新潟市衛生環境研究所様

Users Voice お客様活用事例トピックス

新潟市衛生環境研究所 
主幹 伊藤 千代子様、主査 北 弘美様、副主査 小池 敬信様、
主査 笹川 さゆ理様にお話を伺いました。

 

―本日はよろしくお願いいたします。貴重なお時間をいただきまして、どうもありがとうございます。早速、始めさせていただきます。皆さまはどういったお仕事をされていますか。

伊藤様(以下敬称略):研究所は衛生科学室と環境科学室の2つの室に分かれています。私たちが所属するのは衛生科学室になります。そこで主に農産物の残留農薬や食品添加物の検査を行っております。そのほか、検査法の検討なども行っています。

―では、業務の一環として、下痢性貝毒の分析をされているのですね。

伊藤:はい。

 

―下痢性貝毒については、公定法中の例示法に機器分析法が採用されたのが昨年です。それまではマウス毒性試験法で分析されていたのでしょうか。

 小池様(以下敬称略):そうです。以前は貝毒に関してマウス毒性試験法の検査もここで実施していたのですが、通常検体がここ数年なくなり、今回、検査法の検討を一から始めました。

 

―新潟は農産物のイメージが強いのですが、貝毒を分析するような貝はたくさん依頼がくるのでしょうか。

北様(以下敬称略):新潟県は海岸線が長くて、新潟市自体も日本海に沿った形をしており、生食用の岩カキが夏に採れます。

―では、岩カキが分析対象になるのでしょうか。

伊藤:想定対象のひとつになります。

 

―確か下痢性貝毒の分析はUPLCでされていると思います。元々HPLCをお持ちだったと思いますが、UPLCを採用された経緯を教えて頂けますか。

:まず、MSが付いているのがUPLCだったのです。

―機器分析法はLC-MS/MSですものね。

:そうです。

 

―そうすると、弊社で導入時にMSと一緒にご提案したのがUPLCの H-Classだったという理由で採用された訳ですね。

:そうです。

―HPLCと比べてUPLCになると圧力が上がるなど、導入時に心配や不安な点はなかったでしょうか。

:ウォーターズさんのUPLCが発売されて10年以上たちます。その頃、HPLCを更新する時にUPLCは気になっていたのですが、リリース直後でしたので、選びませんでした。今回、MSを購入するに当たって、2年前になりますが、発売からしばらく経っていたのでUPLCでも間違いないだろうと、ご提案をいただいたのもありまして信頼して購入に踏み切りました。

 

―実際、導入してみていかがですか、メリットはありましたか。

:それまで使っていたLC/MSですと農薬・動物用医薬品の一斉分析で1検体あたり45分ぐらいの分析時間かつポジ・ネガを別々に測っていましたが、今回UPLCに変わったことで単純な分析時間が半分以下になりましたし、ポジとネガが同時に測れることで速く分析できるようになりました。かつ、分離状態も良かったので大変役立っています。移動相の減りも少ないですし、いいことばかりだったような気がします。

 

―UPLCにして困ったというよりは、メリットを感じていただけていると考えて良いでしょうか。

:そうです。比較して悪い点は見当たらない、思い付かないです。

―ありがとうございます。では、下痢性貝毒の話に戻ります。初めはカラムとしてBEH C18を使われていたかと思います。

小池:そうです。

 

―採用された理由はありますか。

小池:BEH C18はもともと当所で使っていたのと、汎用性の高いカラムであることで、取りあえず、そこからスタートしました。求められる感度が厳しく、BEH C18だと求められる感度に届かなかったため、移動相条件を考えて弱酸性状態で分析するのに適したカラムとして、CSH C18を最終的に採用しました。

 

―結果としてCSH C18を採用されて、感度はどれくらい変わりましたか。

小池:実際に数字で比較したわけではないのですが、面積値で見た感じでは1.5倍ほどに改善されたと思います。

 

―分析時間はBEH C18とCSH C18では変わりましたか。

小池:ほとんど変わらなかったと思います。多少の保持時間のずれはありましたけれども、すぐに修正できる程度の差だったと思います。

 

―下痢性貝毒を分析されている多くの方がカラムだけでなく前処理にも苦労をされているかと思います。当初、数種類の固相抽出を用いて検討されていたと伺いました。

小池:もともと国が操作例を示している検査法でした。C18はODS系の逆相カラムという形で示されていました。いろいろな話を伝え聞くと、なかなかクリーンアップがうまくいかないので、脂質を取り除きやすい固相としてOasis HLB(以下、HLB)、あとはイオン交換性のOasis MAX(以下、MAX)を試しました。HLBよりもっといい固相が出たと聞きまして、Oasis PRiME HLB(以下、PRiME HLB)を試してみようということで比較検討をして、一番クリーンアップがうまくいったのがPRiME HLBだったので、当所の検査法として最終的に採用するという流れになりました。

 

―初めはODSも含めてHLBとMAXの3種類で検討を開始されたのですか、それとも初めからHLBとMAXの2種類ですか。

小池:一応C18でも検討はしましたが、やはりなかなか難しかったです。機械へのダメージも結構なものになってしまったので。

 

―マトリックスが取りきれなくて、ということですね。

小池:そうです。

―HLBとMAXですが、あまり違いはありませんでしたか。

小池:HLBとMAXでは分析自体は両方可能でしたが、マトリックスが少し残ってしまうような状態が見られたので、もう少し良い条件で測りたいと思い、最終的にはPRiME HLBを採用しました。

 

―まだPRiME HLBに移行する前の最終サンプル抽出液を見せていただいた時、確か着色があったと思います。PRiME HLBにしたことで、その着色は消えましたか。

小池:PRiME HLBもMAXも濁りはなく、着色については若干黄色でしたが、明らかにPRiME HLBで処理したものが透明に近い状態できれいでした。

HLBは動物用医薬品のサンプルの処理で脂質を除く時にも使わせてもらっていますが、豚の腎臓を手掛けた時に、PRiME HLBと普通のHLBとで差が出たように覚えています。

―PRiME  HLBのほうが良かったですか。

:良かったです。データ自体もPRiME HLBのほうが良好な項目が多かったです。

 

―先ほど、前処理が不十分な時に、機械へのダメージという表現が出てきました。すごく汚れてMSの感度が落ちたり、開けてメンテナンスを必要とするという状態ですか。

小池:そこまでではないのですが、測定上問題が生じるといいますか、しばらく感度が荒れてしまうような状態になります。

 

―再現性が悪いということですか。

小池:そういう感じです。カラムに残存していたのではないかなと思っています。装置の再現性は洗い時間を長く取れば、だいぶ良くなった気はします。

 

―PRiME HLB以外の固相だと、洗いの時間が必要となり、その分、時間がかかってしまい、溶媒の消費量もかかってしまうということですね。PRiME HLBにした結果、分析時間はトータルでどれくらいになりましたか。

小池:1検体で洗いと安定時間まで入れると15分くらいだったと思います。

 

―15分サイクルですか。

小池:そうです。

 

―圧力はどれくらいですか。

小池:圧力的にはだいぶ余裕があります。流速もそれ程上げていないので、測定時の圧力は通常3,000 psi - 4,000 psi程度だったと思います。

:分析カラムが短いから圧力はそんなものかもしれません。5 cmですので。

 

―PRiME HLBに関して他には利点はありますか。

笹川様(以下敬称略):私は1回だけ固相抽出をやらせていただきました。その時の感覚としてはコンディショニング・平衡化も不要ですし、初心者でも出来ました。

 

―初心者の方でも扱いやすいということですね。

笹川:扱いやすいと思いました。

 

―そこもPRiME HLBの大きな特長ですので、そう言っていただけると本当にありがたい限りです。 先日、食品衛生登録検査機関協会が主催したマイコトキシン研修会に参加してきました。マイコトキシン研修会という名前でしたが、中身の半分以上は下痢性貝毒、麻痺性貝毒に関する内容でした。下痢性貝毒はだんだん落ち着いてきたので、麻痺性貝毒に今後はスポットが当てられるだろうという話が出ました。貴所では麻痺性貝毒についてはどのように考えていますか。

小池:所の方針ではありませんが、麻痺性貝毒に関してはまだ試験法がマウス毒性試験法のままで、現状、下痢性と分析法が全く別々になっている状態です。麻痺性貝毒をこの所でやることはしばらくないのではないでしょうか。麻痺性貝毒も機器分析が採用されれば、そういう検討をするかという話を一から考えることになりますが、現状はそういう段階ではないです。

―研修会に参加した際、麻痺性貝毒も将来的には機器分析法に持っていくという話でした。もし、その機会が来た際はお手伝いさせていただければと思います。よろしくお願いします。

:動物を使ったものより、機器分析のほうが正確な定量値が得られますし、信頼できるデータであると思います。

小池:麻痺性だと標準品を入手するのが大変なのではないかなと思います。毒性の非常に強いものを標準にしないといけないと思いますので、そこが課題なのではないかと思います。

:下痢性の標準品もしばらく入手するのが大変でした。

 

―その辺が整備されると、きちんと法的にも整備されるのでしょうね。

―研修会に参加した時、下痢性貝毒に関しても、麻痺性貝毒に関しても、標準品の面での問題がまだあるということでした。下痢性貝毒に関してはOA群とDTX-1はめどが付いたものの、DTX-2は時間がかかりそうだというお話でした。落ち着きつつあると言いながらも、まだ完璧ではない状態なのかなと思います。

小池:DTX-2は日本国内だと出ない、そもそも検出された経験がないので、手に入りにくいのでしょう。私はそんなに詳しくないのですが。

 

―その辺も優先度に関係してくるかもしれませんね。 ところでシステム全体としては、ソフトを気に入って使っていただいていると伺っています。制御ソフトのMassLynxに関してはいかがでしょうか。

:本当に使いやすいです。メソッドを作るところから、分析を開始して解析するまで、とても分かりやすくて使いやすいソフトだと思います。頂いているテキストもすごく丁寧に書かれていますし、私はとても気に入っています。

―ありがとうございます。

小池:貝毒とは話が違いますけれども、多成分で分析することが多い機械ですので、多成分の数字が一覧で表示できるところが一番助かっています。

 

―TargetLynxの解析結果の画面ですね。

小池:そうです。

:バッチ処理で一気にデータを解析できるのは大変助かります。さらにデータを再計算する時にいいソフトが何かあればと思う時があります。

―普段はExcelに持っていきますか。

:そうです。

―それをもう少しカスタマイズした計算ができるといいということですね。

:それだと最高にいいなと思います。

―例えば、どんな計算ですか。

:私どもは農薬・動物用医薬品に関する妥当性評価を行ってから成績を出すのが通常の検査です。妥当性評価を実施した際には、平均値や回収率、併行精度や室内精度など、さまざまな計算が必要になってきます。測定可能となった項目数が増えたのは大変うれしいのですが、その膨大なデータを処理することになると手間がかかっています。

 

―実は弊社でUNIFIというソフトウエアの開発を進めています。いずれはそちらにMassLynxあるいはLC用のEmpowerを含めて移行するという大きな計画があります。そちらではこういった計算がしやすくなっています。今は対応できる機種が限られていますので、いずれご紹介できるタイミングがあれば、ぜひ、そういったところも役立てていただければと思います。先ほどお話しいただいた日本語のテキストに関しては、日本のサポートチームで作っているテキストなので、お客さまの声を反映して、修正する部分があれば改善させていただきます。

:通常の使い方をしている分には本当に使いやすいので、テキストを見ることもなくスムーズにできます。何かトラブルなどがあった時に開くことになると、そのテキストが大事になってきます。詳細なテキスト、日常使いの簡単なテキストという2パターンをご用意いただいているので、それもすごく助かっています。

 

―クイックマニュアルとしっかりしたものの2種類ですね。

 :トラブルシューティング的なテキストはありますか。

 

―項目別になったTipsのようなものはご用意があります。トラブルシューティングは、セミナーなどでお配りしているものはありますけれども、一般のトレーニングではお配りはしていないかもしれません。

:8月の終わりに装置にトラブルが起こりまして、その時に液クロの圧が安定しないことがありました。そういうことがあるたびにコールセンターに電話ばかりしていて、こちらが慌ててかけても、すぐ答えが出ないとこちらも焦るのですが、その時に開くとヒントのようなものがあればと思ったのです。

―一部ウェブサイトにもありますが、今後まとめてご提案できるものがあればご紹介させていただきます。システム全体に関して、良い点や逆に気になられる点はありますか。

:先ほどサンプルコーンの話が出ましたけれども、サンプルコーンのメンテナンスはとてもしやすいです。真空を落とさず、洗浄でき、便利です。窒素発生装置が測定中だけの運転でいいので、部屋が静かになるということもいいです。

 

―使わない時は止めていらっしゃるのですね。

:そうです。装置全体がコンパクトで場所を取らないのもいいと思います。

 

―他に、ウォーターズに対して、分析から前処理製品、分析機器、サポート状況も含めて、ご要望はありますか。

伊藤:添加物のほうでHPLCのお世話になっています。トラブルを起こした時は電話での聞き取りで的確な指示を頂き解決することができました。また、電話では対応しきれないトラブルの時は検査予定も立て込んでいてとても困っていましたが、早めに修理をしていただきとても助かった事がありました。ありがとうございました。

 

―下痢性貝毒などダーティーなサンプルを分析しているとトラブルが多いと思います。弊社のサポートはどうですか。

:購入時に保守契約を結ばせていただきました。この2年間で何度か装置はダウンしていますが、その都度、早く対応していただいていると思います。サンプルの調製を終え、測定しようとなってから装置のトラブルに気付くので、調製済みのサンプルが駄目になるのではないかとすごく心配になるのですが、できるだけ早くとお願いすると、本当に早く来ていただけて大変ありがたいです。

 期待することは、食品サンプルは汚いもの、マトリックスが多い検体が多いので、やはり前処理が大変重要になってきます。その時にウォーターズさんですと、前処理の様々な固相やそれらに関するノウハウを持っています。私たちの検査は正しく定性し、精度よく定量値を出すことなので、そういった面でとても頼りにしています。今後も何かトラブルがあった時、困ったことがあった時に、今回の貝毒のようにいろいろなご提案をいただけると、とても助かります。

―はい。提案させて頂きます。

 

:装置を2年前に入れた時の話にさかのぼりますと、私も小池も残留農薬の検査は未経験でした。それまでも前の職員から農薬の検査は引き継いでいましたが、装置を入れ替える時にやり方を見直そうとなって、それまでは一斉分析Ⅰ法の一部のみを実施していましたがこれを最大限増やしたり、今回、LC/MSのⅠ、Ⅱ法を合わせ約150項目くらいに増やせたのです。

―大幅増ですね。

:装置を入れ替える時が項目数を見直すチャンスだと思って、少し欲張りすぎたかなというのもありますが、それで今やりこなせているので、増やしてよかったなと思っています。
それを導入した時にウォーターズのサポートの方にお世話になりました。あと営業の方の力をお借りできて、前処理から、メソッドから、全部教えていただき、大変お世話になって今に至っているので感謝しています。

 

―立ち上げる時のサポートはすごく重要ですね。

:使用する精製カラムに関しても、何人かの方にいろいろ教えていただきました。去年も所内の研修会に来ていただいたり、その前年の研修会にもウォーターズの方に無料で来ていただきました。

―いつでも承っています。

 

:所員全員で30人弱ですが、異動があって長く分析に携わっている職員があまりいない中で、そういった研修は大変助かっていてありがたく思っています。

―今後も続けていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 それでは最後に、こちらは新潟市の機関ですけれども、市民のためにされているお仕事の今後の抱負やコメントがあればお願いします。

 

:私どもの所は研究自体は業務の半分以下で、実際は行政依頼による試験検査が今のところ大半の仕事です。いずれはもう少し研究自体を広げて、深めて、市民に役立つ何かができればと思っています。現在は保健所依頼の食品についての残留農薬検査や添加物の検査が中心で、そういった検査をすることで市民の安心や安全を守ることが第一の使命と思って検査をしています。その中で農薬・動物用医薬品に関しては妥当性評価にかなりの時間とお金を費やすものになっていました。今それは一段落していますが、今後、厚労省などから新しい通知が出たり、新しい試験法が示されたら、それに取り組む必要性があると思っています。

 

―そういった結果を出すのに、効率良くできるようなお手伝いができればと思います。
本日はありがとうございました。