このアプリケーションノートでは、ワークフロープロセスの簡潔化および効率化のため ProteinWorks eXpress Direct 消化キットを使用し、検討したモノクローナル抗体医薬品全てに、同一のユニバーサルなプロトコールと試薬を用いました。
ProteinWorks eXpress Direct 消化キットを使用して、代表的な検量線のセットとラット血漿の QC サンプルから、インフリキシマブ、アダリムマブ、ベバシズマブ、トラスツズマブを精製し、同時に定量化することができました。標準化されたキットベースのアプローチを実行することにより、経験の浅いユーザーでも、創薬研究において有意義なデータを即座に入手し、一刻を争う重要なプロジェクト上の判断を下すことができます。
過去 5 ~ 10 年間、製薬開発においてバイオ医薬品の割合が大幅に上昇しました1。 また一方、重要なモノクローナル抗体および他のタンパク質医薬品の多くは、2012 ~ 2020 年の間に特許が満了となります2。 このため、バイオアナリシスラボ、新薬開発企業や CRO、およびバイオマーカー研究ラボにおいてタンパク質定量に注目が集まっています。イムノアッセイ(IA)メソッドは感度が高く簡単に実行できますが、低い試薬の再現性、標準化の欠如、交差反応、限定的なダイナミックレンジ、その他の課題により、LC-MS への転換が進んでいます。しかしながら、これらの LC-MS ワークフローには多数のサブセグメントが含まれ、それぞれに多くのステップがあります。ほとんどのワークフローに共通するものとしては、アフィニティー精製、変性、還元、アルキル化、消化および SPE クリーンアップなどがあります(それぞれに最適化が必要)。このような従来のタンパク質定量プロトコールは、通常、完了するまでに 1 日半程度かかります。また、各ステップにおいて誤差やエラーが発生する可能性も無視できません。日中にサンプルの前処理を完了して分析を開始できるような、より簡単で標準化されたワークフローが強く求められています。同時に、理想的には、汎用性のあるキットベースのメソッドを使用した場合でも、探索研究において重要な判断を下すために、十分な真度と精度で低濃度の標的タンパク質を定量できる高いアッセイ感度を保証する必要があります。図 1 で示されているように一般的なワークフローは複雑であるため、エラーが発生したり、再現性や感度が不十分であることがよくあります。このアプリケーションノートでは、ワークフロープロセスの簡潔化および効率化のため ProteinWorks eXpress Direct 消化キットを使用し、検討したモノクローナル抗体医薬品全てに、同一のユニバーサルなプロトコールと試薬を用いました。血漿内のインフリキシマブ、ベバシズマブ、トラスツズマブ、アダリムマブ(図 2~5)は直接消化後、消化ペプチドの SPE 精製まで、トータル 4 時間未満で調製されました。これにより、いくつかの 96 ウェルプレートでその日のうちにサンプル調製を終え、翌朝にはデータを取得可能でした。
インフリキシマブ、アダリムマブ、ベバシズマブ、トラスツズマブをヒト血漿に添加しました。その後 LC-MS 分析のために、35 µL の添加血漿サンプルを ProteinWorks eXpress Direct 消化キットおよびプロトコールを使用して消化し、消化の後、ProteinWorks μElution SPE クリーンアップキットおよびプロトコルを使用して、シグネチャーペプチドをクリーンアップしました。
LC システム: |
ACQUITY UPLC |
検出: |
Xevo TQ-S 質量分析計、ESI+ |
カラム: |
ACQUITY UPLC Peptide BEH C18、300Å、1.7 μm、2.1 mm×150 mm |
カラム温度: |
55 ℃ |
サンプル温度: |
10 ℃ |
注入量: |
10 µL |
移動相 A: |
0.1% ギ酸水溶液 |
移動相 B: |
0.1% ギ酸アセトニトリル |
キャピラリー電圧(kv): |
3 |
コーン電圧(V): |
30 |
ソースオフセット(V): |
50 |
ソース温度(℃): |
150 |
脱溶媒温度(℃): |
600 |
コーンガス流量(L/時): |
150 |
脱溶媒ガス流量(L/時): |
1000 |
コリジョンガス流量(mL/分): |
0.15 |
ネブライザーガス流量(Bar): |
7 |
時間(分) |
流速(mL/分) |
%A |
%B |
カーブ |
---|---|---|---|---|
0 |
0.3 |
100 |
0 |
6 |
1 |
0.3 |
100 |
0 |
6 |
7 |
0.3 |
50 |
50 |
6 |
8 |
0.3 |
10 |
90 |
6 |
前臨床の段階では、メソッド開発に時間と専門性が求められるため、簡単で、広く適用でき、汎用性のあるプロトコールであることが重視されます。直接消化と ProteinWorks eXpress Direct 消化キットを用い、複数のシグネチャーペプチドを使用して、ヒト血漿中の 4 種類のモノクローナル抗体医薬品を定量しました。広く適用可能な ProteinWorks キットを使用して、各タンパク質について、感度、直線性、真度と精度のすべてが、一般的なメソッドバリデーション要件を満たしました。35 µL の血漿サンプルの直接消化により、4 種類のモノクローナル抗体ベースの医薬品についての定量下限は 250 ng/mL ~ 2.5 µg/mL の範囲でした。検量線は、3.5 ~4 桁を超える直線性を、検量線ポイントに対する平均真度95 ~105% と共に達成しました。インフリキシマブ、アダリムマブ、トラスツズマブ、ベバシズマブの検量線の結果をまとめたものを、次の表 2 に示します。
同時に、QC 試験の結果(表 3 を参照)も、平均精度値が 15% より十分に低く、平均して 10% 未満という規制ガイドライン 3 を十分に満たしました。
創薬研究の場合、1 µg/mL 以下という検出下限はモノクローナル抗体タイプの医薬品に対して一般的です。ProteinWorks eXpress Direct 消化キットを使用すると、評価対象の 4 つの薬剤すべてでこの検出下限を簡単に得ることができます。図 6 の低濃度 QC 試験クロマトグラムは、単一のユニバーサルプロトコールとキットで適切な感度が得られることを示しています。
この研究では、創薬研究段階でメソッド開発の必要なくトリプシンペプチドを得るために単一のユニバーサル消化プロトコールと SPE メソッドが開発されました。最適化の必要なしに、このキットで血漿中の 4 つのモノクローナル抗体医薬品を十分な真度と精度で定量できたことは、時間が重要であり、タンパク質バイオアナリシスの限定的な経験しかない状況における、キットの広範な適用性と有効性を示しています。さらに、ロットトレーサブルな秤量済み試薬を使用したキットを適用することにより、施設間、ラボ間、またはアナリスト間でメソッドをシームレスに移管することができます。
ProteinWorks eXpress Direct 消化キットを使用して、代表的な検量線のセットとラット血漿の QC サンプルから、インフリキシマブ、アダリムマブ、ベバシズマブ、トラスツズマブを精製し、同時に定量化することができました。各抗体について 250 ng/mL ~ 2.5 µg/mL の定量下限を確実に達成しながら、優れた直線性と精度を維持しました。消化と SPE を含むトータルサンプル調製時間は 3 時間強でした。標準化されたキットベースのアプローチを実行することにより、経験の浅いユーザーでも、創薬研究において有意義なデータを即座に入手し、一刻を争う重要なプロジェクト上の判断を下すことができます。
720005541JA、2015 年 11 月