の血漿サンプルを分析した後でも、システムキャリーオーバーは見られませんでした。
分析的感度の調査から、5-フルオロウラシルの定量(RSD <20% 、バイアス <15%)が 7.5 ng/mL で行えることが示されています。
精度実験を行い、4 濃度の QC 物質を 5 日間にわたって 5 回繰り返しで抽出および定量しました(n = 25)。各レベルの QC 試料を 5 回繰り返し分析することによって併行精度を評価しました。表 3 にこれらの実験の結果を示しています。評価した 5-フルオロウラシルの 4 濃度での合計精度と再現性は ≤9.0% RSD でした。
5-フルオロウラシルの高濃度および低濃度のプールを異なる比率で組み合わせて分析することで、この分析法は 14 ~ 2600 ng/mL の範囲で直線性を示すことがわかりました。
低濃度(40 ng/mL)および高濃度(1500 ng/mL)の血漿中 5-フルオロウラシルについて、マトリックス効果を評価しました(n = 6)。マトリックス係数の範囲は、低濃度で 0.62 ~ 0.69(平均 0.66)、高濃度で 0.46 ~ 0.75(平均 0.65)でした。同位体標識 5-フルオロウラシル内部標準試料を使用して実測マトリックス効果を補正したところ、マトリックス係数は、低濃度および高濃度でそれぞれ 0.94 ~ 0.98(平均 0.96)および 0.96 ~ 1.05(平均 1.02)の範囲になりました。
内因性化合物(アルブミン、ビリルビン、コレステロール、トリグリセリド、尿酸)および高濃度で添加した外因性の脂肪乳剤(20% 乳化)からの干渉を、低濃度および高濃度のプールした血漿サンプル(40 ng/mL および 1500 ng/mL)からの 5-フルオロウラシルの回収率(n=3)を決定することによって評価しました。回収率は 90.5 ~ 110.6% の範囲でした。アセトアミノフェン、フルコナゾール、5,6-ジヒドロ-5-フルオロウラシル、ケトコナゾール、イトラコナゾール、メトトレキサート、フェニトイン、ポサコナゾール、ウラシル、ボリコナゾールが存在する場合の影響を評価したところ、回収率は 91.8 ~ 108.0% の範囲でした。回収率の範囲が 85% ~ 115% を超える場合、干渉物質があると見なしました。
血清中の外部品質保証サンプル(n = 6、範囲 100 ~ 2000 ng/mL)は Asqualab(フランス、パリ)から入手しました。結果はスキームに記載されている許容範囲内であり、平均差は 2.6% でした。
720006049JA、2017 年 7 月