法中毒学目的のみに使用してください。
このアプリケーションノートでは、カンナビノイドの一貫した包括的な測定における、陰イオン化を使用する UNIFI を用いた拡張法中毒学スクリーニングアプリケーションソリューションの感度および選択性を実証します。このソリューションは、一部のカンナビノイドのスクリーニングとして適用できるだけでなく、現行の EWDTS 尿スクリーニングカットオフ(大麻の代謝物については 50 ng/mL)を下回るレベルのこれらの分析種を、単純な 5 倍希釈を使用して定量するのに適した分析法にもなります。このシステムの優れたリニアダイナミックレンジは、自動生成されたシンプルなキャリブレーションプロットによって実証されています。
尿中の陰イオン性のカンナビノイドの検出および定量が可能になる、UNIFI を用いた拡張法中毒学アプリケーションソリューション。
大麻は世界中で最も広く使用されている違法薬物であり、長期間使用すると薬物依存につながる可能性があります。カンナビノイドは、最も一般的に検出されるクラスの違法薬物の 1 つです。したがって、これらの薬物の分析は、法医学的検査と職場検査の両方において非常に重要です。Δ-9 テトラヒドロカンナビノール(THC)およびカンナビノール(CBN)は、大麻草(Cannabis sativa)に存在する向精神性成分です1。THC からは、11-ノル-9-ヒドロキシ-Δ9 テトラヒドロカンナビノール(THC-OH)などの多数の代謝物が生じますが、尿中薬物試験で最も重要な代謝物は 11-ノル-9-カルボキシ-Δ9 テトラヒドロカンナビノール(cTHC)で、遊離酸またはエステル結合 β-グルクロニドとして、尿中に排出される主要代謝物です2。カンナビジオール(CBD)は大麻樹脂の主要成分ですが、限定的な向精神特性を有すると考えられています。
UNIFI を用いたウォーターズの法中毒学アプリケーションソリューションは現在、エレクトロスプレーポジティブイオン化モード(ESI+)で動作する直交加速飛行時間型質量分析計での精密質量 MSE データの取り込み、およびそれに続く、1000 を超える毒性学類縁物質を含む網羅的ライブラリーとのデータの比較で構成されています3,4,5。カンナビノイドなどの多数の化合物は、ネガティブエレクトロスプレーモード(ESI-)でもイオン化するため、最近の研究では、法中毒学アプリケーションソリューションをさらに拡張してこれらの化合物を含めることが目的になっていました。この新規分析法を使用して、尿中のカンナビノイドの存在を、特に現在のスクリーニングカットオフ6 を下回る濃度で判定し、この分析法を使用して得られた値を、最近発表された完全にバリデーション済みの UPLC-MS/MS アッセイと比較しました7。
UPLC システム: |
ACQUITY UPLC I-Class (FTN) |
カラム: |
ACQUITY UPLC HSS、100Å、1.8 µm、C18、2.1 × 150 mm(製品番号 186003534) |
バイアル: |
マキシマムリカバリーバイアル(製品番号 186000327C) |
カラム温度: |
50 ℃ |
サンプル温度: |
10 ℃ |
注入量: |
10 µL |
流速: |
0.4 mL/分 |
移動相 A: |
0.001% ギ酸水溶液 |
移動相 B: |
0.001% ギ酸アセトニトリル溶液 |
グラジエント: |
87% A で 0.5 分間アイソクラティック送液した後、4.5 分間で 5% A まで下げ、1 分間ホールドしてから 87% A に切り替える |
分析時間: |
7.5 分 |
MS システム: |
Xevo G2-S QTof |
イオン化モード: |
ESI イオン源 |
温度: |
150 ℃ |
脱溶媒温度: |
400 ℃ |
脱溶媒ガス: |
800 L/時間 |
レファレンス質量: |
ロイシンエンケファリン [M-H] - m/z = 554.2620、取り込み範囲 m/z 50 ~ 1000 |
スキャン時間: |
0.1 秒 |
キャピラリー電圧: |
1.5 KV |
コーン電圧: |
20 V |
コリジョンエネルギー: |
ファンクション 1:6 eV |
|
ファンクション 2:10 ~ 40 eV のランプ |
レファレンス標準試料 THC、CBD、CBN、THC-OH、cTHC(1 mg/mL)は LGC Standards(英国、テディントン)から購入し、cTHC-グルクロニドおよび cTHC の重水素化(d-3)アナログ(内部標準(ISTD)として使用)も同じ供給者から 0.1 mg/mL の濃度で入手しました。
使用する前に、個々の標準試料をアセトニトリルで 5000 ng/mL に、内部標準を 0.001% ギ酸で 100 ng/mL に希釈しました。
Bio-Rad 健常コントロール尿および Bio-Rad Liquichek 尿中毒学コントロールのレベル C2 およびレベル S10 のレファレンス尿は、Bio-Rad Laboratories(英国、ヘメル・ヘムステッド)から入手しました。
その他のすべての化学物質は最高グレードの化学物質を使用し、供給者の指示に従って保管しました。
標準試料(0.1 mL)をマキシマムリカバリーバイアル中の 0.9 mL の 0.001% ギ酸に添加し、ボルテックス混合して濃度を 500 ng/mL にしました。
0.2 mL の尿および ISTD(0.7 mL)にアセトニトリル(0.1 mL)を添加しました。サンプルを 1200 rpm で 5 分間ボルテックス混合し、次に 8000 g で 10 分間遠心分離しました。上清をマキシマムリカバリーバイアルに移しました。
この分析で調査したカンナビノイドを、正確なニュートラル質量、高エネルギーフラグメントイオン、UPLC での保持時間とともに、表 1 にリストします。
各分析種の陽性同定の合否基準は、3 次元(3D)低エネルギーイオンカウント強度が 250 超、保持時間がレファレンスの 0.35 分以内、実測プリカーサー質量が予想値の 5 ppm 以内としました。追加の確認のために、高エネルギーファンクションで少なくとも 1 つの診断フラグメントイオンが見つかる必要がありました。100 ng/mL のカンナビノイド標準試料のクロマトグラフィー分離(cTHC-グルクロニドの場合は 50 ng/mL、カンナビノールの場合は 500 ng/mL)を図 1 に示します。
直線性について調べるために、Bio-Rad コントロール尿に cTHC と cTHC-グルクロニドを 0 ~ 500 ng/mL(cTHC-グルクロニドについては 0 ~ 250 ng/mL)の範囲になるようにスパイクし、上記のように 2 回繰り返しで調製しました。陽性同定された各微量分析種の 3D ピークレスポンスは、解析中に自動的に生成されたもので、ISTD のレスポンスを参照しています。検量線は 1/x 重み付けを使用してプロットし、直線近似を両方の分析種に適用しました。いずれの分析種も相関係数(r2 値)が 0.995 以上でした。cTHC の検量線を図 2 に示します。上記の基準を使用して陽性同定された最低濃度のキャリブレーション試薬は、cTHC-グルクロニドの場合 6.25 ng/mL、cTHC の場合 12.5 ng/mL でした。
真正尿サンプルの分析
ここに記載したサンプル前処理メソッドに従って、26 種の真正尿サンプルと 2 種の市販のレファレンス尿(Bio-Rad Liquichek レベル C2 および S10)を分析しました。真正サンプルは、完全にバリデーション済みの UPLC-MS/MS アッセイを使用して以前に定量された匿名化したサンプルで構成されていました7。26 種の真正サンプルの UPLC-MS/MS の結果を、UPLC-QTof-MSE アッセイの結果とともに表 2 に示しています。cTHC または cTHC-グルクロニドが前述の基準に基づいて陽性同定されたかどうかがわかります。
UPLC-QTof-MSE 分析法では、11 サンプルで cTHC が、16 サンプルで cTHC グルクロニドが陽性同定され、全体として UPLC-MS/MS データとよく一致していることが示されました(表 3)。これにより、この分析法では、単純な 5 倍希釈によって、cTHC の現在の欧州職場薬物試験協会(EWDTS)のスクリーニングカットオフ 50 ng/mL を下回る濃度で、尿中の cTHC および cTHC-グルクロニドを一貫して検出できることが示されました6。
さらに、この分析法により、両方の市販のレファレンス尿中の cTHC が検出され、正しく割り当てられました。この分析法を Bio-Rad Liquichek レベル C2 および S10 レファレンス尿の分析に使用して得られたセミ定量的結果は、メーカーが記載しているレファレンス値と一致していました(表 4)。Bio-Rad Liquichek レベル S10 レファレンス尿中の cTHC の 4 種の高エネルギーフラグメントの存在による追加の確認を図 3 に示します。
このアプリケーションノートでは、カンナビノイドの一貫した包括的な測定を行う上における、陰イオン化を使用する UNIFI を用いた拡張法中毒学スクリーニングアプリケーションソリューションの感度および選択性を実証します。このソリューションは、一部のカンナビノイドのスクリーニングとして適用できるだけでなく、現行の EWDTS 尿スクリーニングカットオフ(大麻の代謝物については 50 ng/mL)を下回るレベルのこれらの分析種を、単純な 5 倍希釈を使用して定量するのに適した分析法にもなります。このシステムの優れたリニアダイナミックレンジは、自動生成されたシンプルなキャリブレーションプロットによって実証されています。
CEDAM Italia(イタリア、ブレッソ)および Bianalisi Analisi Mediche(イタリア、カラーテ・ブリアンツァ)に匿名化した真正尿サンプルを供給して頂きました。
720005413JA、2015 年 5 月