旭化成ファーマ株式会社  医薬研究センター様

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旭化成ファーマ株式会社  医薬研究センター 安全性・動態研究部
鴻野 あゆみ様、田頭 瑞加様、山本 有様にお話を伺いました。

 

一同:宜しくお願いいたします。

―早速ですが、貴社と今のご部署についてのご紹介をお願いいたします。

鴻野様(以下敬称略):  私は、旭化成ファーマの薬物動態部門において、血中濃度分析を担当しております。その他にも様々な薬物動態研究にLC/MSを使っておりまして、探索から前臨床の各テーマのデータ取りをしています。

―探索段階から前臨床まで幅広くやっていらっしゃるのですね。

 田頭様(以下敬称略):前臨床自体の試験は社内ではやっていないので、正確に言うと探索から前臨床の前までですね。とは言え、装置が潤沢にそろっている訳ではないものですから、臨機応変にやらせてもらっています。

―そうすると特に探索の部分ではスループットが重要になるでしょうか。

鴻野:探索段階ではとにかく評価しなければならない化合物数が沢山あります。したがって、短い分析時間で多くの化合物をこなすことが課題になっております。

―1分析をどのぐらいで測定されているのでしょうか。

鴻野:今まで他社さんの装置では、3.5分で行っていましたが、ウォーターズさんのXevo TQ-Sの2Dシステムを導入してからは、2Dでは3分、1Dでは2分で分析をしております。

―(1Dでは)かなり時間短縮ですね。

鴻野:そうですね。たかが1分と思われがちですが、サンプル数がとても多いので1日の処理量で換算すると、馬鹿にならないくらいの時間短縮、あるいは評価可能化合物数の増加が認められており、とても助かっております。

―そうしますと、弊社のXevo TQ-S 2Dシステムを御導入頂いた一番の目的は、スループットになるのでしょうか。それとも、また別の課題があってでしょうか。

鴻野:スループットもそうですが、一番は感度です。結局、感度も良くてスループットもという欲張りな要望が達成できるのがXevo TQ-Sでした。探索段階で、なかなか感度が出ない化合物もありますので、その化合物ごとに最適化をやっていくのは大変です。ですから、ある程度の標準的な手法でスループットも良く、かつ感度も上げられればと思い導入しました。

 

―今、最適化のお話がありましたが、最適化はソフトウェアで行われているのですか?

鴻野:そうですね。化合物毎の最適化はソフトウェアでやっていますし、(その機能を使用する場合、2Dシステムから)本来のTQ-S配管へ付け替えが必要になるのですが、そうすると分析途中で装置が止まる隙間の時間ができてしまいます。そこで装置を止めずに沢山の分析ができ、また配管の付け替えをすることなく、分析の間にMS条件の最適化が入れていけるようなシステムをエンジニアの方に組んで頂きました。その結果、例えば夜中に分析を開始し朝には終わり、その後また分析を入れるというように、装置を分析の状況に応じていろいろと使えるようになりました。空き時間がなくなり、使い勝手がとても良くとても助かっております。

 

―配管の付け替えがいらないというのは、バルブで配管を切り替えているということですね。

鴻野:はい、バルブの切り替えです。やはり、私は装置に関してはプロではありませんので、付け替え時にヒューマンエラーがどうしても出てきてしまいます。そういうリスクを無くすために、配管やカラムの付け替えがなるべくないように、システムを構築して頂いております。

―リスクを無くすというのも重要ですよね。

鴻野:人間なのでエラーがつきものですので、なるべくそういうところに手をかけないようにと思っております。

 

―弊社のXevo TQ-Sと2Dのシステムを御導入頂きましたが、2Dを選ばれた背景もしくは理由は、どういったところにあるのでしょうか。

鴻野:私の主な担当は血中濃度測定ですが、この測定は検体処理が結構大変です。ステップがいろいろあり、ピペッティングが多くなりますと、それだけミスも出ますし、(測定のための)プレートを作るのも大変です。今までの装置では有機溶媒リッチな状態では測定にかけることができず、最終的にはまたプレートで希釈するという操作が必要でした。そうすると、どうしても手間もかかり、処理時間も多くなっていました。しかし、Xevo TQ-Sの2Dでしたら有機溶媒リッチのまま測定にかけることができますので、その点が一番助かっています。

―手作業の部分を省くというのが一番大きいということですね。

鴻野:そうです。一日で処理する数も多いものですから、そこだけでも減りますと、一日で処理できる量が100本だったものが200本、200本だったものが400本というように処理することができます。それで分析時間も短くなりましたので、一日に分析できる数、処理できる数が、そこでもまた増えますから、2Dシステムにすることによって、スループットがかなり上がったことを実感しています。

 

―ありがとうございます。ちなみに、2Dシステムは、立ち上げがなかなか難しいというイメージをお持ちの方が実際には多いかと思いますが、現実問題として導入当初はいかがでしたか。

鴻野:はい。立ち上げ時はとても大変で、エンジニアの方にはいろいろと手伝って頂きました。最初は2Dのバックフラッシュの配管でしたが、血中濃度の測定でタンパクを下に沈殿させておくだけなので、どうしても詰まりという問題がありまして…。分析を始めた時に、フィルターをつけていても300サンプルぐらいで、カラムがどうしても詰まってしまいました。

バックフラッシュで300サンプルですと、一晩でカラムが1本つぶれてしまうということで、それではちょっと困りましたので、またエンジニアの方にお願いして、今はフォワードフラッシュ方式にしております。その結果、現在ではもう詰まりもなく、順調にカラム寿命も延びております。ただやはりフォワードフラッシュだと、バックフラッシュに比べてピークが太くなっておりますので、もう少し詰めていきたいと思います。

 

―最初はスムーズに簡単にというわけには…。

 

鴻野:やはりいかなかったですね。

―難しい部分もありながら解決してこられたということですね。

鴻野:そうですね。私一人ではできなかったので、皆さまにもお手伝い頂いています。やはりこれだけ全部をカスタムにしたものは、どこがトラブルなのか、どこをどう手をつけていいのか分からなくて、サポートセンターのほうに何度もお電話したり、来て頂いたりしました。今は順調に稼働しております。

 

 

―良かったです。詰まりやすかったというのは、やはりサンプルの前処理にあまり手をかけずにされているからですか。

鴻野:そうですね、手をかけずにしております。固相抽出して綺麗にすればいいのですけれど、そこまで手間をかける時間がないので、ある程度粗くタンパクを沈殿で落としておいて、あとはフィルターをかければいいのですが、(除タンパク沈殿の)プレートのままやってしまうと、そこでまた詰まっていました。常に1プレートずつあるわけではありませんので、どうしてもそこは省きたいという点と液クロのほうでうまく分離をして、というのがこちらの希望になります。手間もそんなにかけず、分析時間も短くというのはちょっとわがままですけれども、そこでうまく折り合いをつけることができればと思っております。

―それでは除タンパクを簡単にされたサンプルで、フィルターをちょっとかけるということでしょうか。

鴻野:フィルターもかけないで、遠心で沈殿して、上清だけをとって分析しています。ニードルストロークも、上のほうだけを吸うように設定して頂きました。

―なるほど。そういったちょっとした工夫の積み重ねが重要なのですね。

鴻野:そうですね。ニードルが、ウェルの下まで行ってしまいますと、針を刺す時に対流が起き、それで沈殿したタンパクを吸ってしまう可能性もありますので、液量を多めにして上部位に下ろしています。1mLのディープウェルで、上清だけをギリギリでとっておりますので、一番心配なのは、オートサンプラーの中で蒸発しないかということですが、その辺のシールなどもいろいろ検討しております。

 

―もう少し分離の部分で検討が必要ということですが、導入前の元々の目的である感度とスループットという点においては、いかがでしょうか。

鴻野:感度はかなり上がっておりますので、その点は満足しています。ただ、ダイナミックレンジは伸びたのですけれども、下にかなり伸びて、上のほうは今までよりも頭打ちになってしまいます。ですからUPLCでは、かなり少量での注入もできますので、そこで注入量を減らすことで上のほうに検量線を伸ばすこともできています。

―注入量はかなり減らされたのでしょうか。

鴻野:そうですね。感度の高い化合物の時は、0.3 μLにします。

―かなり少量ですね。

鴻野:はい、かなり少量です。通常は1 μLの注入ですけれども、それが半分。0.1 μLでも大丈夫ということですけれど、再現性もとっており、希釈せず高濃度のままの時は一応0.2か0.3 μLぐらいでやっております。

―その注入量で再現性も十分ということですか。

鴻野:そうですね。濃度依存的に綺麗に検量線もひけていますので、大丈夫だと思います。

 

―現在の稼働状況は、毎日測定を仕掛けるような感じになるのでしょうか。

鴻野:はい。稼働状況は毎日ですね。止まることはほとんどありません。週末も土曜日の夜中というか、日曜日の夜中にかかるぐらいかけております。

―では1台フル稼働ですね。

鴻野:はい、フル稼働です。

―基本的には、ほとんど2Dのままお使いでしょうか。

鴻野:いえ、化合物によっては1Dの測定も、たまにありますけれども、8割は2Dでやっております。1Dの時も、配管の付け替えがいらないようになっているので、2D、1Dの付け替え無しで、気にせず使えるところがいいですね。配管の付け替えとなると、またそこで分析がストップしてしまいますので、そういう隙間時間を作らないということで、その辺はとても満足しております。

―確かに、手作業で何かというのは、いろいろと分析をされる所では効率が悪いですよね。

鴻野:そうですね。高圧のLCなので、ちょっとしたゆるみで、そこから液漏れが出ますし、金属配管というのは、ちょっとした手の感覚で難しいのです。自分では大丈夫だと思っていても、高圧で流した時に、じわーっと漏れ出てくる事があるので。その辺のハンドリングが難しいですから、できれば配管を触らないようにできるのが一番いいと思っていました。

 

―お話の途中で、分析をして最適化もして、また分析をするという部分がありましたが、それは全部ソフトウェアで、自動で測定をされているということでしょうか。

鴻野:そうですね。やっています。

―ソフトウェアとしては弊社のQuanOptimizeという機能を使って頂いているのでしょうか。

鴻野QuanOptimizeですと、(MS条件の最適化の)チューニングをして、それからMSメソッドに解析メソッドも作って、その後最適化した化合物が検出されているのか、また濃度依存的に測定が出来ているのかという標品による確認の分析までの一連の分析が全部オートでできます。(本サンプル)分析の隙間にそれらを入れていけば、翌日には血中濃度なり他の分析ができるようになります。確認までが全部できるので、その辺はとても助かっております。

 

―ありがとうございます。最適化から測定まで連続してご使用頂いているのですね。

鴻野:はい、本サンプルまではやらないのですけれども、標品の確認までは、MS条件の最適化から分析まで一連の操作としてオートでやっております。

―では効率化が図れるということでしょうか。

鴻野:そうですね、そこでかなり効率化が図れています。今まではどうしても日中でしか、化合物のチューニング作業ができませんでしたので、その間、装置の稼働率が低下してしまいますし、またマニュアルでしたので、ずっとつきっきりで、他の作業ができなかったのですけれども、(今は)夕方に仕掛けていけば、朝来たら終わっていて、装置に張り付いていなくてもいいので、その間他の作業ができますので、他の業務の方もその分はかどることができていると思います。

 

―なるほど。むしろ他の仕事に手をかけられるということですね。

鴻野:そうですね、はい。

 

―導入前と比べていかがですか。

鴻野:導入前に比べましたら、分析時間も短くなっていますので、稼働状況としてはかなり動いております。今まで3.5分だったものが3分なり2分になっておりますので、夕方までに処理したサンプルの測定が朝には終わっております。導入前までは、サンプルの測定が終わっていないということがありましたので、装置の稼働率、稼働時間はすごくかかっていました。今は分析時間が短くなりましたので、さらにもう少し何かを隙間の時間に入れていけば、もっと稼働率を上げることができるのではないかと思います。

―機能的には、夕方仕掛けて朝結果を見るというのは、次のアクションがしやすいですよね。

鴻野:もし測定が終わっていれば、データを見て次の実験ができる。でもそれが例えば翌日の日中までかかってしまえば、もう作業はそこでできないので、その日は本サンプルの処理もできなくなってしまいます。そうなると装置が、その間は止まってしまいますので、かなり稼働率が(低下してしまうのですが)、そういうことでは(朝に結果が確認できるという点で稼働率が)上がっていると思います。

―ちなみに、カラムというのは標準のメソッドで決められて、そのまま使うことができているのでしょうか。

 

鴻野:今のところはできているのですけれども、先ほどもお話させて頂いたように、もう少しシャープに、よりよい分離をということで、いろいろカラムを教えて頂きました。分析カラムも、トラップカラムも何種類か試しているのですけれども、まだ「最高です」と言えるようなデータがとれておりませんので、これからも何かいいカラムがあれば教えて頂いて、よりよい標準分析系を作っていきたいと思っています。

―今はどういったカラムをお持ちでしょうか。

鴻野:分析カラムがBEHのC18とトラップのほうがXBridgeのC8ですね。

―なるほど。2Dになると、組み合わせで大分結果が変わってきますね。

鴻野:いろいろやっているのですけれども、今のところそれが一番いいです。でも、もう少し良くしていかないと、と思っております。

 

―お客様のほうで今後目指される目標などがございましたら、お願いいたします。

 山本様(以下敬称略):沢山のサンプルを測定するという目的だけなら、Xevo TQ-Sは、ちょっと高級品すぎると思っています。感度はすごく良いのですが、実は高感度で使いたい別の目的があって、今の大量にサンプルを流している目的とは少し違うところにあります。

今の2Dの環境ですと、感度だけを求めるという事と、沢山測るというのはたぶん相反する部分がどうしてもあると思うのです。ですからそこの部分が、装置の組み合わせで今後解決できればいいのかなと思っています。

 

鴻野:先ほど出ましたが、Xevo TQ-Sは、高感度機種ですので、確かにハイスループットだけに使うのは、とてももったいないなとは、私も思っております。

―ありがとうございます。

 

―最後に今後、弊社に期待して頂けることですとか、ご要望がありましたら、お伺いできれば思います。

鴻野:今後まだまだ成長されると思うのですけれども、やはり私の感覚ですと、もう少し簡単に使える何かが。「昔の液クロは大変でしたが、今は結構簡単に使っていますよ」というように、簡便性ですかね。全く知らない人は別ですが、液クロというものが分かっていれば、ある程度ポンポンと簡単にできるような、何か簡便なシステムがあればいいとは思っております。装置の高感度化も大事ですけれども、使うユーザーみんながマニアックに使えるわけではないので。LC/MSというのは、かなりみんなが使うような装置になってきていますので、ある程度簡単に使えるようなシステムがあればいいとは思っております。

―よりすそ野が広がるといい、ということですね。

鴻野:そうですね、やはり一から、配管がどうとかいう教育をしなくてもいいように、そういう部分を簡単にできればいいなと思っておりますので、すそ野が広がるような装置を開発して頂ければと思っております。

―ありがとうございます。弊社のほうでも質量分析計のシングルMSに関しては、QDaというシステムを販売しておりまして、それも普通の光学検出器並みに操作がかなり楽になっていますが、それ以上にさらにタンデム質量分析から、液クロから容易なものが開発できればと思います。

鴻野:よろしくお願いします。 今はカラムをつけるのも、UPLCのカラムは、いっぱいねじ込みをしなければならないので、フィルターもついていたりするとやはり…。今はスパナなどを使ったことのない研究者も居ますので、そのような人では扱えません。それで締め込み過ぎてねじ切ってしまったり。その辺がもっと手締めでいい感じに締まってくれるとか、もっと耐圧性に優れる何かかもしれないのですけど、そういうものがあるといいなと思います。 誰でもできるような装置というのは難しいとは思いますけれども、よく換えるようなパーツだけは、もう少し楽になってくれればとは思っています。

 

―貴重なご意見をありがとうございます。今日はお時間を頂き、ありがとうございました。

 

 


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