大阪大学医学部様

Users Voice お客様活用事例トピックス

大阪大学 医学部
准教授 高島 成二様にお話を伺いました。

 

―本日はありがとうございます。まず先生のご研究テーマについてお伺いしたいと思います。

 高島様(以下敬称略):私は循環器医ですので、循環器系の病態解析あるいは治療法の開発をメインに研究をすすめてきました。ただ、分子とか分子複合体の機能について細かく解析するという研究手法が好きで、液クロなどは一貫して研究に使っておりました。少量の蛋白でも活性を保ちうるぎりぎりの変性条件を探り、精製度をあげ、得られた生理活性物質を生理機能に結びつける。このような手法を自分の研究における優位性と考えてきましたので、蛋白精製には独特のこだわりを持っています。ですので、LC-MSは必須の研究手段だったとも言えます。

―なるほど、ありがとうございます。先生に装置をご導入いただいた共同研究実習センターの役割について、お伺いできますでしょうか。

 高島:はい、共同研究の実習センターというのは1955年ですから昭和30年、私も全然知らない時に設立されたもので(笑)。

―ははは(笑)はい。

 高島:1987年の5月21日に文部省奨励施設として認められたということです。その頃から一貫して、一つの研究室では買えないような高額な機械、例えばその当時は電子顕微鏡などを共同で購入し、機器をメンテナンスする職員を配置して、医学部の各講座が自由に使うことができる施設として機能しています。そういう意味では大学の医学部として共同研を作ったのは、日本では大阪大学が初めてではないかと思っています。ただ、最近は、特に取り扱い自体がかなり難しい機械が多くなってきました。そこで、ユーザーの依頼を受けて、共同研の職員が機器を操作するという形に少しずつ移行しようとしています。それと、病院ですから病態に関連したサンプルは比較的手に入りますので、それを分析したいという要望をお持ちの臨床の先生がいらっしゃいます。ただ、実際には技術を習得する時間の余裕がないということがあります。そうした先生方に対して、質量分析計やその他の機械を活用するためのセミナーを開いて、指導をするということも、共同研の重要な役目と思っています。

―なるほど。ありがとうございます。次に、共同研で提供されているタンパク質の解析のサービスについてお伺いしたいのですが。

 高島:これについてご説明する前に、質量分析器を使用したタンパク受託解析のシステムの構築には大阪大学医学系研究科、生体システム薬理学、金井研究室の高藤和輝先生に多大なる支援をいただきました。彼がいなければ受託システムの構築は不可能だったと思います。大変感謝しています。現在2台の質量分析計が入っています。機器の更新にあたって、低分子あるいは脂質という要望もあったのですが、タンパクに特化して、外部の受託施設に絶対負けないような質量分析による定性と定量が、誰が、いくつサンプルを出しても、何の制約もなく行える環境を大学内に構築することを目指しました。実際、SYNAPT G2を導入してから、ゲルのバンドを指定するだけで、前処理から解析まで行う完全受託を実現し、30講座以上から依頼された数百という検体を解析してきました。さらに、ゲルからの切り出しだけではなくて、いわゆる溶液ショットガン、及び定量も進めていきたいと思っております。それから、もう一つは受託と言っても単に試料をもらって渡すというだけではなくて、その結果を見て、あるいはプロトコールとかを詳しく教えてもらって、どういう問題点があって、どうやって解析したらいいか、どうやって精製していけばいいかということも、相互にやり取りして、コミュニケーションの幅を広げるということを積極的に行っています。むしろ、例えば、タンパク質とその他の生体分子との結合を調べる際に、どうやって相互作用する分子を固定化すればよいかなど最新の手法を提案して、その結果をフィードバックしてもらい、大学全体の技術の向上を図ることを、非常に重要視しております。

―なるほど。やはりいい結果を出すためには、前処理やプロトコールというのは大事ですよね。実際に、医学部では、プロテオミクスに関して、どのような測定の要望が多いのでしょうか。

 高島:そうですね、どんな要望が多いかというと、やはり自分が標的としているタンパクの結合蛋白を同定して、機能解析につなげたいという依頼が圧倒的に多く、依頼の90%以上を占めています。最近は、メタボロミクスなども含めて網羅的な解析が、ハイライトされていますが、個々のタンパクを創薬標的として解析し、医薬品開発や治療に応用していくという講座が多いと考えています。ですから、標的と結合するタンパク質を、例えば、どういったアフィニティカラムを使ってうまく精製するかというプロトコール作りを積極的に行い、皆さんに提供していきたいと考えており、そのためのセミナーも開催しています。

―セミナーはどれぐらいの頻度で行われているのでしょうか。

 高島:新しい受託が始まったので、つい1週間ぐらい前に開催したのですが、約30講座から80人ぐらいの方が参加されました。今までのセミナーの中で最も参加者が多かったので、おそらく興味を持っている方は多いと思うのですが、実際に医学部の施設で本当に何ができるのかということをご存じでない方もおられたので、もう次の日から質問が殺到しているという状況です。

―なるほど、わかりました、ありがとうございます。次に今回ご導入いただいたnanoACQUITYSYNAPT G2についてですが、どういう点に期待されていたかということと、どういう印象をお持ちかということをお願いいたします。

 高島:そうですね、2年前、装置の更新のために補正予算がついた時に購入が決まって、どの機種にしようか相当迷いました。当時は、イオントラップ型、具体的に言えばOrbiTrapが全盛期で、そういう意味では選択肢は他にあるのか、要はOrbiTRAPのような、メンテナンスも簡単そうで、何となく流行っていて、いいというものを選ぶのか、それとも新しいけれども、Q-TOFで、煩雑そうだし難しそうだし、(SYNAPTを選んで)大丈夫だろうか(笑)という心配はありました。それでいろいろウォーターズの方にもデモしてもらったりしたのですが、結局買って良かったなと思います。

―ありがとうございます。

 高島:精度、それから感度の点でもイオントラップじゃなくても、全然問題なかったんだな、というのを痛感しました。それで、TOFもその感度というか精度ですね、もうやっぱりすばらしくて。その辺は、選択は間違ってなかったなあというふうに思いますね。ちょっと高かったですけど(笑)。

―ははは(笑)。ありがとうございます。

―弊社のシステムはLC/MSE法というところに特徴があって、ラベルフリーができるということが特徴ですけれども、それについての印象と、どういう点がいい悪いというのを、教えていただきたいのですが。

 高島:はい、LC/MSEはすばらしいシステムだなと思いますね。

―ありがとうございます。

 高島:定量だけじゃなくて、定性の感度もおそらく上がっているのではないかと思います。確かにDDAでの解析も行っていますが、MSEは定性の感度もあげますし、SYNAPTを使う特徴でもあるので、もっと使っていいところを引き出していきたいと思っています。

―ありがとうございます。

 高島:ただ、他と正確に比較したことはないので、本当にこれで定性の感度がものすごく上がっているか?というのはわからないのですが、今のところ他での受託でダメだったものが、同定できているというようなことも、かなり経験しました。そういう意味ではSYNAPT G2の定性は感度的にも他の質量分析計より優れていると思います。定量もラベルフリーでも非常に効率よく可能であることも経験し、これから定量の依頼も積極的に受けていこうと考えています。

―なるほど。今後、ご研究をされるにあたって、今は無理かも知れないけれども、質量分析計にさらにこういうことを期待したい、というところがあればお伺いしたいのですが。

 高島:そうですね、質量分析計だけに関して言えば、そんなに過剰な期待をしてはいけないと思います。所詮質量を測るだけですので、やはり感度を上げてくれることだけを期待したいと思います。そういう意味で、今度のSYNAPT G2-Sには、非常に期待しております。ETDもイオンモビリティーも、定性感度が上がるかもしれないという期待があり導入しています。そういう意味では、今のところ、SYNAPT G2はトップクラスの感度を持っている上に、G2-Sになればもっと上を行くのではないかなと大変期待しております。

―ありがとうございます。感度ということですね。

 高島:そうですね、私どもは、コンタミが少ない部屋などの設備を作って、前処理と測定を行っています。これから溶液ショットガンが主流になってくると、バンドとして見えない部分も同定することになります。例えば、一時的にしか発現していないような転写因子などのタンパクをとってきたいというような要望や、それをDNAとの相互作用と関連付けて集めてくるという依頼もあります。そういった解析では、当然タンパク質の量が非常に少なくなります。ただ、特異的に結合しているので、感度を上げてDNAカラムで精製すれば、共雑物が多くても新しい転写因子が見えてくる可能性があります。この辺りになると質量分析計に求めるのはひたすら感度の上昇ですね。

―はい、ありがとうございます。ウォーターズを含めて、分析業界全体に何か要望や期待がございますか。

 高島:分析業界ですね、大学ではどちらかというと分取や精製ということが多いですが、タンパクの質量分析というのは、まだまだやるところはあると思いますので、やはり新しい切り口が欲しいと思っています。つまり、タンパクに焦点をあてたような解析のオプションを当然増やしてほしいと思っているわけで、そういう意味では、いわゆる分析というよりはむしろオプションですね。イオンモリビティ、とても面白かったし、MSE もすばらしいし、繰り返しになりますが感度を上げるオプションをまた増やしていただければいいなぁと期待しております。

―わかりました、はい。最後に、ご自身も含めて、共同研で今後こういうテーマに取り組みたいというのがあれば、お聞きしたいです。

 高島:そうですね。私個人としては、あまり新しい生理活性物質とかがどんどん見つかる時代は終わったと思っています。今は、タンパク質複合体の詳細な解析に興味があります。例えばミトコンドリアの酸化的リン酸化を構成する蛋白群のような複合体で作用するものは高等動物でしかないコンポーネントがまだたくさん同定されずにいると考えています。そういった未同定のコンポーネントが複合体全体の機能を制御していると考えています。網羅的ではなく、一つ一つそれらの複合体の構成成分をひも解いて、正確にその生化学解析を行い生理現象に結び付けようと考えています。そのためには、個々の要素を定量的に捉えることも非常に大事なので、MSをうまく応用していきたいと思っています。それには複合体の精製を独自の方法で行い最後にSYNAPT G2のような高感度なMSで細かく解析することが必要ですね。医学研究者全体にとっては、質量分析というのは一つの手段にしか過ぎない。一つの過程でしかあり得ません。(手法の追及だけでは)論文になることは難しいので、(それに労力を費やすことなく、医学部の研究者が)非常に感度が良く、質のいい質量分析サービスを自由に使えるような環境を整えていきたいと、共同研の人間としては考えています。

―なるほど。

 高島:(外部の)受託は非常に高いですし、双方向の情報交換もないですから。

―ああ、そうですね。

 高島:ということで、大学全体として、SYNAPT G2を使って、質の高い質量分析を行う。それからフィードバックしてくるデータなどを受けて、研究者と一緒にその技術を向上させ大学全体の研究レベルの向上につなげていきたいと思っています。それは大学だけに限らず、学外の先生とも進めていきたいと考えています。

―わかりました、はい。ありがとうございました。

 高島:以上です。

―どうもすばらしいコメントをいただきまして、ありがとうございました。