このアプリケーションブリーフでは、ACQUITY APC システムを使用することで、SEC よりも迅速に石油サンプルのマッピングを行い、構造と特性の関係を確立して原油精製を最適化する方法について説明します。
APC により、石油製品中の望ましくない金属凝集体のサイズプロファイルを 10 分以内で測定できます。
分子サイズ、芳香族性の程度、極性などのさまざまな物理化学的特性によって複雑な石油サンプルを分画するために、複数のクロマトグラフィー手法が開発されています。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)またはサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)では、サイズ(より正確には流体力学的容積)に基づいて分子が分離されます。SEC は原油産業で広く使用されており、重質原油がもたらす新たな分析上の課題の出現に伴い、その使用は増加し続けています。この手法により、スペシエーション研究において金属-リガンド結合が保持され、凝集状態の研究も一部可能になります。また、マッピングおよびプロセス改善試験を行ったり、金属の特異的検出により凝集体の情報を取得するために、SEC を誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)と組み合わせています。この手法における大きな障壁として、分析時間の長さ(従来の SEC 分析では 1 サンプルに 1 ~ 2 時間かかる場合があります)、および溶媒消費量(使用する溶媒のコスト、廃棄コスト、関連して発生する環境問題)が挙げられます。
Waters ACQUITY Advanced Polymer Chromatography(APC)システムにより、サイズ別クロマトグラフィー分離の頂点を極める SEC テクノロジーにブレークスルーがもたらされます。これにより、製品に関する情報をより多く、従来よりも短時間で得ることができます。APC システムでは、高分子に対して優れたピーク分離度(特に低分子量分子種に関して)が達成されます。従来の SEC 分析法と比較して最大 5 ~ 20 倍の速さで、正確かつ再現性の高い分子量情報が得られるとともに、溶媒消費量と廃液量の削減により、分析コストの削減が実現され、単一システムで多様な高分子アプリケーションを実行できます。
沸点 560 ℃ 超の重油留分である 4 種類の減圧残油(VR)(南米由来のVR A.、アフリカ由来のVR B.、ロシア由来の VR C.、北ヨーロッパ由来の VR D.)を試験しました。分離は、125 Å と 450 Å(4.6 × 150 mm、2.5 µm)の 2 本の ACQUITY APC XT カラムで行いました。160 倍に希釈した 10 µL のサンプル溶液を注入しました。ACQUITY APC システムにより、拡張溶媒置き換え手順なしで、サンプル前処理および溶出に用いるさまざまな溶媒を使用して試験することができました。得られた APC RI プロファイルを図 1 に示します。
さまさまな由来のサンプルが、わずか 6 分で区別できました。特に、早く溶出する高分子量の化合物に対応する最も重い VR A. の場合に顕著でした。さらに、各溶媒で見られたプロファイルの違いは、凝集状態の違いに起因する可能性があります。
ラボで作られたシングルパススプレーチャンバーを取り付けた総消費量を改変したマイクロネブライザーを装備した ICP-HR-MS 装置(ELEMENT XR、Thermo Scientific)を ACQUITY APC に接続しました。得られた APC-ICP-HR-MS プロファイルを図 2 に示します。
V 含有化合物および Ni 含有化合物は二峰性の分布を示し、分子量が異なる別の種類の化合物が存在することが示されました。従来の SEC カラムでは多峰性のプロファイルが観察されましたが、ACQUITY APC と比較して分析時間が 6 倍超長くなりました。
720005625JA、2016 年 5 月