塩野義製薬株式会社様

Users Voice お客様活用事例トピックス

塩野義製薬株式会社  創薬・探索研究所 医薬応用化学部門
主任 吉田 弘志様にお話を伺いました。

 

―本日はよろしくお願いいたします。はじめに吉田様のご部署についてご紹介をお願いします。

 吉田様(以下敬称略):  創薬・探索研究所、医薬応用化学部門という名前の部署で、創薬技術を駆使して医薬品の創製に貢献することをチームの目的としています。私自身の仕事内容は主にLC/MSや、最近ウォーターズさんが発売されたSFC/MSを使って化合物の分析・分取を行っております。またケミストが利用するLC/MSやUPLC/MSに対して、その価値を最大限に発揮できるように安定稼働させるための維持管理等も行っております。約20名のグループで、そのうち分析・分取の業務に関しては4人のサブグループメンバーで行なっています。

―4名の方がお使いになる機器のうち、稼働率が高いものはやはりLC/MSでしょうか?

 吉田:そうですね。まだまだSFC/MSにくらべてLC/MSの方が稼働は多いですね。私たちの部門では全部で14台、御社の装置を入れさせてもらっていますが、LC/MSが13台、SFCは1台で、SFCはこれからの装置と思います。

(このインタビューの最後でSFCとUPC2(UPCスクエア)についての吉田様のご意見を伺っていますので、そちらもぜひお読みください。)

―では本日のメーンテーマであるオープンアーキテクチャーシステムについてお伺いします。今年ご導入いただいたシステムで4台目と思いますが、ご使用目的をお聞かせ頂けますか。

 吉田:いえいえ、5台目ですね。2~3年前に1台導入し、そして今年で5台目です。

―失礼いたしました。今年(2012年)は2台ご導入いただいて、非常にありがたく思っております。はじめてこのオープンアーキテクチャーシステムに注目していただいたきっかけはどのようなことだったのでしょうか?

 吉田:実は、5~6年前に化学系の部署でオープンアーキテクチャーシステムではないUPLCを導入したことがあります。その当時はユーザーのレベルがまちまちでして、複数の人間で使うものですから、使い方の問題で装置エラーが頻繁に起こってしまいUPLCは使いづらいという話になりました。今思うととんでもない話ですよね。UPLCが発売されてすぐのころで、濃過ぎるサンプルを打ってしまったり、感度が良すぎて逆に使いこなせないということもありました。

―すぐ飽和してしまう、というような感じでしょうか。

 吉田:はい。また今までのHPLCの感覚で使う人が多かったものですから、すぐに詰まってしまうということもありました。いろいろあって、我々化学系のケミストの間では使いこなすのが難しい装置ということで、一度、他部署に譲渡した経緯があるんですね。とはいっても、高分離能と高速という特長は捨て難いという思いがあり、何とか導入したいと思っていたところに、ちょうどオープンアーキテクチャーシステムが組めるという話を聞いたものですから、それならばと導入に踏み切りました。実はUPLCではない、HPLCベースのオープンアーキテクチャーシステムは以前からずっと使っていたので、我々ケミストが使い慣れているという利点を感じていました。

―なるほど。HPLCベースのオープンアーキテクチャーシステムの使い勝手はそのままで、UPLCベースになることで、より高速・高分離能が可能であれば、さらに有用性は大きくなるというご判断でご導入を決めていただいたということでしょうか?

 吉田:はい、そうですね。それから、通常のUPLCに比べてとても多くの種類のサンプルプレートをセットできるというのが、一番興味があったところです。現在は5種類のサンプル容器を使っています。やはりユーザーが好きな、用途に合ったサンプル容器を選択できるというところが、ポイントが高いですね。

―HPLC部分がUPLCになったことにより、具体的にこう良くなった、もしくは、期待はずれだった点はございますか?

 吉田:そうですね。やはり分離能が格段に良くて、ピークがものすごくシャープになりました。今まで見えなかった、一つのピークに含まれていた不純物が分かれて見えてくるというのは、ベンチケミストが反応追跡する上で非常に有用なツールとなっています。逆に、純度を見るときに見たくない物が見えてしまう、いるので当たり前ですけど、見えてしまうことがあります。結果として、純度確認への信頼感が以前よりも高くなったなと思います。

―新たな不純物が見つかるというご経験は増えてきましたか?

 吉田:はい、以前のHPLCでは見つからなくて、UPLCで見えてきたということがありました。創薬の探索の段階において、不純物が活性を持ってしまうという事例が過去にありました。あとから作り直してみると活性がないということになりました。実は最初に作ったときの不純物が効いていたのですが、昔のLC/MSでは見分けられなかったわけです。すべて短い時間のメソッドで不純物も見ようとしていたからという事情があるのですが。

―ご使用されているシステムはMSだけでなく、PDAとELSDも組み合わせた、マルチ検出器システムの構成で分取を行なっていらっしゃいますが、それは今のお話にあったような過去のご経験を生かして、出来るだけ検出漏れをなくそうというお考えから生まれたものでしょうか?

 吉田:はい。PDAでは見えない不純物も、マルチ検出器で見ることによって、より信頼性を持たせたいと考えています。

―トータルで5台のオープンアーキテクチャーシステムを、吉田様のグループの4名のケミストの方がお使いになっているということは、おおよそ1名の方が1システムをご使用になっていらっしゃるのでしょうか?

 吉田:いいえ、そうではありません。我々のチームは主に分取の方に重きを置いているので、実はUPLCベースのオープンアーキテクチャーシステムはほとんど使っていません。純度確認に1台を使う程度で、残り4台をケミストが使用しています。

―そこで使われるメソッドは基本的に吉田様のチームがお作りになったものですか?

 吉田:はいそうですね。ケミストがいろいろメソッドを選んだり、パラメーターを設定する必要がないよう、こちらで作った共通のメソッドを使うようにしています。

―その共通メソッドですが、MS条件やUPLCの条件はどれくらいのパターンをお作りでしょうか?

 吉田:基本的に1つのパターンですね。素晴らしい装置の能力をフルに引き出しているかと言われれば、装置が泣いているかもしれませんが。

―いえいえ、安定稼働が最優先です。1台のシステムを大勢のケミストの方がお使いになる場合、吉田様のようなヘビーユーザーではない方もお使いになることもあると思いますが、何か皆様からご意見やご要望というのはお聞きになりますか?

 吉田:実はオープンアクセスソフトウエアはあまり使っていないのです。やっぱりMassLynxソフトウエアの解析の素晴らしさをユーザーに逐一伝えて、各ケミストのPCにインストールしてもらい、各人同じ環境で解析することを普及させています。

―ケミストの方一人ひとりが、MassLynxソフトウエアで解析をされているということでしょうか?

 吉田:はい。もう地道にOJTでトレーニングを行なっています。

―そうですか。お疲れ様です。MSで取り込んだデータを各ケミストの方の個人用のPCで解析されているということですが、データのやりとりというのは、ネットワークシステムを組んでいらっしゃるのですか?

 吉田:最初はその方法に悩んだのですが、所内の研究用ストレージサーバーにいったん測定器からデータを移し、各個人のPCからそのサーバーにアクセスする方法をとっています。ケミスト個人が機器を置いてある部屋へ行かずに測定結果を得られる環境になっています。

―では、ケミストの方はご自分で測りたいものがあれば、5種類でしたか、何種類かあるサンプル容器の中で、これが一番良いというものにサンプルを入れて、装置にセットしてスタートをかけたら、あとはご自分のPCで結果を解析する、という流れですか。

 吉田:はい、そうです。

―素晴らしいですね。最初のオープンアーキテクチャーシステムは、既にご導入いただいていた弊社のHPLCベースのシステムをUPLCに交換してシステムを組み替えていただいたと記憶しています。それ以降もそのときと同じシステム構成で増設していただいていますよね。

競合メーカーさんのLC/MSや多検体処理用のHPLCについても、いろいろと情報を入手されていると思いますが、その中からウォーターズを選んでいただいている理由や他のメーカーさんとの違いなど、是非ご意見をお伺いしたいのですが。

 吉田:化学系の中ではウォーターズさんの製品と他社さんの製品を主に使用しています。分取のシステムでウォーターズさんの製品に非常に長所があると感じています。実は私がこの部署に入る前からずっと使われてきているので、実際にはその継続ということになります。

―具体的には分取システムのどういった点で長所を感じていただいていますでしょうか。

 吉田:MSが出やすいということを他のケミストから聞いたこともあります。ある化合物では、ウォーターズさんのMSでしか検出されないということもありました。装置のチューニングの設定の問題もあるとは思うのですが、そういった点でウォーターズファンが居ることは確かです。

―当社の分取システムにはいろいろな構成がありますが、大型のポンプを使って分取をするだけでなく、システム内部に流路の切り換えバルブがあって、分取した分画を確認用の分析カラムで純度確認を行なう、分取と分析を兼用したオートピュリフィケーションシステムがありますが、それをご導入いただいておりますね。

 吉田:分取装置としては活用させていただいていますが、実は確認分析はこのシステムでは行なっていません。

―とおっしゃると、確認分析はUPLCオープンアーキテクチャーの方で迅速分析されているということでしょうか

 吉田:そうですね。分取システムは可能な限り分取システムとしてフル稼働させたいので、フラクションの確認用としては使っていません。とはいっても一台のシステムで、分取と確認分析の両方の機能を使えるというのは心強いところではありますね。

―分析用のシステムとして考えたときに、UPLCのパフォーマンスはどのように感じていらっしゃいますか?例えば、分離や検出感度がよくなった、あるいは、他メーカーと比べてどうかというところで、何か周りの方々のご意見を聞かれたことがあるようでしたら、あわせてお聞かせ頂けますか。

 吉田:当社の場合は難しい分析、特に分離がうまく行かないものは、UPLCで分析するという一種固定観念のようなものがあります。それから最近は、他メーカーのソフトウェアと比較してMassLynxソフトウエアの方が使いやすいという声が多くなってますね。実は各共通室に他社さんとウォーターズさんのシステムを1台ずつ置いています。別に競争させる訳では無いのですが。

―どちらを使うかは、あくまでそのケミストの方のご判断によるのでしょうか?

 吉田:はい。

―カラムを変えて分離をもう一度検討してみようということは、それほど多くはないのですか。

 吉田:ほとんどないですね。ケミストが、反応がうまく行ったかどうかのモニターに使っているのが大半ですので、一回見たら終わりという状況です。そこで反応がうまく行けば、もうピークは1本しか出ないので、どのカラムでどの分析条件でというような細かい設定まではやらないことが大半ですね。

―なるほど、出発物質がだんだん減っていき、できたものが1本出て、不純物もないという状態が上がりというか、理想形というか、確認分析終了といというわけですね。

 吉田:それをオンタイムというか、速やかに見たいというところで、UPLCが一番使い勝手が良いかなあと思います。反応チェックは、測定待ちの間に化合物が壊れてしまったら元も子もないので、UPLCは速く奇麗にという目的を達成してくれていると思っています。カラムの選択で言えば、高極性のものが保持しにくいという例は稀にあるので、そのときに変えてもいいのかなと思ってはいるのですが、実際に変えるところまでは行っていないです。

―そうですか。カラム交換の時間的ロスも生じるとなると、そのまま進めた方が、良いということになりますかね。ところで、この10年ほどの間に探索のお仕事のなかで劇的に変わったことがございますか?

 吉田:やはりよりスピードアップが求められるような環境になっており、それに応えられるような装置がふんだんに出てきていると感じます。そして、実際、探索研究にかかる費用全体も大きくなっているというのは感じています。その意味で今回も導入させていただいたオープンアーキテクチャーシステムは、ランニングコスト面が選定の理由の中で大きなウエートを占めています。もともとUPLCにすることで溶媒消費量は下がります。それから、我々の使い方ですと、一回反応チェックの分析をしたら二度と見ることがないので、毎回ガラスのバイアルにゴムキャップを付けて分析する必要がありません。そういう意味で、96well プレートであったり、1本もののプラスチックチューブも使っています。1本の測定にかかるランニングコストを大幅に下げることができるというのも、色々な種類のサンプル容器を選べて、設定できるというオープンアーキテクチャーシステムの特長のおかげだと思っています。

―例えば14~15年前のお仕事のスピードに比べて、今はどれぐらい短縮できていると思われますか。

 吉田:単純に10倍ぐらいではないでしょうか。一つひとつ手作りでやっていた時代から比べると、さまざまな道具や技術を使うことで一人が同じ時間だけ働いて10倍ぐらいは化合物の量を増やせたのではないかと思います。

―それではオープンアーキテクチャーシステムについての総括をお願いします。

 

 吉田:我々は、化学系の中ではもうみんなこのシステムに慣れているので、オープンアーキテクチャー以外のシステムは考えられない状態になっており、特に不満も感じていません。確か今年導入したものからオートサンプラーの動きが非常に速くなっていて、さらにスピードアップされたことを実感しています。

 

―そうですよね。以前お伺いしたときとくらべても、こんなに速かったかなって思いました。

 吉田:日々改良は進んでいると感じます。

 

―ではSFCについてお伺いします。HPLCやUPLCとSFCはどのように使い分けていらっしゃいますか?

 吉田:まだまだHPLCの台数の方が多いので、HPLCでうまく行かないものがSFCに廻わってくる段階ですね。

―SFCを使用される頻度はどれくらいでしょうか?

 吉田:そうですね。いまのところ1台しかないので、月10件ぐらいですかね。適度な数だと思います。

―SFCの将来性に関してどのようにお考えでしょうか?

 

 吉田:SFCは冒頭にお話ししたように、高圧ガス法などの関係で日本ではちょっと不利な点はあるとは思うのですが、不利とはいっても非常に優れた性能を持つ装置だと思うので、今後製薬業界の中での導入は増えていく、緩やかながら伸びていくと考えています。実際に我々も昨年度に1台を導入して、優れた装置だと感じています。設備計画と費用の問題もありますが、可能な範囲で増やしていきたいと考えています。

―ぜひお願いします。ウォーターズ製品全体に対してのご要望また、弊社にご期待いただいていることはございますか?

 

 吉田:そうですね、ユーザーの想像していなかったような、我々をあっと驚かすようなものを製作いただいて、壁を破ってほしいという期待は常に持っています。まだUPC2(UPCスクエア)は使ったことはありませんが、使ってみたいなと思わせるような装置に仕上がっていることを期待しています。

 

―ありがとうございます。私たちもご期待にお応え出来るべく努力をかさねてまいります。それでは最後に吉田様から一言お願いします。

 吉田:シオノギの研究開発は、「常に人々の健康を守るために必要な最もよい薬を提供する」という基本方針のもとに行動しています。そのために、あらゆる努力を惜しまずにチャレンジングでスピード感あふれる活動を展開しています。今後とも、皆さまのご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

―長時間にわたり貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

 吉田:こちらこそありがとうございました。