• アプリケーションノート

Otto SPEcialist による固相抽出の革命的変化:ソフトウェアで操作する使いやすい加圧マニホールド

Otto SPEcialist による固相抽出の革命的変化:ソフトウェアで操作する使いやすい加圧マニホールド

  • Kathryn Brennan
  • Jonathan P. Danaceau
  • Paula Orens
  • Waters Corporation

法中毒学目的のみに使用してください。

要約

本研究では、以前にバリデーション済みの固相抽出(SPE)アプリケーションについて、半自動の加圧サンプル前処理装置である Waters Otto SPEcialist と、完全に自動化された真空ベースのシステムである Hamilton Microlab の STAR を比較します。この広く適用可能なメソッドには、Otto Software のテクノロジーの使用が含まれています。これにより、完全に自動化されたシステムと同等の回収率が得られ、法中毒学の研究をサポートする尿サンプル中の規制医薬品の正確で再現性のある定量が可能になります。 

アプリケーションのメリット

  • 分析法の移管が簡単
  • ユーザー間のエラーを低減
  • 手作業による人為的ミスのリスクを低減
  • 固相抽出用の頑健で再現性のある分析法を保証
  • 科学者の時間を節約して別の作業への従事を可能に

はじめに

装置での分析の前にサンプルを抽出、精製、濃縮するために用いるサンプル前処理は、ワークフローのプロセスに不可欠です。ほとんどの場合、これはバイオアナリシスのワークフロー全体において時間のかかるステップであり、エラーの発生源と考えられています1。 サンプル前処理の一般的な技法である SPE を実行するには、窒素気流で正圧を加えてサンプルを吸着床に通すか、真空によって負圧をかけてサンプルを吸引して、吸着床に通します。特定の種類の SPE プロセスを選択するのには理由があります。例えば、ほとんどの加圧デバイスは大きいサンプル量の処理に対応しないため、真空マニホールドを使用する必要があります。ただし、真空を使用する場合、個々のウェルにかかる圧力の不規則さや、真空装置の最大圧力限界による低流速などの欠点があります2。 別の懸念は、抽出プロセス中に圧力設定を手動で調整する必要があることです。これにより人為的ミスが発生する可能性があります。この問題を軽減するために、完全自動のサンプル前処理および抽出デバイスが市販されていますが、これらは高価であり、扱いにくい大きさです。一方で、SPE ワークフローを改善するためには、人為的ミスの低減のニーズが極めて重要です3-6。  

コンパクトで半自動のサンプル前処理デバイスである Otto SPEcialist では、正圧のより効率的な使用を、SPE プロセスのすべてのステップで吸着床にかかる圧力を自動的に変更するソフトウェアと組み合わせています。この革新的なデバイスにより、追加のコストなしで、サンプル前処理および抽出の際の分析の一貫性の高い包括的なソリューションが提供されます。さらに、ほとんどの他の加圧マニホールドとは異なり、96 ウェル µElution スケールであっても 6 cc カートリッジ型式であっても、幅広いサンプル容量を処理することができます。以下の研究では、Otto SPEcialist 加圧マニホールドを使用して固相抽出メソッドを実行する際の、この新しくシームレスなテクノロジーが提供する信頼性について紹介します。 

結果および考察

低濃度(50 ng/mL)および高濃度(1000 ng/mL)でスパイクしたプールされている尿サンプル中の 21 種の薬物のパネルを、3 バッチで、3 日間にわたり、各バッチの 1 濃度あたり N = 4 で抽出しました。サンプル前処理プロセスの詳細な図が図 1 に示されていiます。全てのサンプルを、抽出前に手作業で尿中で前処理しました。2 つの異なるサンプル処理プラットホームで、回収率実験を実施しました。個々のサンプルはすべて、バッチごとに 2 回抽出しました。各回収サンプルの 1 アリコートを Otto SPEcialist を用いて、別のアリコートを Hamilton Microlab の STAR を用いて、それぞれ処理しました。Otto の場合、サンプルをロードし、ユーザーが手動で洗浄溶液および溶出溶液を追加し、マニホールドによって、事前にプログラムされたメソッドを用いて正の圧力ランプがかけられました。STAR によって、すべての液体処理ステップおよび SPE が自動で実行されました。Otto の回収率を完全自動システムと比較したところ、低濃度および高濃度での日間回収率はそれぞれ 85 ~ 98% および 89 ~ 113% で、標準偏差はそれぞれ 7.7% および 3.5% 未満でした。日間の回収率と標準偏差の比較は、それぞれ付録 1 および 2 に示されています。Otto の低濃度および高濃度での日内(3 日目)の回収率はそれぞれ 78 ~ 99% および 83 ~ 116% で、RSD はそれぞれ 6.6% および 3.3% 未満でした。日内回収率と RSD の比較については付録 3 を参照してください。分析種の完全なパネルおよび完全な実験セクションとバリデーション済み分析法に関する詳細情報は、ウォーターズアプリケーションノート 720006187EN に記載されています7

図 1. Oasis MCX を用いたサンプル前処理および尿中での固相抽出手順 

結論

本研究では、人間の介入を必要としない完全に自動化されたプラットホームと比較した、許容可能で同等の回収率が得られる固相抽出を実行する Otto SPEcialist 正圧マニホールドの信頼性を、実証しました。Otto は、3 日間にわたる 3 バッチ処理で、正確度 85 ~ 115%、SD 8% 未満の頑健性と再現性を達成しました。この半自動加圧デバイスには、使いやすいソフトウェアインターフェースと、ベンチやフードの下に簡単に収納できる洗練されたコンパクトなマニホールドが装着されています。メソッドを装置間で移管でき、ユーザー間エラーおよびバッチ間エラーが低減します。高価で分析法のプログラミング方法を習得するのに多くの時間を要するほとんどの完全自動システムとは異なり、Otto は比較的安価で、そのソフトウェアはほとんど初心者でも簡単に習得できます。全体として、Otto SPEcialist は、固相抽出へのシンプルで易しい半自動のアプローチを提供します。 

参考文献

  1. Chapter 5 Automation Tools and Strategies for Bioanalysis, In Progress In Pharmaceutical  and Biomedical Analysis, David A. Wells, Editor 2003, Elsevier. p. 135-197.
  2. Gallert, C.; et al. Evaluation of An Automated Solid-Phase Extraction Method Using  Positive Pressure.American Laboratory Application Note.2015 Apr.
  3. Lehmann, S.; et al. Determination of 74 New Psychoactive Substances in Serum Using Automated In-Line Solid-Phase Extraction-Liquid Chromatography-Tandem Mass Spectrometry.J. Chromatogr.B. 2017, 1064, 124-138.
  4. Wei, D.; et al.Online and Automated Sample Extraction.Bioanalysis.2015, 7(17), 2227-2233.
  5. Zheng, N.; Jiang, H.; Zeng, J. Current Advances and Strategies Towards Fully Automated Sample Preparation for Regulated LC–MS/MS Bioanalysis.Bioanalysis.2014, 6(18), 2441-2459.
  6. Ramírez Fernández, M.d.M.; et al.Validation of An Automated Solid-Phase Extraction Method For The Analysis of 23 Opioids, Cocaine, And Metabolites In Urine With Ultra-Performance Liquid Chromatography-Tandem Mass Spectrometry.J. Anal.Tox. 2014, 38(5), 280-288.
  7. Danaceau, J. P.; Freeto, S. M.; Calton, L. J. A Comprehensive Method for the Analysis of Pain Management Drugs and Drugs of Abuse Incorporating Simplified, Rapid Mixed-Mode  SPE with UPLC-MS/MS for Forensic Toxicology.Waters Application Note, 2019, 720006187EN.
付録 1. 50 ng/mL および 1000 ng/mL での Otto SPEcialist と Hamilton STAR の日間正確度の比較 
付録 2. 50 ng/mL および 1000 ng/mL での Otto SPEcialist と Hamilton STAR の日間標準偏差の比較 
付録 3. 50 ng/mL および 1000 ng/mL での Otto SPEcialist と Hamilton STAR の 3 日目の日内(N = 4)正確度および RSD の比較 

720007067JA、2020 年 11 月

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